【秋華賞】リバティアイランドは競馬の神様がくれた最上のプレゼント「絶対的な自信」で制した秋華賞とその先に見えた最強の道

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リバティアイランドが秋華賞を制し、史上7頭目の牝馬三冠を達成した 【Photo by Shuhei Okada】

 3歳牝馬三冠レースの最終戦、第28回秋華賞が10月15日に京都競馬場2000m芝で行われ、単勝1.1倍の圧倒的1番人気に支持された川田将雅騎手騎乗の春の二冠馬リバティアイランド(牝3=栗東・中内田厩舎、父ドゥラメンテ)が優勝。好位5、6番手の外を追走から直線入り口で早くも先頭に立つと、あとは後続を突き放す堂々の横綱相撲で史上7頭目の牝馬三冠を達成した。稍重馬場の勝ちタイムは2分1秒1。

 リバティアイランドは今回の勝利でJRA通算6戦5勝。GIは2022年阪神ジュベナイルフィリーズ、23年桜花賞、オークスに続く4勝目。騎乗した川田騎手、同馬を管理する中内田充正調教師ともに秋華賞は初勝利となった。

「彼女らしく走ることを優先しよう」

口取り式では川田騎手が3本の指を掲げて“三冠”をアピール 【Photo by Shuhei Okada】

 まさに同世代に敵なし。この秋もまた圧倒的なパフォーマンスで三冠最後のタイトルを手にした。

「何よりも一番は感謝ですよね。これだけ頑張って三冠を勝ち切ってくれましたので、本当に素晴らしい仕事をしてくれました。それに対する感謝の思いです」

 ゴール後、川田騎手は最愛の相棒に対してまずは“感謝”の気持ちを馬上から伝えたという。「これまで自分が経験してきた全てをリバティアイランドに生かしたい」と臨んだ秋華賞。レースに関して中内田調教師からのオーダーはなく、ジョッキー自身も特にプランは立てていなかった。

「まずは競馬をどう作っていこうかということは意識せず、ゲートをしっかり出すこと。そして彼女らしく走ることを優先しようということで、ゲートもいつもより出てくれましたし、二の脚もつけながらポジションを取って、リズムの良い走りで1コーナーに入っていけたのではないかなと思います」

 桜花賞2着のコナコーストが積極的にハナを切る競馬ながら、ペース自体はそこまで上がらず前半1000mが61秒9。朝の雨の影響で稍重馬場だったとはいえ、GIとしては明らかなスロー。しかし、このペースの中である程度の位置を取りに行っても鞍上とリバティアイランドはバッチリと折り合い、3コーナー手前で外に出せるポジションを確保した時点でもはや勝負ありとも言えるような完ぺきな運びだった。

ファンもどよめく、直線入り口で早くも先頭に

直線入り口で早くも先頭、ゴールまでリバティアイランドの独り舞台となった 【Photo by Shuhei Okada】

 そして、ファンから大きなどよめきと歓声が起こったのはこの直後だ。誰にも邪魔されない“三冠ロード”を見つけるや、我慢させることなくすぐさま進出開始。4コーナーから直線入り口でもう先団を飲み込むという、これまでにない積極策で堂々の先頭に躍り出た。

「3コーナーから全体のペースが緩い中、とてもリズム良く走って来られましたので、彼女が気分良く走れるようにという思いで、4コーナーでは“もう行っていいよ”ということを伝えました」

 GOサインを受けたリバティアイランドが力強いステップを踏むと、アッという間に後続を置き去り。淀のターフを独り舞台にした若き女王の舞に、詰めかけた5万の観衆も最大級の賛辞を拍手と歓声に込めて送った。

「今日、僕は2レースから乗せていただいたのですが、その時点から競馬場の雰囲気がある意味、異様な空気感でしたし、秋華賞の時間を迎えるごとにお客さんのテンションもどんどん上がって、すばらしい空気感の中、彼女も素晴らしい走りをして、そしてお客さんに喜んでいただいたことをすごく感じることができました。こういうスターホースがいて、スターホースらしく走って、お客さんに喜んでいただくことが競馬の素晴らしさだと思いますので、その仕事をやり遂げてくれたリバティと、それを見守ってくれたファンの皆さんに感謝の思いです」

さらなる成長曲線「もっと良くなれる部分がある」

「もっと良くなれる部分がある」と川田騎手はリバティアイランドのさらなる成長の予感をつかみ取っている 【Photo by Shuhei Okada】

 これまで数々の名馬とともにビッグレースを制してきた川田騎手だが、「新馬の前から将来を想像するくらいの馬」と出会い、その通りの成績をデビューしてからも実際に挙げている――そんな経験はジョッキー生活20年で初めてのこと。「だからこそ、これだけの馬と歩んでいく時間の全てが大事」と、力を込めて語る。と言って、リバティアイランドと臨むレースをプレッシャーに感じることはない。それが川田騎手にとっても初体験となる三冠がかかるレースだとしても、だ。

「今回、いつも以上に重たい責任を感じながらではありましたが、絶対的な自信が彼女にはありますので、彼女らしく走れるようにという思いだけで自分が仕事をすれば問題ないと思っていました。なので……もうこれ以上は何も言葉が出てこないくらい(笑)、自分としてはいつも通りだったなと思います」

 今回の勝利とレース内容を経て、川田騎手のリバティアイランドに対する期待と想像はどこまで膨らむのだろうか。まだ3歳秋。成長のピークは今からであり、これから迎えるであろう最盛期の予感をジョッキー自身が確かな手応えとしてつかみ取っている。

「今回、馬体重がプラス10キロで、それほど大きくなったというわけではないですから、もっと良くなれる部分がある、もう一つ良くなるなという思いを今日の返し馬からも感じました。まだお嬢さんから“お姉さん”にはなれていないと思います(笑)」

次走は近日中に発表、ジャパンカップ参戦となるか

次走はどのレースになるのか、もしジャパンカップ参戦となれば空前の盛り上がりとなりそうだ 【Photo by Shuhei Okada】

 となると、気になるのは今後のプラン。イクイノックス、ドウデュースが出走を予定している11月26日のジャパンカップに駒を進めてほしい、というのは競馬ファンの皆さまの思いだろう。次走についてはジョッキー、調教師、オーナーサイドが協議した上で決め、近日中にも結論が出されるとのこと。その選択を今は心待ちにしたい。

 そして、自身38歳の誕生日でもあったこの日、川田騎手が「ジョッキー生活20年目に出会えたことは、本当に競馬の神様が与えてくれた最上のプレゼント」と、涙を浮かべてまで語ったリバティアイランドとこれから歩む道――

「彼女の進む道が決まった時に、また改めてしっかりと準備をして、皆さんに喜んでいただける競馬ができるように、そして彼女らしく走れるように、ともに頑張るのが僕の仕事。ファンの皆さんにはこれからもまた、彼女が次に向かう時に楽しんでいただければと思います」

 3歳ヒロインから競馬界最強・最上のヒロインへ、大きく広がったその道筋は川田騎手、そしてファンの目にも鮮明に見えたのではないか。(文、取材:森永淳洋)
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