私のミッション・ビジョン・バリュー2022年第3回 梅田魁人選手「サッカーへの恩返し」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが2020年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

今季も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2022年第3回は梅田魁人選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.ミッションビジョンバリューを作成するのに面談はどのぐらい行いましたか?
「3回ぐらいですね。1回2時間ぐらいでした」

Q.面談を行ってみて感じたことは?
「あらためて話すことで思い出すこともありましたし、そういう経験が今につながっているんだなということも実感しました」

Q.ミッションビジョンバリュー作ってみて、自分らしい言葉になったなと感じでしょうか?
「自分が考えていることを言語化できたとは思っています」

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Q.まずミッションについて聞かせてください。「日本にサッカー文化をもっと根付かせる」。この言葉にはどのような思いが込められていますか?
「日本は野球の文化がすごく強いということを感じていて、甲子園はすごく盛り上がますし、プロ野球の観客数も多い。そして、プロ野球選手の年俸もJリーグよりも高い。最近でいうと、ワールドカップ最終予選のアウェイゲームが民放で放送されなかったということがありました。そういうのも含めて、サッカーにあまり興味ない国民が多いという現状を感じています。その状況を一人の力で変えていくのは難しいのですが、影響を及ぼせるような人間になりたいという思いがあります」

Q.日本にサッカー文化を根付かせるためにどういったことが必要になってくると思いますと。
「プロサッカー選手になって感じているのは、学生の時よりは周りから見られるようになったということ。自分の一つ一つの言動を周りの人に見られている。自分が影響を及ぼせるようになっているということを、水戸に来てから行っている様々な活動を通して感じることができています。一概には言えないかもしれませんが、サッカーを見に来ている人の中でめちゃくちゃサッカーが好きだという人の割合はそんなに多くないと思うんですよ。観客には、いろんな年齢の方がいますし、イベントを楽しみに来てくれる人もいますし、スタグルを楽しみにしている人もいると思います。だからこそ、サッカーを見るようになるきっかけとしては、オフザピッチのところが多いように感じていて、サッカーに興味ない人に試合を見に来ていただけるようになるには、ピッチ外の活動が非常に重要だと思っています。だからこそ、水戸はそういった活動をたくさんしていますし、それがこのクラブのよさだと感じています。そこに僕自身も乗っかっていきたいと思ってます」

Q.そういった活動を通して、梅田選手自身が得たものもあるでは?
「水戸に来て1年目で、小美玉市PR大使に選んでいただきました。正直なところ、水戸に来るまで小美玉市がどこにあるかも知らなかったのですが、小美玉市のことをいろいろ調べていったところ、いろんな魅力があることに気づきました。実際、SNSや直接地域の方とコミュニケーションを取ることによって、水戸ホーリーホックを応援してくれるようになったということがありましたし、逆に小美玉市に行ったことがなかったサポーターが小美玉市に行くようになったということもありました。そういうことが地域の活性化につながっていくと思います。もちろん、水戸ホーリーホックの試合を見に来てほしいという思いはありますけど、地域の活性化という点で小美玉市のことを多くの人知ってもらうっていうのは活動の中でも重要なことなので、引き続きやっていきたいと思いますし、すごくやりがいを感じています」

Q.文化を根付かせるために、これから影響力を大きくしていきたいという思いがあるのでは?
「上のカテゴリーに行けば行くほど、影響力はどんどん大きくなっていきます。でも、大事なのは今できる活動をしっかりすることだと思っているので、これからもできる限りやっていきたいと思っています」

Q.日本サッカー文化を根付かせるために、まずは今水戸でしっかり文化を根付かせたいという思いがあるのですね。
「“日本”と言うと、規模がすごく大きくなってしまうので、それはあくまで最終的な目標であって、まず今は水戸にサッカー文化を根付かせるということを、直近の目標であり、ミッションとして取り組んでいます」

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Q.次はビジョンについて聞かせてください。「人生の目標を持ち、強く生きていく人が増えている社会」。この言葉の思いは?
「今までずっとスポーツをしてきて、僕の周りにも同じ熱量を持って、目標を持っている人たちがたくさんいました。でも、スポーツ以外の世界の人とはそれほど接点がなかったんです。その中で一番強く印象に残っているのが、大学時代の教育実習での出来事でした。母校の高校にお世話になったんですけど、そこで接した子どもたちのコミュニケーション能力や目的意識がずっとスポーツをしてきた僕らと全然違うことに気づいたんです。僕からの発言に対してのリアクションもほぼなかった。そういう子どもたちの姿勢が僕の中ですごく衝撃で、どっちかというと、世の中ではそういう人たちの方が割合的に多いんじゃないかと思ったんです。別にスポーツじゃなくてもいいんです。目標を持つことによって、目の前の一つ一つの選択も変わっていくし、生活習慣なども変わっていく。なので、多くの人に目標を持つ大切さを伝えたいと強く思うようになりました。そして、多くの人が目標を持って努力をするようになったら、世の中がもっとよくなっていくんじゃないかと思い、この言葉をビジョンにしました」

Q.梅田選手自身は強く生きてきたという自負はありますか。
「僕はプロサッカー選手になることを目標としてきましたし、プロになってからはワールドカップで点を取るという目標を持っています。その目標を持っているからこそ、迷った時でもぶれずに選択肢を決めることができるし、自分の進む道を自分で決めることができているんだと思っています」

Q.人生の中でターニングポイントになった出来事はありましたか?
「大学時代、全日本大学選抜に選ばれていましたし、プロにはなれると思っていました。大学4年時にはいろんなチームに練習参加させてもらったのですが、なかなかいい返事がなくて、自分のパフォーマンスがどんどん落ちていってしまったんです。その時、サッカーを続けるか、就職をするか考えていた時がありました。そこでスタッフの方といろいろ話した結果、サッカーをここまでやってきたのはサッカーが好きだからであって、今諦めたからこの先に絶対後悔すると思ったので、踏ん張ることに決めました。結果的に大学卒業してJリーガーにはなれなかったんですけど、そこから毎年カテゴリーを上げて、今はJ2でプレーすることができています。大学4年の一番悩んだ時期に、自分の目標に対して踏ん張れたことは人生の転機になったと思っています」

Q.大学卒業後は当時JFLに所属していた宮崎に加入します。Jリーガーにはなれませんでしたが、モチベーションや目標を変えずに取り組むことはできていましたか?
「全日本大学選抜でチームメイトだった三笘薫や旗手怜央、田中駿太、林大地といった選手たちが1年目からJ1でめちゃくちゃ活躍していたんです。それを僕はJFLというカテゴリーから見ていて、羨ましいという気持ちももちろんありましたが、彼らとそんなに差がないことも分かっていました。なので、必ずチャンスが来ると信じて、今自分ができることをやろうと思って、日々過ごしていました」

Q.どんな環境でもしっかり目標を持って取り組み続けることが大事なんですよね。今振り返ってみて、JFLでの1年は大きかったのでは?
「JFLの時もJ3の時も、僕はホーム戦の前日の準備をしていましたし、そういう経験は大卒でプロになった選手はできないと思うので、そういう裏方の人たちが何をしいるかを知れたことは自分にとって大きいですね。さらに、ボランティアの方の活動も見ることができました。本当にいろんな人に支えられてサッカーができているということを学ぶことができました。他の人と違う経験しているところは、自分の強みになっていると思っています」

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Q.次はバリューについて聞かせてください。まず1つ目が「常に厳しい選択をし続ける」。
「人間が生きている中で、選択を迫られる機会はたくさんありますが、そこで、しんどくても自分のためになる方を選んでいければ、絶対に自分の目標に近づいていけると感じています。だからこそ、まず目標を持つことの大切さをみんなにも伝えたいです。その目標をどれだけ強く持てるかによって、その選択は変わってくる。どれだけ自分に厳しい選択をし続けられるかは、僕がサッカーしている上で大切にしていることですし、サッカーやスポーツ関係なくても、一人の人間として厳しい選択をしていくことは大切だと思っているので、それを僕はスポーツを通して伝えていきたいと思っています」

Q.日常生活でも厳しい選択をしていますか?
「サッカーに付随していることが多いですけど、食生活や睡眠時間などにはこだわっています。それは少しの差かもしれないですけど、結局それが大きな差になるんです。筋トレでも、本当にしんどくなってきてから、あと1回上げられるかどうかにもこだわっています。目標がなければ、そこで踏ん張らずにやめちゃうと思うんですよ。先ほど話したビジョンがあるからこそ、このバリューがあるという感じですね」

Q.次は「軸をぶらさず生きる」。
「大学2年の時、背番号10番をもらったんです。2学年上の先輩がいる中でかなり期待されていたと思うんですけど、年間通してあまりゴールが伸びなかったんです。でも、アシストはかなりしていたので、それでいいと思ってしまうところがありました。でも、結局、それは自分自身の成長につながらなかった。FWとしてやっぱりゴールを決めるというのが、僕自身サッカーで一番好きなことだったので、アシストで満足することなく、ゴールにこだわろうと強く思ったんです。自分の軸がぶれたら、結果もついてこないし、何より成長しないということをその時に気づくことができました」

Q.もう一つが「様々なことに感謝する」。
「宮崎で過ごした2年間で、他のJリーガーには気づけないことを気づくことができました。それが直接プレーに関係するかどうかは分かりませんが、応援される選手や信頼される選手になるために、僕自身が大切にしていることです。それはどの職業に就くにしろ、大切なことだと思うので、この言葉を選びました」

Q.水戸はフロントスタッフとの距離が近いですし、サポーターと触れ合う機会も多いです。選手以外の人と触れ合うことで感謝の気持ちが大きくなっているのでは?
「フロントスタッフの一人一人がどういう仕事をしているとかまでは把握していませんけど、いろいろな方に携わっていただいた中でイベントやホームゲームが開催されていることは僕等にもよく伝わってきています。なので、すごく感謝の思いを持っています。また、毎日練習を見に来てくれる人たちもいますし、試合を見に来てくれる人にも感謝しています。特にアウェーまで足を運んでくれるサポーターは本当にすごいと思うんですよ。リスペクトしています。選手としてもそうですし、一人の人間として感謝しています」

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Q.最後にスローガンについて聞かせてください。「サッカーへの恩返し」。この言葉に込められた思いは?
「スローガンを考える時に一番パッと頭に浮かんできた言葉です。僕はサッカーしてきて培ったものがすごく大きいんです。サッカーをしてきたことによって、健康な体やコミュニケーション能力を身につけることができましたし、メンタリティや人との繋がりや人脈といったものはサッカーをしてきたからこそ得られたと思っています。自分が今までサッカーをしてきた価値をどう示すことができるかを考えた時に、やっぱり日本のサッカーに少しでも影響を与えられる選手になりたいと思ったので、その思いを“恩返し”という言葉で表現しました」

Q.「恩返し」はどういった形で行っていきたいと考えていますか?
「僕自身の目標はワールドカップで点を取ることなんですけど、それは僕が考えている“
恩返し”ではありません。やはり、もっとたくさんの人にサッカーを好きになってもらいたいし、サッカーに興味を持ってくれる人やサッカーをしたいと思う子どもを増やしていきたい。僕はサッカーをしてきて本当によかったと思っているから、サッカーに恩返しをしたいんです。多くの人にサッカーの魅力を感じてもらうために、サッカーの素晴らしさをもっともっと発信していきたい。そして、日本のサッカー人口がさらに増えて、もっとたくさんの人がスタジアムに足を運ぶようになるための力になっていきたいと思っています」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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