私のミッション・ビジョン・バリュー2024年第5回 齋藤俊輔選手「なんとかなる」
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多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
2024年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2024年第5回は齋藤俊輔選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
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「昨年の11月ぐらいからはじめました。1回1時間ぐらいの面談を4~5回行いました」
Q.今まで自身の内面や過去について、第三者に深く話をしたことはありましたか?
「なかったです。『こんなことがあったな』と思い出すことがたくさんありましたし、自分の考えや思いを自分の中で整理できました。原点を思い返せるいい機会になりました」
Q.自身のMVVを見ての感想は?
「自分のありのままが出ているというか、考えてきたことが言葉になったという印象です」
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「高卒で水戸に拾ってもらって、今はプロでサッカーすることができています。だからこそ、水戸のクラブと街に対して、感謝の思いを持っているので、恩返しをしたいという思いを込めて、この言葉に決めました」
Q.水戸に加入するまで、水戸との縁は?
「まったくなかったです。水戸の街に来たこともなかったです」
Q.加入して、水戸に愛着が沸いたわけですね。チームの印象は?
「応援してくださっている方が、たとえば試合で負けた後でも励ましの声をかけてくれますし、自分たちを罵倒するのではなく、『もっとできるぞ』と言ってくれるんです。そういう声がすごく力になっていますし、サポーターとの距離が近くて、自分たちと向き合ってくれていることをすごく感じています。サポーターといい関係を築けているチームという印象です」
Q.齋藤選手は中学生時代、横浜F・マリノスのジュニアユースに所属していました。横浜FMとは環境面などの差があると思いますが、違う良さも感じていますか?
「横浜FMの環境は素晴らしかったですけど、アツマーレも充実した環境が揃っていると感じています。自分たちが強くなるための設備が整っている。環境に甘えていられないです」
Q.「水戸に拾ってもらった」という表現をされましたが、水戸からオファーが来た時、そういう感覚だったのでしょうか?
「高校時代、プロになりたいと思っていたのですが、Jリーグクラブからのオファーはなく、『大学進学かな』と考えるようになっていたところ、水戸がオファーを出してくれたんです。だからこそ、『拾ってくれた』という思いが強いですし、水戸で頑張りたいと思って、水戸に来ることを決めました」
Q.あらためて、どういう思いでプロになりましたか?
「海外、特にプレミアリーグでプレーすることが僕にとっての大きな目標です。そのために大卒でプロになるより、高卒でプロになった方が実現しやすいと思って、プロになることを決めました」
Q.1年目からコンスタントに試合に出場し、ゴールという結果も残しています。ご自身としては、これまでのプレーをどのように評価していますか?
「シーズン序盤の時から考えれば、『想像以上』と言うことができます。シーズン序盤は試合に絡めない時期が続いて、『無理かな』と思った時もありました。苦しい時間が続きました。でも、徐々に慣れも出てきて、トレーニングマッチなどで自分の良さを出せるようになってきて、それを評価してもらって、試合に使ってもらえるようになりました。だからこそ、今は公式戦で自分をもっと出さないといけないという思いの方が強いです。今のままではこれからチャンスがなくなってくるなという危機感を持っています」
Q.横浜FC戦でゴールを決めました。スタンドが大きく盛り上がりました。まさに「笑顔にした」瞬間でした。どんな感情でしたか?
「自分のゴールでサポーターを喜ばすことが出来たのが嬉しかった。もっとその回数を増やしていきたいですし、もっとサポーターを笑顔にしたいという思いが強くなりました」
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「2019年、横浜FMの優勝が決まった試合をスタンドで観戦していました。勝って優勝を決めて、満員の日産スタジアムがすごく盛り上がったんです。現地でその経験をして、サッカーの影響力の大きさをすごく感じたんです。J1のクラブと比べたら、水戸はまだ小さなクラブなので、もっと結果を出して、水戸の街を盛り上げたい。そして、19年に僕が味わったような思いを1人でも多くの人に感じてもらいたい」
Q.水戸で結果を出して、地域を盛り上げる起爆剤になりたいのですね。
「水戸が過去最高成績をおさめ、最終節までJ1昇格争いを繰り広げた2019年は多くの人がスタジアムに来てくれたという話を聞きますし、チームが結果を出せば、そういう盛り上がりを作ることができる。だからこそ、水戸がプレーオフ進出や昇格争いをすることが、『中心に回る』ことにつながっていくと思っています」
Q.横浜市出身の齋藤選手にとって、子どもの頃から横浜FMは身近な存在だった?
「そうですね。横浜市は人口が多いですし、サッカー人口も多い。その中で横浜FMのような大きなクラブが身近にあったことは、すごく良い環境だったと思っています」
Q.茨城県には鹿島アントラーズという大きなクラブがあります。どうしても比べられる機会も多いと思います。だからこそ、水戸ホーリーホックというクラブのブランド力も高めていきたいという思いが強いのでは?
「アントラーズはお客さんがたくさん入っていますし、茨城県に根付いている。だからこそ、同じカテゴリーに上がることによって、水戸もそういう状態になれると思っています。水戸をそういうクラブにすることが使命だと感じています」
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「プロサッカー選手になったということは、見られる立場になったということなので、子どもたちの手本となる行動を意識したいと思っています」
Q.齋藤選手がお手本にしている選手はいますか?
「横浜FMキャプテンの喜田拓也選手ですね。人間性が素晴らしく、ジュニアユース時代からの憧れの存在です。喜田選手もアカデミー出身ということもあり、アカデミー時代に僕らのことを見に来てくれることもありました」
Q.2つ目は「水戸を明るくしたい思いに対して恥じない行動をする」とあります。こちらはいかがでしょうか?
「先ほどお話した『水戸の人を笑顔にする』ことにつながる言葉です。プレーしている人間が、間違ったことをしているようでは、応援してもらえないと思いますし、応援してくれる人を残念な思いにさせてしまう。そういうことがないように、この言葉を選びました」
Q.周りの人は細かなところまでよく見てますよね。それをプロになってすごく感じているのでは?
「すごく感じています。サポーターの方と話をしても、自分では意識していなかった行動も見られているんですよね。だから、常に意識して行動しないといけないと思っています」
Q.3つ目は「小さいことを積み重ねる」です。
「練習にしても、それ以外にしても、日々の積み重ねが大事だと思っています。何もしないのではなく、とにかく動いて自分のためになることを探していこうという思いの言葉です」
Q.具体的に意識して取り組んでいることはありますか?
「毎日やるべきことをちゃんとやることです。体のケアもそうですし、食事などピッチ内外のことに常に気を遣うようにしています」
Q.4つ目は「今できることに対して全力を尽くす」。
「この環境でサッカーできていることに対して、日々感謝しないといけない。僕らの現状より厳しい環境でサッカーをしている人たちがたくさんいるわけで、この状況に甘えることなく、自分に厳しくしながら、何事も全力で取り組もうと思っています」
Q.次は「責任を持つ」です。
「『恥じない行動をする』につながっていて、プロになったからには大切にしなければならない意識だと思います」
Q.「高卒ルーキー」という立場に甘えることなく、1人のプロとしての自覚を持って取り組もうという意識が込められた言葉ですね。
「1年目なので、いろんな人が助けてくれるんです。でも、それに頼りすぎてしまったら、成長はないと思いますし、何もできなくなってしまう。だからこそ、自分でアクションを取ることが大事だと思っています」
Q.相談する相手はいますか?
「同期の(碇)明日麻と(尾野)優日は近い関係ですし、なんでも言い合える関係なので、困ることはあまりないですけど、よく話はしています」
Q.試合に出続けているだけに、結果を求められているという自覚を持って日々の練習に取り組めているのでは?
「そういう気持ちは特に最近強くなっています。試合に出られる喜びより、結果を残すことに矢印を向けて取り組んでいます。もっと結果にこだわっていきたいですね」
Q.そして、次は「プロで活躍してる姿を見せる」。こちらはいかがでしょうか?
「今までいろんな人が支えてきてくれました。プロサッカー選手は選手寿命があまり長くないと言われているので、その中で自分を出していきたいという思いからきた言葉です」
Q.「見せる」とは今まで支えてきた方々に、でしょうか?
「そうです。特に高校時代に出会った指導者やチームメイトには本当に助けてもらったので、恩返しの意味でも活躍する姿を見せたいです」
Q.次は「苦しい時でも自分を貫く」。こちらはいかがですか?
「楽な方に逃げることがあったら、成長はできないと思います。つらい時にこそ、前向きに矢印を向けることが自分の成長につながる。逃げないことが大事だと思っています」
Q.苦しいことを乗り越えた経験はありますか?
「高校2年の冬ですかね。走りのメニューが多かったのですが、けがなく、乗り越えることができました。その結果、春になって、すごく走れるようになったんです。その経験は自分にとってすごく大きいです」
Q.今につながっている?
「そう感じています」
Q.最後は「今の現実から逃げない」です。
「結果が出なくても、自分と向き合って『何が必要か』を常に求めていかないと上には行けないと思っています」
Q.どのように自分と向き合うようにしていますか?
「自分で映像を見て振り返って、スタッフと映像を見て振り返るということを繰り返しています。その時にどのプレーが正しかったのかを確認しますし、自分に足りないものを再認識するようにしています」
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「どんなにきつくても、人間できないことはないんですよ。それを特に高校時代に体感したので、この言葉をスローガンにしました」
Q.自分で限界を決めることなく、取り組んでいくということでしょうか?
「そうです。限界を突き抜けることによって、絶対に自分に戻ってくるものがある。ただきついだけで終わることはない。すべては自分のためになる。どんなにきついことに対しても、そういう思いを持って取り組むことを大切にしています」
Q.プロになってからはいかがでしょうか?
「それこそ、デビューした時は『本当にピッチに立つことができるんだ』という感覚でした。鹿島とのプレシーズンマッチでも、日本代表選手がいる相手と同じピッチに立って、最初は怖さがありましたけど、実際はなんとかなったんで、やってみるものだなと感じました」
Q.「なんとかなる」と思ってトライし続けることによって、自分の枠がどんどん大きくなっていくことを体感しているんですね。
「そうです。自分で限界を決めないようにしています」
Q.第18節長崎戦でJリーグデビューを果たしました。上位相手に拮抗した展開の中で投入されましたが、どんな思いでピッチに入りましたか?
「しかも、一枚目のカードで投入されて驚きました。でも、実際ピッチに立ったら、ビビることはありませんでした。結果を出すことはできませんでしたが、自分のプレーをある程度出すことができましたし、チャンスを作ることはできました。終わってから、『なんでやれたんだろう?』という不思議な気持ちがありました(笑)」
Q.第24節横浜FC戦でプロ初ゴールを決めました。「なんとかなる」精神がいい方向に向かいましたね。
「そうなんです。あの場面でもなんで自分はドリブルしているのか、なんでゴール前に入っていったのか、分からなかったんです。無意識でしたね。終わってから映像を見て『すげえ』と思いました(笑)。意外となんとかなるんです」
Q.GKまで抜いてゴールを決めました。
「何も考えず、身体が勝手に動きました」
Q.ルーキーイヤーも残り5試合となりました。意気込みを聞かせてください。
「とにかく結果を残したい。1ゴールでは満足できません。これだけ監督が信頼して起用してくれているのに、結果を残さないと信頼を失ってしまう。チームの勝利に貢献できるような選手になりたいです」
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