私のミッション・ビジョン・バリュー2022年第8回 唐山翔自選手「人との関わり」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが2020年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

今季も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2022年第8回は唐山翔自選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.このミッション・ビジョン・バリューを作成するのに、どのぐらい面談を行いましたか?
「1回1時間ぐらいの面談を5回ぐらい行いました」

Q.面談をしてみていかがでしたか?
「自分が今まで考えていなかったようなことを考えさせられて、自分の中で新しく考えがまとまった感じがあります。間違いなく、自分にとってプラスになったと思います。自分で自分のことを知ることができました」

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Q.まず、ミッションについて聞かせてください。「サッカーを通じて人を笑顔にする」。この言葉に込めた思いを聞かせてください。
「自分でいうのも恥ずかしいんですけど、自分はよく周りの人から面白いと言われますし、周りの人が笑顔になれるとよく言われるので、この言葉を選びました」

Q.面白いことをしている自覚あるのですか?
「普通にしているだけなんですけど、笑われることが多いんです(笑)。別に嫌な気はしませんけど」

Q.いつも明るい印象があります。意識しているのですか?
「いや、全然ないです。でも、落ち込んで、何も喋らない時も結構あるんですよ。普段は特に何も意識していることはないです」

Q.笑顔にする喜びは、どういう時に感じますか。
「自分が意図して言ったことややったことで周りの人が笑ってくれたらうれしいですけど、逆に、意図した時はあんまりウケないんです。普通の時の方が笑ってくれますね。自分で何が面白いのか、分かりませんが(苦笑)」

Q.このミッションは「サッカーを通じて」と言う言葉があります。サッカーを通じて人を笑顔にする喜びはどういう時に感じますか?
「楽しそうにサッカーをすることで周りの人が楽しい気持ちになってくれたらいいなと思っています」

Q.サッカーは常に楽しみながらプレーしている?
「楽しむというか、前向きな姿勢を見せたいと思っています」

Q.第31節東京V戦で素晴らしいゴールを決めましたけれども、それまでは出場機会が得られず、苦しい時間が続いたと思います。その期間は唐山選手にとってどんな時間となりましたか?
「自分の中で結構浮き沈みが激しかったですね。毎日『しっかりやらなあかん』ということは分かっているけど、憂鬱になってしまう日もありました。それでも、やっぱりうまくなりたいっていう気持ちもあって、自分なりに頑張れたかなと思います」

Q.沈んだ時はどう自分を奮い立たせましたか?
「全然奮い立たせることができなかったですね。しんどかったです。練習中に沈むことはありませんでしたけど、練習が終わって家に帰って一人でいたらホンマに気持ちが落ちちゃうんです。ネガティブなことばかり考えてしまいました。ただ、逆にネガティブなことばっかり考えることによって、今まで考えてもなかったようなことを考えるようになって、いろんなことが分かるようになっていったんです。それで、精神的にすごく強くなったという実感はあります」

Q.ネガティブなことを考えてしまうことも決してマイナスではなかった?
「人間ってそんな強くないなと思うんですよ。一番思ったのは、『世の中は自分のためにあるんじゃない』ということ。それは当たり前のことなんですけど、すごく実感しました。世の中は自分のためにあるわけじゃないけど、それでも自分が好きなことをやろうと思うようになって、すごく気が楽になりましたし、それからいろんなことがうまくいくようになったんです」

Q.昨年までそこまで沈んだことはありましたか?
「ないんです。今まですごくできすぎた人生だったんですよ。なので、うまくいって当たり前と心のどこかで思っていたところがあったんです。だから、その当たり前のことに苦労しました」

Q.その苦しんだ状況を乗り越えて決めたゴールに価値がありますね。
「自分がやっていることが間違いではないと思わせてくれたゴールでした」

Q.ゴールでたくさんの人を笑顔にしましたね。
「本当に嬉しかったです。試合に出られない状況が続きましたが、7月ぐらいから自分の中ですごく成長してるなと思えるタイミングがあったんです。その手ごたえがずっと続いているんです。東京V戦前も普通にプレーできたら活躍できるという自信がありました。練習って大切だなと思いますね。試合に出ていない時期に紅白戦でクス君(楠本卓海選手)や(鈴木)喜丈君とマッチアップすることが多かったんですけど、2人が『もっとこうしたらいいよ』とアドバイスをしてくれたんです。それが僕をすごく成長させてくれました。だからこそ、公式戦でも普段通りのプレーができました」

Q.多くの人を笑顔にするためにも、ゴールや勝利という結果を出していきたいという思いが強いのでは?
「自分はゴール決めるのが好きですし、それが自分の仕事だと思っています。今シーズンも残り試合が少なくなりましたが、1つでも多くのゴールを決めて、多くの人を笑顔にしたいと思っています」

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Q.次にビジョンについて聞かせてください。「サッカーが日常の一部に」。どのような思いが込められているのでしょうか?
「僕は心からサッカーに感謝しているんです。大好きなサッカーがもっと広まって、いろんな人にサッカーを楽しんでもらいたいなと思って選んだ言葉です」

Q.今までサッカー以外で取り組んだことはありますか?
「ないです。何もできなかったんですよ」

Q.サッカーをやってよかったと思うことは?
「サッカーしか知らないので、あまり分からないんですけど、先ほど話した『世の中は自分のためにあるわけじゃない』とか、『人としてどう生きていくのか』とか、サッカーから人生における大切なことを学びました。僕はサッカーをしていますけど、社会人の方も自分の仕事に必死になっていると思うんですよ。だから、自分が特別なわけではないですし、みんな同じなんですよ。そういうことを最近すごく思うようになりました。特にサッカーは個人スポーツではないので、人との関わり方も含めて社会性を学ぶことができました。なので、これからもっと多くの人を巻き込めることができたら最高だなと思っています」

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Q.次はバリューについて聞かせてください。3つありまして、1つ目が「感謝をピッチで表現する」とあります。この言葉について教えてください。
「誕生日に点を取れた時に本当に思ったんですけど、結果を出せたのは自分だけの力ではありません。いろんな人が関わってくれて自分がサッカーをすることができているんです。そのことを絶対に忘れてはいけないなと思います。というより、その気持ちを当たり前のように持っておきたいと思っています」

Q.今までのサッカー人生において、ご両親のサポートが大きかった?
「もちろんです。ただ、親だけではありません。友達も含めてですね。いろんな人が応援してくれているということを感じられることが、ものすごく嬉しいんです。水戸のサポーターの中に僕を応援してくれるカップルがいるんです。いつも温かい言葉をかけてくれて、本当にありがたいと思いますし、メンバー入りした時にはスタンドのサポーターから大声で励ましの言葉が送られることがあります。本当に応援されるのって、うれしいですし、力になるし、励まされるんです。そういう方々に対する感謝の思いを持ってプレーしようと思っています」

Q.2つ目は「人との縁を大切にする」。こちらはいかがでしょうか。
「出会った人たちと仲良くしたい。そうやって生きていきたいんです。人を大切にしながら、みんなが笑顔で過ごせるたらいいかなと思っています」

Q.今まで何か縁を感じたことってありますか?
「いっぱりありますけど、G大阪U-23時代にお世話になった森下仁志監督からはものすごく影響を受けました。森下さんと僕は同じ誕生日なんです。なので、勝手に縁を感じてます。加入後初ゴールを決めた後にも『おめでとう』と連絡していただき、すごくうれしかったです」

Q.チームメイトからもかわいがられていますね。
「G大阪U-23時代のチームメイトだったジェフ君(タビナス・ジェファーソン選手)には感謝の思いしかないです。家族ぐるみで優しくしてくれています。そして、ジェフ君だけでなく、みんなが苦しんでいる時にアドバイスをくれました。先ほど話したセンターバック2人もそうですし、(木下)康介君もいろいろ教えてくれましたし、(本間)幸司さんもアドバイスをくれました。話を聞いて、すごく気持ちが楽になりました」

Q.3つ目が「サッカーに関わる輪を広げる」。こちらはいかがでしょうか。
「今まで話したことを実行していって、サッカーの輪が広がったらいいなと思ってこの言葉を選びました。最終的にいろんな人を巻き込んでいきたい。サッカーをプレーするのでもいいですし、見るのでもいいし、応援するでも構いません。自分の周りにいる人たちがいろんな形でサッカーに関わってくれたらいいなと思っています」

Q.そういうことを思うようになったのは、プロになってからですか?
「プロになって応援してくれる人たちを見て、そう思うようになりました。実際、プロになったら、今まで関わってきた人たちが応援してくれるんです。これからも期待に応えられるように頑張っていきたいと思っています」

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Q.最後にスローガンについて聞かせてください。「人との関わり」とあります。これ今までお話されたことの総括かなという感じがします。
「人との関わりを大事にして楽しく生きていくことがベストだと思っています」

Q.人と関わることで大切にしていることはありますか?
「当たり前ですけど、相手が嫌なことはしない。誰しもが言われたくないこととか、大切にしているものってあるじゃないですか。そこに足を踏み入れるのは本当に良くないなと思います。楽しくするためにも、嫌な気持ちにならないことは大事だと思います。そこはすごく意識しています。あとは自然に接するようにしています」

Q.唐山選手は年上から可愛がられるキャラのような気がするんですけど。
「今まで年上と接することが多かったから、そう思われるんだと思います。でも同い年とも後輩とも仲がいいですよ。水戸では同期の(柳町)魁耀とも仲がいいですし、年上とか、年下とか、そんなに気にすることなく接していますよ」

Q.唐山選手はパスを出してもらう側じゃないですか。人と関わりを持って、相手のことを知ることによってパスの出し手とのコンビネーションがよくなるのでは?
「それは間違いなくあると思います。サッカーで言えば、その人のボール持ち方やパスのタイミングを理解することは大事ですし、性格的な面でもあまり要求されたくないタイプの人には言わないようにして自分が合わせるようにしますし、ウエルカムの人にはどんどん要求するようにしています。人によって接し方を変えています。要求する際の言い方にも気を配っています」

Q.気を遣っているんですね。
「気を遣っているというか、それでパスを出してもらえなくなったら嫌なので、いい関係を築くことは意識しています」

Q.残り試合少なくなってきましたが、意気込みを聞かせてください。
「残り4試合でもっとインパクトを残したいし、何よりチームとして結果を出すことが大事だと思っています。自分に自信を持ってはいるので、残り試合も結果を出していきたいと思っています。終わりよければすべてよしという考え方を僕は大切にしているので、個人としても、チームとしてもいいシーズンの終わり方をしたいと思っています」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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