ファンが選ぶ「フォークボール最強投手」ランキング
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スポーツナビでユーザー投票を実施した「フォークボール最強投手ランキング」。1万人を超えるプロ野球ファンが選んだ、フォークの名手は誰だ!?
今回はOB投手編のランキングを発表します!
※1人3票まで投票可能
※ランキング上位と総評コラムはスポーツナビアプリでご覧いただけます
ランキング
順位 | 選手名 | 所属/プレー年 | 得票率 |
---|---|---|---|
1 | 佐々木 主浩 | 横浜ほか/1990〜2005 | 68.45% |
2 | 野茂 英雄 | 近鉄ほか/1990〜2008 | 44.64% |
3 | 村田 兆治 | ロッテ/1968〜1990 | 26.76% |
4 | 上原 浩治 | 巨人ほか/1999〜2019 | 12.33% |
5 | 永川 勝浩 | 広島/2003〜19 | 8.87% |
6 | 杉下 茂 | 中日ほか/1949〜61 | 7.56% |
7 | 斉藤 和巳 | ソフトバンク/1996〜2010 | 5.85% |
8 | 浅尾 拓也 | 中日/2007〜18 | 4.98% |
9 | 藤川 球児 | 阪神ほか/1999〜2020 | 4.05% |
10 | 遠藤 一彦 | 大洋/1978〜92 | 3.49% |
11 | 牛島 和彦 | ロッテほか/1980〜93 | 2.98% |
12 | 野田 浩司 | オリックスほか/1988〜2000 | 2.76% |
13 | 村山 実 | 阪神/1959〜72 | 2.50% |
14 | 豊田 清 | 西武ほか/1993〜2011 | 2.08% |
15 | 馬原 孝浩 | ソフトバンクほか/2004〜15 | 2.06% |
16 | 伊良部 秀輝 | ロッテほか/1988〜2004 | 1.95% |
17 | クルーン | 横浜ほか/2005〜10 | 1.39% |
18 | 岩隈 久志 | 楽天ほか/2000〜20 | 1.35% |
19 | メッセンジャー | 阪神/2010〜19 | 1.33% |
20 | ファルケンボーグ | ソフトバンクほか/2009〜14 | 1.19% |
21 | 黒田 博樹 | 広島ほか/1997〜2016 | 1.13% |
22 | 五十嵐 亮太 | ヤクルトほか/1998〜2020 | 0.98% |
23 | マシソン | 巨人/2012〜19 | 0.83% |
24 | 星野 伸之 | オリックスほか/1984〜2002 | 0.78% |
25 | 越智 大祐 | 巨人/2006〜14 | 0.68% |
25 | 三浦 大輔 | 横浜/1992〜2016 | 0.57% |
27 | 槙原 寛己 | 巨人/1982〜2001 | 0.56% |
28 | 森 慎二 | 西武ほか/1997〜2007 | 0.42% |
29 | 吉見 一起 | 中日/2006〜20 | 0.41% |
30 | 与田 剛 | 中日ほか/1990〜2000 | 0.34% |
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解説
ピッチャーの決め球、『伝家の宝刀』といえば、真っ先に浮かぶのがフォークボール。球の軌道がスローモーション映像や科学で解明されていなかった時代は、まさに“消える魔球”だったのだろう。数多ある野球漫画でも、フォークボールはカーブのような放物線でなく、速球が打者の手前で直線のまま、急にストーンッと落ちる軌道で描かれてきた。
そのフォークボールを日本で初めて投げたといわれるのが、6位の杉下茂(元中日ほか)。1950年代を中心に活躍し、監督、コーチを歴任後、93歳だった一昨年の中日キャンプまで臨時投手コーチを務めていた“球界の至宝”である。「元祖」「(フォークの)神様は外せない」(※以下、「カギカッコ」内はユーザーコメント)と、おそらく9割9分杉下の現役時代を見ていないユーザーからも票を得た。揺れながら落ちる杉下のフォークを苦手とした『打撃の神様』川上哲治(巨人)は、“キャッチャーが捕れない球をどうやって打てというんだ”とこぼしたとか。ただし杉下自身は、この“魔球”は中日が優勝するため、目の上の敵・川上を打ち取るためのものであり、ストレートで勝負するのが“本道”であると語っている。
2000年代、セパ両リーグを代表するエースにも、“フォーク使い”がいた。4位の上原浩治(元巨人ほか)は日米通算100勝100セーブ100ホールドの記録を達成した大投手。制球力と奪三振率がピカイチで、ユーザーからも「上原ほど繊細にフォークを操った投手はいない」とのコメントが。7位の斉藤和巳(元福岡ソフトバンク)は活躍の期間こそ4、5年と短かったが、平成唯一の投手五冠(06年)、沢村賞を2回獲得するなど、『負けないエース』の異名をとった。「2種類のフォークが凄かった」「斉藤和巳はえぐい。もっと見たかった」と、ファンの記憶に大きな足跡を残している。
次に、ユーザーたちの目にもいまだ焼き付いているであろう、2010年代のリリーフ陣から2人を紹介しよう。5位・永川勝浩(元広島)は本人も“制球より落差を求めていた”という、“赤いお化けフォーク使い”。「落差が気持ち悪いレベル!」「粗削りだが、落ちる角度がすごかった」とユーザーが語る通り、あれで投球の半分以上がフォークとは、キャッチャーもフォーク酔いしそう!? 8位・浅尾拓也(元中日)は細身の体から放たれる渾身の速球に目が行きがちだが、実は高速フォークも大きな武器。10年に挙げた47ホールドは、いまだNPBのシーズン最多記録である。永川、浅尾とも、それぞれのチームで投手コーチに就任。後進に“魔球”の秘術を伝える。
10位・遠藤一彦(元大洋)には、「ホエールズのファンではないのに、遠藤さんが出るとときめいていた!」とちょっと違った意味でアツいユーザーコメントが届いた。時代をさかのぼり80年代、横浜の前身・大洋のエースとして、またあるときはリリーフとして弱小チームを支えた遠藤。「当時、あんなフォークを投げる人はいなかった」「芸術の域」とユーザーが評する遠藤のフォークはその超自然的落差から、『稲妻フォーク』と呼ばれた。
さて、ここでいったん、『フォークの神様』の話に戻ろう。杉下のもとには、臨時コーチを務めた中日の投手陣以外にも、多くの投手がフォークの教えを請いにやってきた。9位の藤川球児(元阪神ほか)もその一人。“ストレートが満足に放れるようになってから来い”と杉下に言われた藤川は3年後、“放れるようになりましたので、教えてください”と再度頭を下げてきたという。その“神様直伝”フォークは、『火の玉ストレート』との合わせ技で、最強の武器となった。「あのストレートの後に落とされたら、バッターは可哀想」とユーザー。
ところで『神様』は、誰のフォークを「一級品」と認めていたか。さすがスポナビユーザー、お目が高い。実は杉下が認めた3人がそのままズバリ、今回の上位3人なのである。1位が『大魔神』佐々木主浩(元横浜ほか)、2位『トルネード投法』野茂英雄(元近鉄ほか)、3位『マサカリ投法』村田兆治(元ロッテ)。ただし、杉下の表現によれば“(一級品は)佐々木と野茂。それに次ぐのが村田”という。
村田には、現地観戦組からの貴重なコメントが届いた。「川崎球場で実際に見て、驚愕の落ち方をしていた。高めに近いところから、ショートバウンドになりそうなくらいに落ちていた」。ちなみに筆者も西武・大田卓司が村田のフォークに空振り三振したのをベンチ脇から見て、その落ちっぷりに感動した一人である。
2位の野茂はトルネードとフォークで、日本球界だけでなくメジャー・リーグをも席捲した先駆者として、多くのユーザーから賞賛を浴びた。現役当時、対戦したバッターたちも“(フォークが来ると)分かっていても打てない” “ボールが消えた” “一瞬止まってガクンと落ちた”と驚きの表現で語り継ぐ。90年代から00年代、野球ファンに加わった世代と思われるユーザーからは「個人的には、野茂はフォークを広めた人だと思う」と評された。
1位の佐々木は98年、横浜を38年ぶりの日本一に導いた絶対的守護神だ。当時、巨人監督だった長嶋茂雄が“横浜戦は(9回に佐々木が出てくるから)8回で終わり”と、思わず漏らした。今回の投票でも、横浜以外のファンから「出てきたときの絶望感。打てる気がしない」と悲鳴にも似た、苦い思い出の声があふれた。
それにしても、上位3人のフォークボーラーたち、揃ってオンリーワンの代名詞があるとはさすが球界のレジェンド、というべきか。最近は、これほど個性際立ったニックネームがないのが、少し残念……。
(文:前田恵、企画構成:スリーライト)