ハーフナー・マイク、J2で覚醒したゴールゲッター

小宮良之

覚醒のときを迎えたゴールゲッター

ハーフナー(左)は、J2の複数のクラブを渡り歩き、センターフォワードとしての能力を開花させた 【写真:松岡健三郎/アフロ】

 2006年、横浜F・マリノスのユースからトップに昇格したハーフナーは19歳でJリーグにデビューし、平山相太(FC東京)をもしのぐ長身で注目を浴びたが、その後は2シーズン在籍するもスタメンに定着することができなかった。

「マイク? せいぜいパワープレー要員だね。後ろから当たられるとすぐにバランスを崩すし、まだまだ頼りない」

 当時、マリノスの番記者たちの評価はこんな程度だった。

 また、07年にはU−20ワールドカップのメンバーに選ばれたものの、森島康仁(大分トリニータ)とのポジション争いに敗れ、本大会での出場時間は限られた。

「もっとしっかりポストワークをしたい。足元が下手くそ」

 本人もしきりに反省点を口にした。

 彼が大人のFWに成熟するのは、その一歩を踏み出してからだ。

 08シーズン、J2のアビスパ福岡に期限付き移籍すると7得点を記録し、FWとしての仕事にいくらか溜飲を下げた。09シーズンは横浜FMに復帰したが、試合に出られずに苦悶(くもん)。シーズン途中でJ2のサガン鳥栖に期限付き移籍し、ここで15得点と再び気を吐いている。鳥栖の本拠地はサッカー専用で選手と観客の距離が近く、こうしたスタジアムはしばしばゴールゲッターを覚醒(かくせい)させるのだが、彼も例に漏れなかった。

 そもそも、世界ではルーキーFWが下のカテゴリーでゴールの感覚を研ぎ澄ますケースは珍しくない。ワールドカップ・南アフリカ大会得点王で、バルセロナに所属するスペイン代表FWダビド・ビジャも18歳から21歳までは2部でゴールを量産してから1部リーグでネットを揺らし続け、遂には世界最高FWの称号を得た。点を取る選手に必要なのは、「どのレベルであれ真剣勝負の場であり、ゴールの勘は決して練習では養われない」とスペインでは言う。

 10シーズン、ハーフナーは前線で目覚めたように暴れ続けた。しかも、柏レイソル、アビスパ福岡など昇格を争った強敵を相手に得点し、チームを救った。味方が苦しいときに、彼は果敢にゴールの門をこじ開けた。

 試合に出るなかで、彼は進化を遂げ続けている。

 11月20日、J2の第35節。ハーフナーはゴール前でこぼれたボールを左足でたたき込んで1得点をもぎ取り、20得点の大台に乗せた。チームは前節に昇格を決めたことで気が抜けたのか、一時は0−4とリードを許す体たらくだったが、ゴールゲッターは自らの仕事を果たしている。いかなる時も、ピッチに立ったら得点を奪う。残り2節は出場停止となったものの、J2得点王はほぼ確実だろう。だが、その称号に甘んずることはない。

 猛将は軍勢の先頭に立ち、荒々しくゴールの門を破る。

<了>

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著者プロフィール

1972年、横浜市生まれ。2001年からバルセロナに渡り、スポーツライターとして活躍。トリノ五輪、ドイツW杯などを取材後、06年から日本に拠点を移し、人物ノンフィクション中心の執筆活動を展開する。主な著書に『RUN』(ダイヤモンド社)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)、『名将への挑戦状』(東邦出版)、『ロスタイムに奇跡を』(角川書店)などがある。

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