球界を代表するエースに成長したオリックス・山本由伸。今季はここまで4勝2敗、防御率1.97をマーク(5月16日現在)【写真は共同】
MVP、沢村賞など先発投手の主要タイトルを総なめにした昨季から今季にかけ、球団新記録の18連勝を達成。いまや日本球界を代表するエースとなったオリックスの右腕・山本由伸が、31.2%の得票率を獲得して1位に。ファンが選出する「カーブNo.1現役投手」に輝いた。
「全てのボールが一級品ですが、テークバックの小さいフォームから鋭く落ちるカーブは狙っても打てないと思います」
「(カーブで)カウントも取れるし、その球で勝負もできる」
MAX157キロの速球に、カーブをはじめとする6種の変化球を投げる。しかも、まだ24歳の若さ。今、最も「当たりたくない投手No.1」と言っても過言ではないだろう。
調整中の森唯斗に代わってクローザーを務める、ソフトバンクのモイネロ【写真は共同】
2位(29.3%)は球界屈指の奪三振能力を誇るソフトバンクのセットアッパー・モイネロ。今季は不振で無期限調整中の森唯斗に代わってクローザーを務める。モイネロが投じるカーブは曲がりが大きすぎることから、ファンの間では「暴力カーブ」とも呼ばれている。
「間近で見た時、めちゃくちゃ曲がっていたから」
「モイネロ投手のカーブを初見で捉えている選手を見た記憶がありません」
今春のオープン戦でも、モイネロと当たり慣れていないセ・リーグの打者が、内角に入ってくる球に対して腰を引くように避けた瞬間、カーブが大きく曲がってストライクになった動画が50万回以上再生されるなど、話題になった。
37歳と大ベテランの域に達しつつある、楽天の岸孝之。今季は3勝1敗、防御率3.29と好調をキープ(5月16日現在)【写真は共同】
楽天の岸孝之が29.2%の得票率を獲得して、3位にランクイン。西武時代から「カーブといえば岸」と評価されてきた。岸のカーブはストレートと同じ腕の振りからボールが浮き上がり、大きく落ちる軌道を描く。
「岸投手のカーブで飯3杯はいける」
「岸さんのカーブが一番好きです。芸術的すぎるので」
しなやかなフォームから放たれるカーブは、芸術的にもファンから評価されているようだ。
広島の森下暢仁。150キロ台のストレートと球速差40キロのカーブで、打者を翻弄する【写真は共同】
4位(25.1%)は広島の森下暢仁。森下のカーブは明治大学時代、3学年上の柳裕也(中日)に教わった握りをアレンジしたという。
「カウントを取ることも決め球にすることも出来る、変化量とブレーキを兼ね備えた美しいカーブ」
「森下は至高のカーブ。調子がいい時はどんな打者も手をつけられない」
ストレートと約40キロの球速差のある“至高のカーブ”で、打者を手玉に取る。
16年以降、二桁勝利から遠ざかるソフトバンクの武田翔太。完全復活なるか【写真は共同】
5位(15.1%)はソフトバンクの武田翔太。利き手・右人差し指の腱鞘炎などの影響で、昨季は4勝に終わった。完全復活が待ち望まれるが、今季は右肩の痛みでキャンプを離脱するなど、逆風が続く
「カーブというカテゴリーの中では速く鋭く曲がる球種で、武田翔太という投手を代表するもの」
「ソフトバンクが連覇を続けていた時は、打てなさそうなカーブをポンポン投げていたイメージ」
昨秋から、カーブの改良を課題にしているという武田。輝きを取り戻すことができるか。
6位(11.2%)はソフトバンクの石川柊太。今季の初勝利は4月19日の対オリックス戦、エース・山本の連勝を18で止めた試合だった。スリークォーターから放つカーブは、120キロ台のスピードで力強く曲がる。
「石川投手のパワーカーブは縦にも横にも大きく変化し、スピードも普通のカーブより速いのでさまざまな使い方ができる球種だと思います」
場面や相手、カウント球か決め球かで投げ分ける“魔球”が、石川のカーブだ。
7位(11.1%)はパドレスのダルビッシュ有。同じ球種の投げ分けを含め、10種以上の変化球を投げる、言わずと知れた変化球マスターだ。
「(ダルビッシュのカーブは)変化の大きいスローカーブ。ストレートとの球速差も大きく、他を生かすための変化球だが、それ(カーブ)単体でも打者には邪魔な球種」
なかには「メジャーでスローカーブを投げることに驚いた」というファンのコメントも見られた。
8位(11.1%)は中日の柳裕也。最優秀防御率、最多奪三振の二冠を獲得した昨季から、さらにカーブを進化させた。昨季は110キロ前後だったが、今季はより遅く、100キロ前後を計時している。
「柳投手のカーブでカウントを取る投球は、見ていて凄いと思う」
「全ての球種を同じフォームで投げているので、打ちづらいと感じました」
右のエースとして、今季もチームを引っ張る。
9位(9.7%)はツインズの前田健太(ツインズ)。昨秋トミー・ジョン手術を受け、今は復帰に向けてリハビリを続けている。
「(PL学園)高校時代からメジャーまで通用する一級品」
「普段から握力トレーニングなどを徹底的にやっているらしいし、前田選手のカーブは球速、キレ、変化量の観点から見て、欠点がほとんどないから」
日本時代と比べるとカーブをあまり投げなくなったが、「マエケンカーブ」の異名を持つ大きく縦に落ちるカーブは、いつもファンをワクワクさせる。
10位(5.8%)のオリックス・山岡泰輔はカーブの他にもスライダー、チェンジアップ、カットボール、シュートなど、多彩な変化球を操る。
「ストレートで追い込んでから、カーブで奪う三振が凄く気持ちいいから」
スライダーに近い「スラーブ」に加え、2年ほど前にはナックルカーブも習得。打者はますます的が絞りにくくなった。
トップ10圏外で注目したいのは、11位の石川雅規(ヤクルト)と、18位の内海哲也(西武)の両ベテラン左腕。石川は「カープファンですが、打てそうで打てない、あの遅い“カツオカーブ”は一番すごいと思います」と、敵ファンをも脱帽させた。今季、21年連続先発勝利を達成。200勝まであと21勝としている(5月16日現在)。
一方の内海は、このアンケート投票期間中の5月7日、日本ハム戦に今季初登板。5回を投げ3安打1失点で勝ち星こそ付かなかったが、史上92人目となる2000投球回を達成した。このときの様子を、「カーブがテンポよく決まっていた」と報告してくれたファンもいた。
(文:前田恵、企画構成:スリーライト)