スポーツ教室に通っていない子のほうが、運動神経がいい?

MELOS -メロス-
「スポーツが得意な子どもに育てたい」と、お子さんをスポーツ教室へ通わせている保護者は多いはずです。

しかし皆さんは、「幼児体育指導を受けている子よりも、それを受けずに運動遊びを行っている子の方が運動能力が高い」ということをご存知でしょうか。

これは、実際に大学の教授が調査を行った結果です。しかし、本当にスポーツ教室へ通わせない方がいいのか、実際の研究報告を見ながら考えていきましょう。

【MELOS】

研究報告1:スポーツ教室だけでは限界がある可能性

2012年、東京学芸大学の杉原隆名誉教授が「幼児体育指導を受けている子よりも、それを受けずに運動遊びを行っている子の方が、運動能力が高い」という衝撃的な研究結果を発表しました。

これには、とても驚きました。9000人の幼稚園児を対象に行っており、信憑性はかなり高いようです。

内容としては、マットや体操などの体育指導を受けている子と受けていない子を比較したところ、前者が30点満点中18点台だったのに対し、後者は19点台だったとのこと。

その理由については、以下が原因として挙げられています。

1)体育指導だと同じ動きの繰り返しとなってしまい、さまざまな動きを経験せずに限定された動きのみとなってしまう
2)説明や順番待ちなどで、体を動かす時間そのものも減ってしまう
3)できることを前提として求めると、できない子のやる気衰退へとつながってしまう


この研究結果にともない、スポーツおよび体育指導の現場では幼児体育の指導法を見直しました。

科学的視点から、遊びを用いてさまざまな動作を取り入れて行うようになってきており、指導法は大幅に改善されてきているようです。

研究報告2:子ども社会に変化が起きている

もう一方で、子ども社会に「サンマ(三間)の間抜け現象(減少)」という変化が起きていることが報告されています。

これは、子ども社会で三間(仲間・時間・空間)が減少していることを意味します。

三間(仲間・時間・空間)の減少

少子化や合計特殊出生率(1人の女性が子どもを産む人数)が減少しているため、遊び相手が減っています。さらに習い事が増え、ただでさえ子どもの人数が減っているのに、子ども同士の時間も合わせづらくなっています。

また、土地開発が進んで子どもの遊び場だった空き地が減少。公園はボールの使用禁止や木登り禁止など、さまざまな制限がかかって遊び場所が減っているのです。

これらの3つの“間”が減少することにより、昔は自然と行っていた「運動技能の伝達」が行われなくなる現象に陥っています。

「近所のお兄ちゃん」もいなくなってきた

昔は近所のお兄ちゃんが格好よく見え、憧れて真似をしているうちにいろいろな運動を覚えたものでした。

やがて、今度はその子が憧れの対象となり、真似をされ……という連鎖があったのです。しかし、現在はそのような子ども社会が崩壊しています。

【MELOS】

そのため、スポーツ教室や体操教室で運動技能を伝達することは必要であるといえるでしょう。

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筆者プロフィール

赤堀達也(あかほり・たつや)

1975年生まれ。静岡県出身。小・中・大学のバスケ部を指導し、小・大学で全国出場、公立中学でも強化私立を倒し県ベスト4に入るなど、年代を超えて指導実績を残す。最高戦績は全国準優勝。また新体力テストが最低水準の学校で県大会優勝、高校時代に日の目を見ない選手達の大学で東海1部昇格するなど、独創的な理論・論理的な指導で選手育成に成功している。加えて幼児・高校の体育指導も行い、全年代の指導経験がある。現在は、2018年度より群馬医療福祉大学にて、新教育要領の「資質・能力の育成」に向け、主に幼児体育の研究・指導者アドバイス等を行う。また学校における働き方改革の部活動問題の解決に向け、部活動の外部コーチの傍ら、クラブを立ち上げ活動している。
[HP] https://mt-a.jimdo.com

<Text:赤堀達也>
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著者プロフィール

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