私のミッション・ビジョン・バリュー2024年第9回 碇明日麻選手「努力すれば報われるのではなく、報われるまで努力する」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

2024年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2024年第9回は碇明日麻選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.MVV作成のための面談はどのぐらい行いましたか?
「4月ぐらいに最初の面談を行い、7月ぐらいに決まりました。1回1時間ぐらいの面談を4~5回行いました」

Q.今まで自身の過去や内面を誰かに話す経験はありましたか?
「なかったですね。でも、話すって、大事だなと感じましたね。自分がこれまでやってきたことを思い出すことができましたし、そういうことをやってきたから、今ここにいるんだなということを把握できたというか、確認できました」

Q.完成したMVVを見ての感想は?
「自分なりの言葉になったと思っています」

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Q.まずはミッションについて聞かせてください。「天草代表として、周りの人を笑顔にし、勇気づける」。こちらの言葉はどのような思いが込められていますか?
「僕は上天草市出身初のプロサッカー選手なんです。だからこそ、『天草代表』という言葉にこだわっています。そして、『周りの人を笑顔にし、勇気づける』については、自分は普段から表情を意識していて、なるべく怖い表情をしないようにしているんです。朗らかな表情をするようにしていると、接する人も柔らかい表情になるんですよね。笑顔の人を見ると、こっちも笑顔になれるので、笑顔でいることは大事だと思って、この言葉を決めました。『勇気づける』という言葉については、僕は天草という小さな町の出身なんですけど、そういう環境でも成り上がっていけるということを同じような地域に住んでいる人たちに証明したい。そして、勇気付けられるような存在になりたいと思っています」

Q.天草のサッカーの環境は?
「以前のことは良く分かりませんが、僕は中学時代には人工芝のグラウンドでサッカーできていたので、ある程度環境は整っていたと思います。でも、都会のようにジムが併設されているわけではないですし、練習試合するにしても熊本市内に出ないといけないなど、そういったところの不便さはあったかなと思います。都会と比べて、自然が多い環境で過ごしてきたので、野生の勘みたいなものは持っていると思っています。都会の人がしないような遊びもしてきましたから、そういう面もどこかサッカーにつながっているところがあるんじゃないかと思っています」

Q.小さい頃からプロになりたいと思っていましたか?
「小学校1年の時に本格的にサッカーをはじめたんですけど、その時に親に『サッカー選手になりたい』と言った記憶があります」

Q.憧れの選手がいたのでしょうか?
「保育園の時からずっとボールを蹴っていたんです。だから、誰かから影響を受けたわけではなく、自然と『サッカー選手になりたい』と思うようになりました」

Q.そういう地域で夢を追いかけることの困難さはありましたか?
「小学校時代はただただ無邪気にサッカーをやっていたので、困難さを感じたことはありませんでした。中学校に進学した時、自分が1年生の時の3年生が大津高校に進んで、1年生からレギュラーで試合に出ていたんです。その人を見て、『すごい』と思いましたし、『自分もそうなりたい』と思ったんです」

Q.学年が上がるにつれて、可能性が広がっていった?
「可能性が一番広がったのは大津高校に入ってからですね。いろんな人のおかげで充実した3年間を過ごすことができました。自分は運が良かったと思っています。1年生の最初の頃は公式戦のメンバーには入っていなくて、ベンチにも入れない状況が続いていました。でも、FWの選手がけがをした時に自分が先発として起用されたんです。その試合で点を決めることができてから、状況が一気に変わりました。けがをした選手が復帰しても、試合で起用され続けました。運が良かったと感じています。全国高校サッカー選手権大会も自分が入学する前は2年間出場することができていなかったんです。でも、自分が入学してから3年連続出場できましたし、全国大会に6回出場することができたんです。そういうことに関しても、運の良さを感じています」

Q.「笑顔」についても聞かせてください。表情について意識するようになったきっかけはあったのでしょうか?
「何かきっかけがあったというより、性格的なところが大きいと思います。無意識のうちにそうなっている感じですね。それこそ、上天草出身ということが影響しているかもしれないですね。小さい頃からお年寄りの方とよく接していたことも関係あるように思います。都会の人のように周りの目を意識することなく、周りの人に伸び伸び育ててもらったので、こういう性格になったような気がしますね」

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Q.次はビジョンについて聞かせてください。「認め合える世界」。こちらはいかがでしょうか?
「自分のような地方出身者だろうと、夢を持った人に対して、周りが『無理だよ』と言うのではなく、その夢を認めて応援してあげるような環境が大事だと思うんです。そういう環境が広がるといいなと思ってこのビジョンにしました。現代社会において、自分の思いをネットで発信しても叩かれることがある。それってすごく残念なことだと思うんです。やっぱり、現実社会でも、ネット社会でも応援したりされたりするような世界にしていきたい」

Q.認めることによって、認められることもありますからね。
「そうなんですよ。そうすることによって、その人との関係性も強くなりますから」

Q.碇選手自身、『プロになりたい』という夢に対して、周りの反応はいかがでしたか?
「あまり夢を口に出すことはありませんでした。でも、可能性が広がったのは高校生になってから。高校1年生の時に選手権に出場して点を決めた時、周りの人たちから認められた実感がありました。そういう点において、自分の環境は良すぎたと思っていますが、自分のような環境で育った人間が活躍することによって、夢を持つ人が増えてほしいと思っています」

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Q.そして、ビジョンについて。「進んでするのが人の上 真似してするのが人の中 言われてするのが人の下 言われてせぬのが人のクズ」。こちらはいかがでしょうか?
「実家にこの言葉が飾ってあったんです。この言葉を見て育ってきて、プロサッカー選手になった今、あらためて『この言葉通りだな』と思ったので、この言葉を選びました」

Q.自分で進んで何かを取り組んで変わった経験はありますか?
「水戸に来てから、いろんなことに興味を持って積極的に取り組むようにしています。まだ水戸に来て1年も経たないので、成果が出ているかどうかは分かりませんけど、自分が興味を持ったことに対して、『忙しいからいいや』と思って自分の可能性を潰すのではなく、『これもやってみよう』と思って取り組むようにしています。自分に合わなければやめればいいだけの話ですし、必要なことを継続すればいい。だから、『すすんでする』ことは意識しています」

Q.練習で疲れている時も面倒くさがらずに取り組むことはできていますか?
「自分は結構スケジュールを入れるタイプなんです。だから、急に何か予定が入ると、困惑してしまうこともあるんですけど、スケジュールに入れてしまえば、どんな状態でも気にすることなく取り組むことはできています。先に決めておけば、問題ないです」

Q.いろんなことに興味を持つタイプですか?
「サッカーに関することはいろんなことをやりたくなってしまいます。筋トレもそうですし、1on1で試合の映像の振り返りも毎週行っていますし、英会話もやっていますし、メンタルビジョントレーニングもはじめています。サッカーに活きることなら、なんでもやりたくなっちゃうんですよね」

Q.今、例に挙げたことは水戸ホーリーホックとして選手に提供している取り組みだと思います。ピッチ外でも選手に対して手厚いサポートをしていることも、水戸を選んだ理由でしょうか?
「水戸に来る前に英会話ができることは聞いていました。あとはMake Value Project(選手対象の知識習得・人材育成プログラム)やMVVの面談などがあるという話を聞いていました。プロ1年目のチームを決める際、いろんな取り組みを行っている水戸に行けば、いろんなことを吸収して、成長できるんじゃないかと思って選びました」

Q.いろんな角度から、いろんなことを吸収して、成長しているのですね。
「充実した日々を過ごすことができています。個人的に話をするのが好きなので、水戸はすごく自分に合ったクラブだと感じています。今年から水戸はTikTokにも力を入れているみたいなので、そこにも積極的に参加しようと思っています」

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Q.最後はミッションについて聞かせてください。「努力すれば報われるのではなく、報われるまで努力する」。こちらはいかがでしょうか?
「努力したから結果が出るわけではない。結果が出た時に『俺は努力したんだな』という思いがついてくる。この言葉はメッシ選手が言っていたと思うんですけど、本当にそうだなと思うんです。努力しても報われないことはある。だから、報われるまで努力することが大事だなと思いますし、報われるまで努力し続けたいという思いがあるので、この言葉にしました」

Q.今まで報われたと実感したことはありましたか?
「やっぱり、プロになれたことですね。自分の今までの努力が報われたと感じています」

Q.学生時代は追い込んできたのでは?
「中学と高校はかなり厳しく追い込みました。中学時代は試合に負けたその後に練習をしていました。高校時代も中学時代の習慣が抜けず、負けた後すぐ学校に戻って練習を続けていました。やっぱり、悔しさはやらないと抜けないんですよ。負けた後、すぐに発散しないと帰ることができませんでした」

Q.元日本代表FW三浦知良選手は40代になって、ナイターの試合でベンチに入りながらも試合に出られなかった後、真夜中にグラウンドで練習をしていたそうです。
「その気持ち、分かりますよ。悔しい思いはすぐに発散しないとモヤモヤするんです。悔しい思いはサッカーでしか解決できないんですよね」

Q.プロになってからはコンディション面を考慮するようになってできなくなったのでは?
「『やめとけ』と止められますけど、やりたくてしょうがないです。プロになっても気持ちは全然変わっていません。練習でも同じです。練習でもうまくいかなかったら、納得するまでやりたくなっちゃうんです。やっぱり、悔しい気持ちがないと、この世界ではやっていけないと思うんですよ。負けず嫌いはサッカーだけではないんですよ。遊びのゲームでも絶対に負けたくない。負けたら、勝てるようにめちゃくちゃ練習します」

Q.プロになってから、一番悔しい思いをしたのは?
「試合に出られない時は悔しいですよ。特に自分のコンディションがいい時にメンバーに入れない時ですね。それ以外にも練習試合でうまくプレーできなかった時やミスした時に周りから叱責された時も悔しいですね。つい最近の話ですけど、頭の整理をするために『俺は世界でプレーするんだ』というモチベーションを持つようにしているんです。ミスをしたから、『ダメだ』とネガティブに捉えるのではなく、『トライしたから問題ない』『世界でプレーするために必要なミス』といったように捉えられるようになってきています。それまではミスをした後に続いてしまうことが多かったですし、周りが見えなくなってしまうこともありました。そこでメンタルビジョンの先生に相談した際、『評価を意識してプレーしてしまったら弱気になってしまう。水戸で評価されようとするのではなく、世界で評価されるようにならないといけない。世界で評価されるようになれば、水戸でも必ず評価されるようになる』というマインドを持つことの大切さを説いていただきました。だから、世界へのベクトルというか、意志を持つことを意識しています」

Q.リーグ戦残り4試合となりました。ここから爪痕を残したい気持ちが強いのでは?
「天皇杯2回戦熊本戦からメンバーに入る機会も出場機会も増えてきました。残り4試合はメンバーに入り続けることを小さな目標に置いて、その一つ上の目標としてスタメンで試合に出たい。(齋藤)俊輔が前節プロ初スタメンを飾ったのを見て、すごく刺激を受けました。それも力に変えていきたい。そして、自分の武器である得点力を発揮して、『点を取れるボランチ』としてアピールしていきたいと思っています」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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