ボクササイズの次はボクシング! 「松原渓のスポーツ百景」

松原渓

現役ボクサーのマンツーマン指導を受ける

シャドウボクシングでイメージトレーニング 【松原渓】

 限られた時間のトレーニングで、そういうボクシングの魅力に少しでも迫りたいと、都内の女性用フィットネスクラブのボクシングのクラスに申し込んでみた。最近はキックボクシングやボクササイズの人気も高く、都内のボクシングジムで検索しただけでもかなりの数がヒットした。仕事が不規則な人のために、平日の昼間や夜など、時間帯を選んで通えるのも嬉しい。

 マンツーマンで指導してもらうことになったのは、なんと現役ボクサーの男性トレーナー! 授業は約60分。まずランニングマシンで10分ほど走って身体を温め、軽く汗ばんできたらストレッチ。その後、シャドウボクシングで型を覚え、グローブをつけてミット打ちトレーニングに挑戦することに。

■ストレッチ
 首、肩、背中、股関節、腰周りは特に負担がかかるのでゆっくりストレッチ。また、特に使う手首は集中的にほぐす。グローブをつける前に、手首にバンテージを巻いてもらう。手首と拳を守るために少しきつめに巻くそうで、試合前のボクサー気分を味わえた。ただ、慣れていないとうっ血してしまうため、最初は練習用の簡易バンテージを装着。

■シャドウボクシング
 鏡を見ながら基本のパンチのフォームをシャドウボクシング(仮想の敵を想定したイメージトレーニング)で確認する。パンチの種類は「ジャブ(相手との距離を測る)」「ストレート(利き手で真っすぐ打つ)」「フック(横から打つ)」がメイン。

 両足を肩幅に開き、利き足でない脚を一歩前に。利き足は少し外に向けて開き、両足に体重が均等に乗る姿勢をとる。パンチの時に意識するポイントとしては、主に2つのことを教わった。パンチの際に「身体をしっかり回す」ことと、「腕ではなく、背中で打つ」ことだ。

サンドバッグで全身筋トレ 【松原渓】

 ボクササイズと異なるのは、この「パンチ」だと思う。ボクササイズでは大きく動くことを重視するため、特に威力のあるパンチを打つ必要はないが、相手のいるボクシングではパンチの威力やスピードも重要なポイント。無駄な動きを少なくするために、背中(回す)、腹筋(ひねる)、腰(ひねる)の3点を意識して打つことにより、パンチの威力が増すのだそう。狙うのは、鏡に映る自分のアゴあたり。

 また、打つ時には、鼻から吸った息を口から「シュッ」と吐きながら打つ。この呼吸法はスタミナを持たせる効果もあるのだそう。ボクシングの練習で「シュッ! シュッ!」という音をよく耳にするのは、このためだったのかと、納得!

■ミット打ち
 ミット打ちでは、動くミットを打つ正確さや集中力などが鍛えられる。フットワークを使いながら、実際のリングの上でトレーナーが両手につけたミットを狙ってパンチを繰り出す。トレーナーによる「ワン・ツー!(ジャブ→右ストレート)」とか、「ワン・ツー・スリー(ジャブ→右ストレート→左フック)」などという指示に合わせて、2分間打ち続ける。

 通常、ボクシングの練習は3分動いて1分休むのだけれど、女性の試合では2分間のインターバルが基本だそう。2分間も動くと肩で息をするぐらい疲れる。でも、うまく手の真ん中に命中すると「パーン!」と弾けるようないい音がするので、かなり気持ちがいい。実際に使用するリング上で行ったため、良いパンチを打てた瞬間は、自分が強いボクサーになったような錯覚に……♪

■サンドバッグ
 最後に、サンドバッグを打つトレーニングに挑戦した。重いサンドバッグにパンチを打ち込むと、ミット打ちのようなパーン!!という弾けるような音ではなく、ボフッという鈍い音がする。サンドバッグではパワーやスタミナ、狙ったところに決める正確さやポジション取りなど、さまざまな要素を鍛えることができるのだそう。

パンチングボールはリズム感やスピードを養うのに最適 【松原渓】

 ちなみに、どれだけ強いパンチでも、サンドバッグは揺れないほうがいいのだそう。なぜなら、実戦では押すパンチよりも、打った後にすぐ引くパンチの方が効果があるから。これはかなりパワーとスタミナが必要で、全身に負荷がかかるのを実感できる。まさに「全身筋トレ」だ。

 この他にも、パンチングボールという、ぶら下がった小さな球を打つ練習法もある。パンチングボールは、リズム感やスピード、精度を養うのに適している。また、フットワークのリズムやスタミナをつけるために、縄跳びも理想的なトレーニングだそう。縄跳びは回数を目標にするのではなく、3分間を◯セット、という感じで取り組むのが良いそうだ。今回は時間がなくてできなかったのだが、次回はぜひ挑戦してみたい。

全身運動でダイエットにも効果抜群!

 わずか1時間の授業だったが、ボクシングのハードさと、同時に面白さも実感できた。特に印象的だったのが、ミット打ちの「パーン!!」という音。しばらく耳に心地よく残っていた。ストレス発散にもなるので、クセになるかも? ちなみに、翌日は全身が筋肉痛……(悲)。特に背中の痛みはかなりのもので、普段使わない背筋や肩甲骨周りは確実に鍛えられたと思う。

 女性のボクシングは2012年のロンドン五輪から公式種目になり、日本では女子選手は出場しなかったが、南海キャンディーズのしずちゃんこと山崎静代さんの活動が注目を集めた。私は普段、女子サッカーを取材することが多いので、アマチュアからプロになる過程の苦労は理解できる。今後、機会があればぜひ国内の女性ボクサーの試合を見にいってみたいと思った。

 最後に、ボクシングの魅力を箇条書きにした。

・背中、腹筋、腰が鍛えられ、お腹まわりが締まる
・細く美しいしなやかな筋肉がつく
・集中力がつく
・スタミナがつく
・ミット打ちやサンドバッグは負荷の高い全身運動。ダイエットにも効果抜群!
・ストレス発散

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著者プロフィール

サッカー番組のアシスタントMCを経て、現在はBSフジにて『INAC TV』オフィシャルキャスターを務める。2008年より、スポーツライターとしての活動もスタート。日テレ・ベレーザの下部組織であるメニーナのセレクションを受けたことがある。『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生が監督を務める女子芸能人フットサルチーム「南葛シューターズ」にて現在もプレー。父親の影響で、幼少時から登山、クロスカントリー、サイクリングなど、アウトドア体験が豊富。「Yahoo!ニュース個人」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/)でも連載中

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