私のミッション・ビジョン・バリュー2024年第15回 牛澤健選手「ちりつも」
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多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
2024年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2024年第15回は牛澤健選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
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「昨年の9~10月ぐらいからはじめました。合計5~6回ぐらい行いました」
Q.面談はスムーズに進みましたか?
「過去を振り返りながら、いろんなことを思い出しながら、話をしました」
Q.今まで第三者に自分の過去や内面について深く話したことはありましたか?
「ありませんでした。新しい感覚でした」
Q.話してみていかがでしたか?
「変わらずに続けてきたことがあるなと、振り返って、あらためて思いました」
Q.完成したMVVを見ていかがですか?
「自分が今まで何気なくやってきたことが言葉になって、あらためて、その大切さに気付けたと思います」
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「自分が小さい頃にサッカーの試合をスタジアムで見た時、ワンプレーワンプレーに対して心を動かされましたし、それが楽しかったし、新しい刺激になったし、そういうプレーを自分がして、見てくれる人の心を動かして、元気づけたり、嬉しい気持ちや楽しい気持ちにさせたりすることができたら最高だなと思って、この言葉にしました」
Q.それは名古屋グランパスの試合でしょうか?
「そうですね。小さい頃、スタジアムで試合を見た時、たくさん心を動かされた記憶があります」
Q.「ここでプレーしたい!」と思ったんですね。
「スタンドから見て、ものすごく鳥肌が立った記憶がありますし、いつか見る側ではなく、見られる側や与える側になりたいと思いました」
Q.特に印象に残っている選手は?
「田中マルクス闘莉王選手と増川隆洋選手がセンターバックで、FWのケネディ選手と玉田圭司選手、中盤のダニルソン選手がいた時のチームのことはよく覚えています。すごく強くて、リーグ優勝したんです」
Q.どういうプレーが「人の心を揺さぶる」と思いますか?
「自分のポジションはセンターバックなので、シュートブロックだったり、ボールを激しく奪いに行くシーンだったり、ヘディングで圧倒するシーンだったり、体を張った時にスタンドが沸くので、心を揺さぶっているのかなと思います。攻撃ではすごいパスやドリブル、シュートを決めた時が最も心を揺さぶれると思うので、そういうシーンを多く見せられたらいいなと思っています」
Q.それこそ、牛澤選手はゴール前での体を張った守備が持ち味だと思います。
「頑張ることはもちろんのこと、一生懸命プレーして、逃げずに戦っている姿は見ている人に元気やパワーを与えられると思っています。だからこそ、それをミッションにしました」
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「自分は園児の頃からサッカーをはじめて、振り返れば、サッカーを通して友達やいろんな人と出会い、様々なことを経験してきました。本当にサッカーを通して成長してきたという実感があるんです。だから、自分はサッカーを通して、誰とでも仲良くなれると思っているんです。それで多くの人とつながることができたら、楽しくなるだろうし、人生が豊かになるだろうという思いで、この言葉にしました」
Q.子どもの頃からのサッカー仲間と今でも交流があるのでしょうか?
「今でもつながっている人のほとんどがサッカー仲間。サッカーを通して出会った人とはずっとつながっていますね」
Q.チームメイトだけでなく、サッカーを通して、いろんな人と出会う機会があると思います。出会いを広げていく中で視野や考え方も広がっているのでは?
「サッカーには本当にいろんな人が関わっていて、いろんな人がいます。そうしたいろんな人とつながることで、新しい発見があるんです。本当にワクワクする日々を過ごすことができています」
Q.今まで出会った人で大きな影響を受けた方は?
「高校2~3年の時に指導していただいた古賀聡監督ですね。人間性が素晴らしい監督でした。自分は準備の大切さを一番学んだと思っていて、古賀さんは練習の時に誰よりも早くグラウンドに出て、落ち葉拾いをしたり、身体を作ったりしていました。選手より監督が早くグラウンドに出て準備している姿を見て、すごく驚きました。それから準備を大切にするようになりました」
Q.古賀監督は選手一人ひとりにいろんな役割を与えていたそうですね。
「古賀さんはそれまで大学で指導していたので、社会に必要なことを教えてくれました」
Q.牛澤選手は当時キャプテンを務めていましたね。
「高校3年の時、キャプテンをやらせてもらいました。自分は結構真面目なタイプで、準備を率先してやるタイプでした」
Q.当時の名古屋U-18は個性的な選手が多かった印象です。どうやってチームをまとめていましたか?
「まとめてはいなかったと思います。練習から頑張ることや手を抜かないことは自然と求めていたような気がします」
Q.プロになってから、出会いが広がったと思いますが。
「そうですね。プロになってから、変わりましたね。チームメイトもいろんなタイプの選手がいて、本当に新しい発見や刺激をめちゃくちゃもらえています。みんな、サッカーに対して情熱を持ってやり続けていますし、いろんな選手からいろんなものを感じて、いろんなものを吸収することができています」
Q.24歳年上の本間幸司選手からもたくさん刺激を受けたのでは?
「すごくいろんなことを考えている人ですし、一言一言に重みがあるんです。学ぶことがたくさんありました」
Q.人との出会いが牛澤選手を大きくしているのですね。
「いろんな価値観や考え方を吸収して、さらなる成長に反映させていきたいと思っています」
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「サッカー選手は誰もが自分のためにサッカーをやっていると思うのですが、自分以外の何かの力の大きさをすごく感じる時があるんです。自分以外の何かのために戦う時にこそ、ものすごいパワーが出ると自分はすごく思っています」
Q.それを最も感じた試合や出来事はありましたか?
「高校2年生の時、ある試合の前日にすごくお世話になっていた方が亡くなってしまったことがありました。試合前のミーティングでは涙する選手がいるぐらい、僕たちにとってショッキングな出来事でした。でも、その試合で先制されて負けていたんですけど、後半にその方に最もお世話になっていた選手がゴールを決めて逆転勝ちすることができたんです。その時にすごく感じましたね。あとは、名古屋U-18の試合には毎試合たくさんのサポーターが来てくれて、大きな声で応援してくれていました。本当にサポーターに支えられているなと感じながら試合をすることができていました。だからこそ、高校3年の時には『サポーターのために』という強い思いを持って戦えたから、多くの試合で勝つことができたと思っています」
Q.牛澤選手の代はJユースカップなどで優勝していますね。
「あの時は本当にみんなが自分のためではなく、『支えてくれたスタッフやサポーター、メンバー外になった選手のために』という思いが強かった。だから、勝てたんだと思います。終わってみて、それをすごく実感しています」
Q.プロになってから『誰か』がさらに大きくなったのでは?
「学生から社会人になって、一番強くなったのは家族への思いですね。これまで本当に家族に支えられていたんだということを実感することができています。学生の頃はそういうことをあまり考えていなかったのですが、社会人になってから、親が自分をどれだけ恵まれた環境で育ててくれたかが分かりました。『親のため』という思いはより一層強くなりました」
Q.サポーターの存在も大きいのでは?
「学生時代とは比にならないぐらい多くの人に応援されて、サポーターの声援は本当に毎試合大きな力になっています。あとはクラブを支えてくれる方の存在の大きさも感じることができています」
Q.試合中、サポーターの歓声や反応が分かりますよね。自分のプレーで盛り上がったり、沸いたりするとテンションが上がるのでは?
「めちゃくちゃ嬉しいですし、『よっしゃ』という感じになります。勝った後にサポーターの笑顔を見る時に幸せを感じます。だからこそ、負けてがっかりした表情を見ると、『次は勝って喜ばせないといけない』と強く思いますね」
Q.第11節山口戦でプロ初勝利を経験した時、涙を流して喜んでましたね。
「これから、あんな感情になることはないんじゃないかと思うぐらい、本当に嬉しかったです」
Q.今年は残留争いに巻き込まれる苦しい状況が続きました。その時にどんな思いでプレーしていましたか?
「今年水戸は30周年で、今まで一度もJ3に降格したことがないという歴史があるだけに、降格圏に入った時はものすごくプレッシャーというか、『絶対に落としてはいけない』という重圧を感じました。その思いが力になったと思います」
Q.だからこそ、残留を決めてホッとしたところはありますか?
「めちゃくちゃホッとしました。歴史あるクラブで、ここまでつないできた人たちのおかげで今があるわけで、自分たちが汚点を作るわけにはいかなかった。ミーティングでも、みんなで『絶対に落としてはいけない』ということをみんなで言い合っていました」
Q.これからさらに『誰か』が大きくなっていくことでしょうね。
「やっぱり、大きくなっていけばなるほど、出せるパワーも大きくなっていく。だからこそ、そういうことを感じられる選手になりたいですし、支えられていることを理解した上でプレーできる選手でありたいと思っています」
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「僕が今まで大事にしてきたことはやり続けること。その中で『塵も積もれば山となる』じゃないですけど、コツコツやり続けることが大切だと思って取り組み続けてきました。続けることを最も意識してきました」
Q.それはいつ頃から意識してきましたか?
「意識したのは、昨年MVVを作成するために面談を行った時だと思います。その時に振り返った際、自分は今まで怪我で離脱することがほとんどなく、ずっとコツコツやり続けてきたことに気付いたんです。腐る時期もありませんでしたし、やり続けてきたからこそ、今があると実感しました」
Q.続けることは簡単なことではないと思います。なぜ続けられたと思いますか?
「誰かに負けたくないとか、勝ちたいという思いだけでやってきたと思います。苦しい時や挫折を味わう時もあったんですけど、それでも、サッカーに対する努力を続けてきました。本当に負けたくない気持ち一心でやってきました」
Q.具体的にどういったことを続けてきましたか?
「特に大学生の頃なんですけど、どんな状況でも絶対にボールを蹴ったり、自分でトレーニングしたりする時間を取っていました。大学生の頃は努力の時間を増やしていました」
Q.大学時代は甘い方に流される選手も少なくなかったと思います。
「自分が入っていた選手寮はサッカー部だけでなく、いろんな部の選手が入っていて、寮のジムにはいろんな競技の選手がトレーニングしていました。そういう人たちを見て刺激を受けましたし、めちゃくちゃ努力している先輩が最終的にレギュラーをつかむという姿も見てきて、やっぱりやり続けることが大事だと痛感させられました」
Q.プロになってからも変わらず努力を続けている?
「続けていますし、続けていきたいと思っています」
Q.今季残り1試合となりました。どんなルーキーイヤーになっていますか?
「試合にたくさん出させてもらって、いろんな経験をすることができました。本当に感謝しています。でも、チームを勝たせる選手にはなれていない。これまでの経験を『いい経験』の一言で終わらせないように、結果という形で成果を証明したい。そして、次につなげていきたいと思っています」
Q.最終戦で今まで積み上げてきたものを出し切りたいですね。
「出し切ることもそうですし、今後につながるものがあると思うので、全力で戦いたいと思います」
Q.プロに入る前にイメージしていた以上のシーズンを送れましたか?
「キャンプの時やキャンプ後は『今年試合に出られるかな』という不安が大きかったです。でも、チャンスをもらえてから、試合に出続けることができて嬉しかったですし、感謝しています」
Q.最後にサポーターにメッセージをお願いします。
「今年は本当に苦しいシーズンでしたが、残留を決めることができました。残り1試合、一瞬一瞬を大切にしながら、勝って終われるように頑張りますので、最後まで熱い応援をよろしくお願いします」
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