【柏レイソル】カップ戦快勝の裏にあった選手たちの”微調整"「2024Reysol Report Vol.5」

柏レイソル
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「誰が出てもチームとしてやろうとしているものが出せるようにすること。それを意識してトレーニングを全員でやってきました」
 4月24日に行われたYBCルヴァンカップのザスパ群馬戦で勝利した後、井原正巳監督は試合をそう振り返った。
 ザスパ戦は決して良い入りをしたわけではなかった。相手のシステムが想定とは異なり、そこで立ち上がりは狙いどおりに守備がハマらず、ロングスローやCKなど、ザスパに攻め込まれる時間帯が続いた。

出場機会が少なかった選手たちが、この試合に懸ける強い思いを見せた 【©️J.LEAGUE】

 話をザスパ戦に戻す。
 相手が想定外のシステムで出てきたことで、試合の入りこそ虚を突かれた形になったものの、ザスパの出方を確認したピッチ上の選手たちは、即座にコミュニケーションを取って微調整を図る。
 前半10分あたりだっただろうか、センターバックの立田悠悟と野田裕喜が会話を交わすと、彼らはそれぞれ三丸拡、土屋巧を呼んで指示を与えていた。そこで加えた変化について、立田が以下のように説明する。

「3バックで来ることを予想していたんですけど、相手が2トップでハメにきたので、こっちもシステムを変えながら対応しました。僕と川口(尚紀)選手で意図的に運び出して、そこはチームの意図したことができたのでよかったと思います。相手が来ていないならボランチの選手を下げる必要もないので、自分たちが運んだり、いろいろな形がうまくいきました」

センターバックを組んだDF野田裕喜とDF立田悠悟。的確な判断と指示で勝利に導いた 【©️KASHIWA REYSOL】

 今シーズン、井原監督及び、選手たちの口からは「柔軟性」や「微調整」という言葉が頻繁に出てくる。例えば第3節のジュビロ磐田戦。強風の影響で想定外の事故が起こり得たあの試合でも、井原監督は「そこの微調整は選手たちも意識してやってくれた」とピッチ上の選手たちの変化を勝因の一つに述べていた。また、今回のサガン鳥栖戦に向けた取材においても、松本健太が「相手が何をしてきても自分たちが崩れないことが大事なので、自分たちのやり方を貫きながら、細かいところで柔軟に修正して対応することが重要になる」と試合のポイントを挙げている。

DF野田裕喜は山形から今季新加入。巡ってきた出番でしっかり力を示した 【©️KASHIWA REYSOL】

 ザスパの2トップのプレッシャーに対し、川口、立田、野田が3バック気味にポジションを取ってビルドアップを行う。それによって三丸と島村拓弥をウイングバックの形にしてサイドを押し上げる。幅を使った攻撃で、20分過ぎから徐々にリズムを掴み始めたレイソルは、狙いどおりサイドを起点に得点を重ねた。

 ここで誤解していけないのは、あくまでチームの根本的な戦い方は変わらないということ。自分たちが日々トレーニングでやり続けている戦い方や、監督・コーチから大枠の提示が前提にあり、それを相手の出方に応じていかに選手たちが応用させて、より自分たちが有利な状況へ持っていくか。それが“微調整”の真意である。
 もちろんベンチからの指示で変化を加えるケースもあるが、古賀太陽は「相手の変化をいち早く感じるのは、実際にピッチにいる選手」とも言う。相手の出方に対して明らかにハマっていないと選手が気づいていながら、ベンチからの指示を待っている間に失点しては非常にもったいない。

 今季は高みをめざすために、そうした戦い方の幅や柔軟性をチームとして大切にしていると感じる。ザスパ戦では、勝って次のラウンドへ進み、今まで出場機会の限られていた選手が結果を残すという収穫があった。加えて、メンバーが入れ替わった中でも微調整の部分を表現できた。これもまた、チームの継続的な取り組みの成果だろう。

【文】柏レイソルオフィシャルライター:鈴木潤

立田が決めたゴールを自分のことのように喜ぶ選手たち 【©️KASHIWA REYSOL】

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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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