私のミッション・ビジョン・バリュー2024年第7回 野瀬龍世選手「信念」
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多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
2024年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2024年第7回は野瀬龍世選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
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「スタートは今年の1月ですね。加入してすぐにはじめました。10回以上行いました」
Q.他の選手と比べて多いですね。
「他の選手がどのぐらい行っているかは分かりませんが、結構多めに行いました」
Q.ほとんどの選手が5回ぐらいですね。
「1回面談を終えて、『次までにここを考えておこう』と持ち帰るんです。それが浮かんだ時に『こういうのはどうでしょう?』と担当者に連絡すると、『そこについて話しましょう』と返信があって、面談を行うといったことを繰り返しました」
Q.今まで内面や過去を深く掘り下げて、第三者に話す経験はありましたか?
「元々、プロ1年目の夏ぐらいから個人的にある方にコーチングをお願いしてもらっています。中長期の目標を決めましたし、お金の管理についても教えていただきました。プロの世界について知らないことが多いので、知識を得るために勉強させてもらっています。それは今も続けていて、その方と毎月いろいろ話をしています。だから、経験自体はあります。『水戸でもこういうことができるんだ』と思いながら、また新たにこういった機会を得て、さらに自分の考えが整理された感覚があります」
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「小さい頃からサッカーをしていて、ゴールを決めたり、いいパスを出したりした試合の後に周りの人が『良かったよ』と褒めてくれましたし、『また龍世のプレーを見たい』と言われることが多くて、それがすごく嬉しかったんです。それで自分に自信を持つことができました。プロになると、お客さんはお金を払って試合を見に来てくれるわけで、その方たちに対して恥じないプレーを見せないといけないですし、いいプレーをしないといけない。さらに試合にも勝たないといけないし、ゴールも決めないといけないし、戦う姿を見せないといけない。いろんな使命を背負ってプレーしないといけないんですけど、その中で『自分が一番上手い』というところを見せたい。そして、自分のプレーを見て、『また試合を見に来たい』と思ってもらいたいですし、たとえ相手チームの応援をしている人でも試合後に『水戸の13番のプレーが良かった』と思ってもらいたい。そういう記憶に残るようなプレーをしたいという思いを持ち続けているので、この言葉を選びました」
Q.記憶に残るためにも、野瀬選手らしいプレーを見せないといけないですね。ご自身で「自分らしいプレー」とはどのようなプレーだと考えていますか?
「一番はドリブル。ボールを持っていない時の動き出しや背後へのアクション、あとは走る力やハードワークできるところも自分らしさだと思っています。守備も嫌いではないので、守備の駆け引きやチームのために走れることも自分の強みだと思っています」
Q.今季、初のJ2でのプレーとなっています。自分らしいプレーを出せている手ごたえはありますか?
「物足りなさの方が大きいですけど、手ごたえを感じているところもあります。ただ、それを継続的に出せているかというと、そうではないので、悔しいシーズンを送っています。でも、シーズン序盤と比べて、だいぶ良くなったというか、できるプレーの選択肢が増えたと感じています。J2にはクオリティの高い選手もたくさんいますし、経験のある選手もいっぱいいる。いろんなプレーをマネできるし、吸収できる。指導者からもしっかり教えてもらっているので、自分の中での引き出しが増えた印象があります」
Q.天皇杯3回戦横浜FM戦や第27節熊本戦のゴールをはじめ、ゴールに関わる仕事が増えています。
「自分がもらいたい場面でボールが来ない時がリーグ序盤は結構多かった。そこは選手間でコミュニケーションを取ってタイミングを合わせていくしかなかった。そういうこともあって、横浜FM戦ぐらいから自分の武器を仲間に理解してもらって、パスが出てくるようになりました。リーグ戦の熊本戦はたまたまいい形でゴールを決めることができましたけど、そういう部分でようやく合ってきたかなと感じています」
Q.やはり、ゴールは記憶に残りますね。
「自分が決勝ゴールを決めた熊本戦から3連勝しましたし、拮抗した展開のアウェイゲームで勝てたことは大きかった。すごく嬉しかったっですね」
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「今まで自分一人でサッカーしてきたわけではありません。いろんな人と出会う中で、小学生時代は高橋伸安コーチ、中学時代は山内博志監督、重巣建治コーチに大変お世話になりました。釧路市はサッカーが盛んな地域ではなく、環境も整っていませんでした。その中で僕は地域で唯一のクラブチーム(R.シュペルブ釧路)に所属していて、中学時代までに技術のすべてを教わったんです。本当に感謝しています。そして、高校は札幌の学校(東海大付属札幌高)に進学したんですが、石塚公二監督と稲辺史郎コーチに大変お世話になりました。高校では私生活のところで何度か失敗をしてしまったんですけど、そこで見放されることなく、指導し続けてくれたんです。サッカーだけでなく、人間として成長させてもらった3年間でした。プロになって、あらためて人間力の大切さを痛感していますが、高校時代にしっかり指導してもらえていなければ、今はありません。高校卒業後は札幌大学に進み、元Jリーガーの河端和哉監督に教わりました。指導していただき、最初に思ったのは『この人の言うことを聞いてハングリーに4年間サッカーをすれば、絶対にプロになれる』ということでした。高校まではずっとプロになることが夢だったんですけど、大学に入ってから目標に変わりました。自分の中ですごく現実味が出てきました。高校まではボールを受けて何かをするとか、勝負するドリブルを一番の武器としていたんですけど、大学に入って最初に言われたのが『そんなのはいらない』『そんなのではプロでは通用しない』ということで、オフザボールのことばかり指摘されました。それからオフザボールや背後に抜けるアクション、守備の仕方や強度を叩き込まれたことにより、それらが僕の武器となりました。元々持っていた走る力をさらに活かせるようになったんです。実際、ボールに触れるシーン以外のところで評価されて、ヴァンラーレ八戸に入ることができました。河端さんとの出会いは僕にとってすごく大きかったですね」
Q.指導者との出会いに恵まれたんですね。
「そうなんです。すべての指導者に感謝しています」
Q.「家族をはじめ」とも書いていますが。
「最初は『家族に恩返しする』という言葉にする予定だったんですけど、面談を重ねるうちに言葉を変えました。個人的に家族を強調したい思いがあったんですが、話をしているうちに、恩返ししたいのは家族だけではないことに気付きました。僕は小さい頃から『Jリーガーになる』とずっと言っていたんです。何の根拠もないのに。そんな僕の思いに対して、家族は『龍世ならなれる』と信じてくれたんです。その後、夢を追いかけ続けられる環境を作ってくれました。僕は3人兄弟の末っ子ですが、たくさんの愛情とお金をかけて育ててくれた。それは当たり前ではないと思うんです。その感謝の思いを言葉にしたくて、『家族を含めて』という言葉を入れました。僕を今まで育ててくれた人たちへの思いを背負ってプレーする。そして、プレーするだけでなく、結果を出して活躍する。そうすることによって、家族や恩師、友人たちへの恩返しになると思うんです。さらに八戸時代、北九州時代から応援してくれている人がたくさんいますし、水戸にも多くのサポーターがいる。僕が活躍することによって、そういう人たちが喜んでくれる。そして、僕自身もハッピーになる。これが恩返しだと思ったので、ビジョンにしました」
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「中学・高校時代からずっと行っていることで、たとえば試合の前日に『明日の試合はこうやってゴールを決める』とか、良いことばかりを考えて、自分が活躍する場面をイメージしていました。大学に行ってからは試合だけでなく、『紅白戦ではこういうプレーをしてゴールを決める』とか、日々の練習においても成功することを想像してプレーしてきました。プロになっても、『ゴールを決めたら、こういうパフォーマンスをする』とか、『ヒーローインタビューではこういうことを言う』とかを常に考えるようにしています。実際、『成功する未来を想像する』ことで成功する確率が高くなるというデータがあるんです。それを聞いて、今までやってきたことが間違っていないんだと思うことができました。これからも続けようと思って、バリューに入れました」
Q.日々の練習でもイメージしていますか?
「していますね。どうしてもコンディションが良くない時や体が重い時があるんです。でも、いいプレーを想像するだけで体は動くようになるんですよ。だから、試合だけでなく、練習でもイメージすることが大事だと思っています」
Q.2つ目は「こだわりを大事にする」です。
「主にピッチ外のことなんですけど、自分にはルーティンがいくつもあるんです。割と細かいことをルーティンにしているので、今はなるべく増やさないようにしているんですけど、自分がコントロールできる範囲内でこだわりを大切にしています」
Q.現在、いくつぐらいルーティンがありますか?
「試合日に部屋を掃除することだったり、試合前々日にお風呂に行くとか、試合3日前に何を食べるとか、前日に何を食べるとかは決まっています」
Q.次は「慢心しない」です。
「『慢心しない』と次の『ハングリー精神』はセットなんです。『慢心しない』は大学時代に河端さんから常に言われていた言葉です。その言葉が『勘違いするな』と言われているようで、僕としてはすごく嫌だったんですよ。でも、そう言われてから、自信を持つことは大事ですけど、過信にならないように気を付けるようにしています。過去の成功にしがみつくことは絶対にしないようにしています。大学時代は『慢心するな』と絶対に言われないようにすることを心がけていました。一度、大学選抜の選考会に参加することがありました。自分の中ではいいプレーができた手ごたえがあったんですけど、選ばれなかったんです。監督が選考会のスタッフから話を聞いたところ、全然ダメだったみたいです。そこで『勘違いするな』と言われて、ショックを受けました。そこから変わったというか、自分の好きなプレーだけをやっていても評価されないことに気付きました。その時の思いを絶対に忘れないようにするために、この言葉を選びました」
Q.『ハングリー精神』はいかがでしょうか?
「J3の八戸からプロのキャリアがスタートしました。当時はサッカー以外にも仕事をしていたんです。プロサッカー選手なのに、他に仕事をしているという状況にもどかしさを感じていました。今振り返ってみると、『いい経験ができた』と思うことができますけど、当時は本当に苦しかった。いろいろ融通を利かせてくれるいい会社だったんですけど、早くその状況から抜け出したいと思っていました。そして、今J2に上がってくることができましたけど、まだプロサッカー選手としてスタートラインに立ったぐらいだと思うので、これからもっともっとハングリー精神を出していきたいと思っています」
Q.大卒3年目でJ2にたどり着きましたね。
「水戸にいると、中堅扱いなんですけど、まだまだ若いと思っているので、ガンガンやっていこうと思っています。大卒で水戸に来た選手には分からないかもしれませんが、本当にアツマーレは素晴らしい施設。でも、この環境は当たり前ではないんですよ。日々感謝しながら、トレーニングすることができています」
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「自分は今まで志というか、魂みたいなものを持ってプレーしてきたので、スローガンは力強い言葉にしたいと思ったので、『信念』にさせてもらいました」
Q.これまでどんなことがあってもブレなかったことは何でしょうか?
「ずっと自分が一番だと思ってきましたし、目の前の相手に絶対に勝つという気持ちを持ち続けてきました。本当に負けず嫌いですし、負けても次は絶対にやり返すというような気持ちをずっと思っています」
Q.ピッチ内ではピッチ外とは別人のようにギラギラしていると話すチームメイトが多いです。
「あまり意識はしていません。だからこそ、無意識でそういうマインドになれていることはいいことだと思います。これからもピッチ内では変わらずギラギラしてやっていきたいです。同時にピッチ外では静かでいたいと思っています(笑)」
Q.シーズン後半に入ってから野瀬選手らしさが出るようになっています。ただ、シーズン前半戦はらしさを出せず、出場機会に恵まれない時期もありました。それでもブレることはありませんでしたか?
「起用されないのには理由があるので、受け入れることも大事だと思っています。でも、受け入れすぎて、自分のいい部分が消えてしまったら意味がない。『自分はできる』とずっと思っていますし、紅白戦でも『俺が一番良かった』と思うこともありました。その中で大事なのは聞く力。傾聴力を意識するようにしていました。その結果、自分のやってきたことを信じながら、新たな引き出しを持つことができたと思っています。でも、結果には満足していません。まだまだ力不足のところがあるので、もっともっとやっていきたいと思います」
Q.残り試合に向けて意気込みをお願いします。
「終わりよければすべてよしではないですけど、残り試合で連続ゴールを決めれば注目されると思いますし、ホーム最終節で複数得点を決めればヒーローになれる。成功する未来を想像しながら目の前の試合に臨んでいきたいと思っています」
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