ジャッキー映画で体を鍛えよう 元キック世界王者・小林聡編

しべ超二

【t.SAKUMA】

“野良犬”の原点、憧れの存在

 なき全日本キックでエースとして活躍し、ムエタイ現役王者をノックアウトするなど多くの伝説を残したキックボクサー・小林聡。“野良犬”の愛称で親しまれた小林の原点は、幼少期に憧れたジャッキー・チェンにある。かつては強さに惹かれて格闘技を志したが、そのあくなき姿勢と精神で、ジャッキーは今も小林にとって憧れの存在であるという。

「ジャッキー作品でブルーレイを持っているのはヤング・マスターだけで、画は汚いけどジャッキーの歌が入ってる当時の日本公開版が収録されているから、そればっかり観ている」

実戦に近いカンフー『ヤング・マスター/師弟出馬』

元キック世界王者・小林聡が選んだジャッキー映画は『ヤング・マスター/師弟出馬』 【しべ超二】

 数あるジャッキー作品の中で、今回小林が選んだのは『ヤング・マスター/師弟出馬』。約20分におよぶラストバトルに代表される、ジャッキーの格闘シーンがこれでもかとばかり収められた作品だ。

「ヤング・マスターは酔拳とか笑拳とかがはやって、周りがみんなそういう風になっちゃったから、ジャッキーがより実戦に近いカンフー、新しいものを取り入れようとした作品」
 あるシーンでは120回以上の撮り直しを重ねたとも伝えられ、ジャッキーの妥協を許さぬ、徹底した映画作りの情熱と執念が込められている。

「中盤で、悪役が目覚めて暴れるシーンのやられる役の中にジャッキーも入っているんだよね。ボクシングのノックアウトシーンでも、やられた方を見るでしょ。だからやられ方でその場面が全然違ってくる。中にはやられ方のヘタなやつもいっぱいいるから、ジャッキーはやられ役も自分でやった。やられ方にもこだわったというか」

 思わず引き込まれる冒頭の獅子舞に始まり、長イスや扇子、スカートを使った格闘シーンと、『ヤング・マスター』には他では見られないジャッキー独自のアクションが詰まっている。

「人を驚かせようっていうか、人と違うことをしようとするから。そういうところも好きだね、ジャッキーは」

“人ができないことをやりたい”

常に人がやったことのないものに挑むジャッキーの姿勢は小林にとっての憧れ 【t.SAKUMA】

2012年にはキックボクサーを題材にした小説『名無しの十字架』の映画化を小林自ら企画し実現させた 【(C)2012映画「名無しの十字架」パートナーズ】

 わずか5週間のうちに3試合という過酷な連戦を「野良犬地獄変」と銘打って行い、ムエタイ王者サムゴーに敗れれば、すぐさまリベンジの機会を求めてタイへ飛び1日3試合のトーナメント「ムエマラソン」に参戦。常に人がやったことのないものに挑むジャッキーの姿勢は、“人ができないことをやりたい”を信条に現役を駆け抜けた小林の姿とも重なる。

「やっぱり俺は導かれてこの世界に来たわけじゃないから、そういう誰もやらないことをやらないと注目してもらえないし、誰もチャンスを与えてくれないと思っていたから」

 引退した今もその姿勢は変わらない。2012年にはキックボクサーを題材にした小説『名無しの十字架』の映画化を自ら企画し、奔走したのち実現。現在も新たな企画の映画化に動いている。
「弱さとか強さ、人間の悪いところに優しいところとか全部が詰め込まれた映画。ただのアクション映画じゃなくて、挫折があって家族愛、兄弟愛や師弟の愛がある。ジャッキーの映画はそういうところがあるのが好きです。それと常に新しいものを見せてくれる。こんな人は他にいないし、僕にとって永遠のスターです」

 常に挑み戦い続けるジャッキーは、小林にとって永遠の憧れであり、偉大なる先達であり続ける。
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著者プロフィール

映画ライター。ペンネームは『シベリア超特急2』に由来し、生前マイク水野監督に「どんどんやってください」と認可されたため一応公認。日本のキング・オブ・カルト、石井輝男監督にも少しだけ師事。プロフィール画は芸人ネゴシックスの手によるもの。

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