私のミッション・ビジョン・バリュー2024年第14回 落合陸選手「自分を曝け出す、殻を破る」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

2024年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2024年第14回は落合陸選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

Q.MVV作成のための面談はいつぐらいから、何回ぐらい行いましたか?
「シーズンの最初から3~4週に1回ぐらい行い、合計10回以上は行いました。夏には完成しました」

Q.今まで自分の内面や過去を第三者に話した経験はありましたか?
「身近な人に話したことはありましたけど、第三者に話したことはありませんでした」

Q.話をしてみて、いかがでしたか?
「言葉にすることの大切さを知ることができました」

Q.完成したMVVを見ての感想は?
「自分に近い言葉、自分が伝えたい言葉をしっかり伝えられたと思っています」

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

Q.まず、ミッションについて聞かせてください。「本物の追求」。この言葉にはどのような思いが込められていますか?
「サッカーで生きてきたから、サッカーで目標を達成したいという思いを込めた言葉です。自分はサッカーでしか絶対的な存在になれないからサッカーでそれを示さないといけない。言葉や行動ではなく、ピッチの中で証明する。それを判断するのは他者なので、他者を納得させるぐらいのパフォーマンスを見せることにこだわりたいという思いがあります。例を挙げるとすれば、乾貴士選手ですね」

Q.サッカーで自分の存在価値を示すという意志表示ですね。
「そうです。それしか自分にはできないと思っています」

Q.乾選手に憧れている?
「今季J1昇格を果たした清水エスパルスの中心選手でした。ああいう絶対的な存在になりたいと思っています」

Q.落合選手がイメージする「本物」はどういった選手でしょうか?
「柏レイソルで言うと、レジェンドと言われる大谷秀和さん。水戸では本間幸司さん。やっぱり、一つのチームに長く在籍するということは凄いことだと思うんです。だからこそ、言葉の重みがあるし、行動の影響力があるなと感じました」

Q.そういう絶対的な存在になりたい?
「そうですね。長く在籍できたのも、ピッチで結果を出してきたからだと思うんです。だからこそ、プレーで絶対的な存在になりたいという思いが強いです」

Q.そのために、どういうプレーをすることが大事だと思いますか?
「もちろん、結果ですね。結果を出さないと、試合に使ってもらえない。結果を出さないと、何を言っても周りに響かないですから」

Q.いつ頃から「本物の追求」を意識するようになりましたか?
「子どもの頃からサッカーをやっている時はとにかく自分が一番うまくなりたい、うまい選手でありたいと思っていて、柏レイソルのアカデミーでずっと10番をつけていましたし、それぐらいのプライドを持ってサッカーをしてきました。サッカーではそういうこだわりを持ち続けています」

Q.それがサッカーをする理由でもあるのでは?
「本当にそうです」

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

Q.次はビジョンについて聞かせてください。「良い頑固にこだわる」。こちらはいかがでしょうか?
「いろんな考えの人がいる中で自分のマインドも少しずつ変わっていく。その中でも人として堂々としていたいんです。信頼される存在になりたい。貫くけど、貫きすぎない。吸収をしながら、ぶれないものも持っている。そのぶれない部分があるからこそ、吸収することができるんだと思います」

Q.ぶれることのない芯を大事にしたいということですね。
「そうです」

Q.落合選手の「芯」は何でしょうか?
「自分の目標に対して、諦めない姿勢。自分なりに考えてトライする姿勢を自分の中で大切にしています。周りからいろんな意見をいただきますけど、自分として『これだ』と思うことはしっかり貫こうという気持ちがあります。自分は逆境に強いので、貫くことに対しては自信を持っています」

Q.落合選手の生き様がそれを証明してきましたよね。柏ユースからトップ昇格を果たせず、社会人リーグを経て、一浪して東京国際大学に入学。4年間を経て、柏に加入しました。
「その経験をこれからどう活かすか。どうやってサッカーを歩んでいくのか。遠回りした分をまだ取り返すことができていません。大事なのはここからです。今年は水戸でしっかりやらせてもらっていて、少しずつ表現できるような立場や存在になりつつあると感じていますが、もっともっとやらないといけないという思いが強いです」

Q.今季リーグ前半戦はチームの中心として活躍を見せましたが、後半戦は出場機会が減ってしまいました。それでも、「芯」があるからこそ、貫くことができているように感じます。
「結局は気持ちの部分なんですよ。自信を持てば、いいプレーができる。失敗もするし、ダメな時期もありますけど、それも自分にとっていい経験と捉えて、最終的に高いところに上り詰められると信じることができています。その考えがぶれることはないですね」

Q.落合選手の真の強さを見ることができるのはここからですね。
「そうだと思います。そのマインドはぶれることはないので、あとは自信を持ってプレーをするだけだと思っています。リーグ後半戦はけがによるコンディションの問題がありましたが、心と頭と体のコンディションを整えることができれば、あとは実行するだけです」

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

Q.バリューについて聞かせてください。「(行動)矢印を常に自分に向ける」「(マインド)自分の可能性を信じる」。こちらはいかがでしょうか?
「『矢印を常に自分に向ける』に関しては、サッカーだけでなく、どんな職業でも社会人としてすごく重要なことだと思っています。愚痴を言いたい時もあると思うんですけど、それを言ってしまうと、悪い循環が生まれてしまう。必ずきつい時はある。その時にいかに矢印を自分に向けることができるか。昨年、柏で出られない時期が長かった中、先輩の姿を見たり、アドバイスをいただいたりして、あらためてそれが大事だと気づくことができました。今季も夏以降、けがの影響もあって、なかなか試合に出られない時期が続きました。その状況を『仕方ない』と捉えて楽になるんだったら、それでいいと思うんです。その上で悔しい感情があれば、サッカー選手を続けていくことはできると思います。『可能性』に関しては、自分は常に自分に可能性を感じています。でも、まだまだやりたいことが多いんです。サッカー選手である以上、その思いがなくなったら引退だと思っています。自分は目標や可能性がないと何も行動できない人間なので、そこは自分の中でずっと持ち続けています」

Q.矢印を自分に向けることは簡単ではないと思います。そのために意識していることはありますか?
「特にアウェイに帯同できない時は複雑な思いになることもあるんですけど、そういう時こそ明るく振る舞うことが大事だと思っています。悩みすぎないことって、大事なんですよね」

Q.可能性を信じているからこそ、その余裕も持つことができるのでは?
「それが大事だと思っています。それでも試合に出られなかったら、環境を変えてもいいと思うんですけど、それ以前にまず自分がやるべきことをしっかりやることにこだわらないといけないと思っています」

Q.『自分の可能性』を信じることができていますか?
「信じていますし、ワクワクしています。自分のこれからがすごく楽しみです。そのための準備をしています。取り組んでいることが『合っているのか』『合っていないのか』という自問自答をしながら、続けていくことが大事だと思っています」

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

Q.最後にスローガンについて聞かせてください。「自分を曝け出す、殻を破る」。
「水戸に来てから、意識するようになった言葉ですね。リーグ後半戦はけがをしてしまって、なかなか出場できなくなってしまったので、残り試合でしっかり出さないといけないと思っています。殻を破れたか破れていないのかという点においては、自分ではまだ破れていないと感じています」

Q.『曝け出す』ことはできていたと思います。リーグ後半戦、チームの戦い方が変わった中で落合選手の武器をどう発揮するかというところで悩んでいることもあるのではないでしょうか?
「シーズン途中でフォーメーションが変わって、チームのスタイルも変わりました。残留争いを続けるチームにとって必要な変化だと思っていましたし、自分としても前向きに取り組むことができていました。ただ、自分がけがをして離脱してしまった時にチームメイトが頑張ってくれて、チームの調子が上向いたんですけど、その中にいることができなかったことに悔しさを感じることがありました。それでも、森直樹監督は自分のことを信じてくれているので、とにかく期待に応えることだけを意識して取り組んできました。あとは自分が頑張るだけです」

Q.今まで1試合で人生を変えた選手を何人も見てきました。残り試合は少なくなりましたが、活躍すれば、大きな道が開けると思います。
「自分もそう思っています。5バックで戦うようになって、守備がすごく安定したと思います。でも、試合によって、あまり攻撃が出来ずに終わってしまうこともある。攻撃的なポジションの選手として、そういう試合にならないようにしたい。攻撃の回数を増やすことにもっとこだわりたいと思います」

Q.直接得点に関わることでアピールしたいですね。
「スタメンで出たら、活躍できる感覚はあります。楽しみです」

Q.あらためて、今シーズンを振り返ってもらえますか?
「評価しづらいところもあるのですが、『もっと』という感覚があります。もっとできたと思いますし、もっと自分を出せたんじゃないかという思いもあります。この経験を今後につなげるためにも、残り試合がすごく大事になると思っています。第37節山形戦は本間幸司選手の現役最後のホームゲーム。プロになると、自分の人生もかかってくるので、誰かのために戦うという気持ちを持つことは少なくなるんですけど、今回に関しては本当に幸司さんのために戦いたい。自分が水戸に来た年に幸司さんが引退するということは何かの縁だと感じています。いい形で送り出したいですね」

Q.柏では大谷秀和さん、水戸では本間幸司さんという「レジェンド」と呼ばれる選手と一緒にプレーして得たものは大きいのでは?
「本当に大きいです。幸司さんはすごく良い人。加入してきた直後のけがをしている時も常に気を遣ってくれて、声をかけてくれたんです。本当に心の支えになりました。試合が終わった時、泣いてしまうと思います。幸司さんからしたら、たった1年という感覚だと思いますけど、僕にとってすごく大きな存在。本当に感謝しています。その思いを持って頑張ることができれば、チームとしていい結果につながると思います。残り試合は幸司さんのために戦います」
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント