【対談】学びと娯楽の融合。エディテインメントを活用したサッカーの普及と選手育成とは。

横浜F・マリノス
チーム・協会

【©F.M.S.C.】

今年1月に「サステナブル エデュテインメントパートナー」締結を発表した一般社団法人F・マリノススポーツクラブと株式会社小学館集英社プロダクション。お互いに持っているコンテンツを最大に活かしながらスポーツの普及活動に力をいれ、選手育成の場に新たな学びを導入していく。今回はF・マリノススポーツクラブの宮本功代表理事と小学館集英社プロダクションの江藤寛之リーダーに、その思いを聞いた。

お互いのコンテンツを活かしてサッカーやスポーツの普及活動につなげていく

―一般社団法人F・マリノススポーツクラブ(以下FMSC)と株式会社小学館集英社プロダクション(以下ShoPro)はエディテインメントにおけるパートナーシップを締結されました。発表に先駆けて、未就学児を対象にした運動プログラムを実施したそうですね。

江藤リーダー はい。弊社は総合保育事業として小学館アカデミー保育園を運営しています。横浜市内にも8園あって、そのうちの7園で実施しました。そこに通う子どもたち向けの運動プログラムで、1回30分くらい。FMSCのコーチに来ていただいたのですが、コロナ禍にあってなかなか対面でのプログラムができなかったので、子どもたちも、とても喜んでいました。私も実際に見に行かせてもらいましたが、コーチの皆さんは本当に教えるのが上手で、とても充実した時間になったと思います。

宮本代表理事 ありがとうございます。当日はコーンにボールを当てなどのボール遊びに近い内容でしたが、コーチたちからも「子どもたちと一緒に楽しんでできた」という声が多いですね。いきなり足でボールを蹴るのは難しいですが、未就学児の年代から身体を動かすことやボールを使って遊ぶことは大切で、それが将来的にスポーツや運動を楽しむことにつながります。我々からすると、その中でサッカーを選んでくれたらうれしいという気持ちですね。

江藤リーダー そうですね。子どもにとっても、いきなりサッカーやスポーツだとハードルが高い部分があるので、身体を動かすことの延長上にサッカーがあるという形でお願いしました。子どもたちも楽しそうでしたが、実は保護者の皆さんや先生たちからも大好評で「またやってほしい」というリクエストが多いですよ。

宮本代表理事 ぜひ今後も続けていきたい取り組みですよね。保育園などは、すでにいろいろな方々が入っていて、新規で何かを提案したり、実施したりするのが難しい側面があります。でも、「行きたい」という思いがずっとありました。ShoProとお話したときに保育園のことを聞いて、プログラム実施に至ったんですよ。

江藤リーダー コロナ禍で何度も延期になりましたが、子どもたちも喜んでいましたし、開催できて良かったなと思います。

―改めてパートナーシップを結ぶことになった経緯を教えてください。

江藤リーダー もともと私たちはラグビーなどでも普及活動に携わらせていただいたのですが、そうした事業展開の中で、宮本さんとお会いする機会がありました。2年半くらい前ですよね。

宮本代表理事 そうですね。FMSCの設立準備室時代からのお付き合いになります。当初から実際にどういうことができるのかを話しながら、施設を見ながら進めてきた形で、保育園の運営のほかにも生涯学習施設などの運営も行っているのも素晴らしいですよね。

江藤リーダー ありがとうございます。弊社は図書館や青少年交流施設など幅広い公共施設の運営をしていて、実は横浜F・マリノスのホームタウンである大和市内でも指定管理を行っている施設がいくつかあります。日本で最も人が集まると言われている大和市文化創造拠点シリウスも、その一つです。

宮本代表理事 そのシリウスでも先日、食育プログラムを実施しました。一見するとスポーツクラブとは接点がないように思うかもしれません。ですが、実際にはいろいろなことができるんですよね。

江藤リーダー 受講生の声を聞いても、やはり大変好評でした。

宮本代表理事 このようなシリウスの活用例をはじめ、お互いに事業内容や展開において、いろいろと似ている部分があります。例えば、ShoProは様々なキャラクターを活かしていろいろな事業を展開していますが、それは我々も同じ。そのコンテンツがサッカーでプロスポーツということなんです。考え方や業務的にもリンクするものが多いので、一緒にできることが多々あると感じました。

―視点を変えるとホームタウン活動のようですね。

宮本代表理事 そうですね。食育の活動をやらせてもらうときも質の高いものを提供して、参加した方が「良い講座だったよ。マリノスの人に教えてもらったんだ」となれば、クラブを知るきっかけになります。新たなファンになってくれるかもしれない。そういう場も提供してもらっているんですよね。

江藤リーダー 地域の特性にあわせたものや住民の方が望んでいるプログラムを今後も一緒に提供していきたいですね。

シリウスでおこなわれた「食育プログラム」の様子 【©F.M.S.C.】

世界に通じるサッカー選手を育てることも教育の一部

―具体的にはどのようなことをやりたいとお話されていたのですか?

宮本代表理事 いろいろありますが、今はオンライン学習。先日、コーチたちが受けたプログラムも、ものすごくインパクトがあったみたいで。

江藤リーダー コンプライアンス関連のものですか?

宮本代表理事 そうです。特に薬物関連のことでした。サッカー界としてはハラスメントなどのコンプライアンスは十分に気をつけているのですが、薬物系は触れる機会が少なかったんです。でもその教育プログラムもしっかりとお持ちだった。

江藤リーダー 我々の事業で受刑者向けの更生教育プログラムの運営事業を行っています。それを応用してスポーツ界に提供できるものがつくれないかと考えたのが、薬物乱用防止を含めたスポーツ指導者向けのコンプライアンス関連のプログラムだったんです。

宮本代表理事 最近でも薬物の悪いニュースはたくさん聞きますよね。子どものころは悪いことの分別がまだまだつけられない場合も多い。ですが、我々は世界で活躍するトップアスリートを輩出することや人材育成を目的にしています。だからこそ、子どものころからきちんと指導して10年後に薬物に手を出さない、悪いことが起きないように、今、教育をしていきたいと考えています。社会の流れをきちんと見て教育モデルの中に入れる。それを指導したり予防したりしていくというのは大事なこと。それを考えると、まずは教える指導者(大人)に対して学びの場を提供することが大事なだと気づきました。

江藤リーダー 子どもたちの教育の前に、まず指導者ですよね。

宮本代表理事 そうです。例えば薬物も何がダメなのか。ただ単に「ダメ」と言っても伝わりにくい。でも、今回の学びの中では指導者たちが初めて聞いた話も多かった。非常に記憶に残る内容でしたから、今後は、それを教えていけるようになりますよね。

江藤リーダー もともと子ども向けは考えていたのですが、子どもが学ぶ前にまずは大人に理解してもらわないと。その思いがあったので、まずは大人向けに制作させていただきました。実際にできたものをFMSCに使っていただいて、皆さんからご意見やアドバイスをもらってブラッシュアップする。それがサッカー界や他のスポーツなどにも活かせるのではないかなと感じています。お互いに高み合うという形で、様々なことにトライしている状況です。

宮本代表理事 独占で何かをするということよりも、ご一緒すること。そこからよりいいものになればという思いもあります。その意味でも、今回のプログラムはJリーグの新人研修に取り入れてほしいくらいですし、他の競技団体も学ぶべき価値あるものだと思います。

江藤リーダー 私たちはサッカーやスポーツを実際に教えることはできないのですが、その周りを埋めていくことはできます。サッカーを学ぶために通っているスクール生に、サッカーだけではなく他の学びも提供したい。そういうお話もしています。

宮本代表理事 保護者の方から見ても「これはいい」というシステムづくりを考えていて、実際にスクール生に対して算数の導入なども検討・相談しています。

江藤リーダー 弊社が小学生向けの通信教育教材としてつくっているものを活かせたりできればと考えております。

宮本代表理事 そうですね。学ぶためのシステムをちゃんとつくっていきたいという思いも強くあります。やはり、サッカーだけを教えていても、世界に通用する人材の輩出は難しい。算数に限らず思考力や判断力といった、非認知能力と言うのかな。最終的にそういうことを学んでいる選手はプレーに活かすことができますし、トップアスリートになるためにも様々な学びは絶対に必要です。

江藤リーダー 非認知能力という言葉は、教育界でも特に最近よく聞くようになりました。

宮本代表理事 そうですよね。認知能力に対して非認知能力と言われるもので、協調性や最後までやり抜く力。そうした力につながると思います。

江藤リーダー すごく大事なことですよね。

宮本代表理事 我々は「選手を育てる」と言っていますが、サッカー選手を育てることも、教育の一部分。教育することを全く勉強せずにマネジメントをしたとして、競技としてのフットボールそのものは極められるかもしれないけど、本当の意味でのトップアスリート輩出には足りません。だからこそ、その領域の指導ができないといけませんし、指導者に対してもアプローチがないと。指導者の能力が上がらなかったら、選手に渡せるものも限られてしまうので、指導者の学びも重要ですし、必要なことですよね。

小学館集英社プロダクション江藤寛之リーダー(左)と宮本功代表理事 【©F.M.S.C.】

子どもたちがスポーツに触れる機会を増やしたい

―小学館や集英社と聞くとコミックスなどの出版が思い浮かびますが、そうした面だけではなく学びにおけるさまざまな分野にも力をいれているのですね。

江藤リーダー 社名から出版をイメージされると思いますが、弊社では子どもの学びを考えた教育やメディア事業を多岐に渡り展開しています。教育と娯楽は弊社の事業の2本柱でもあり、それをつなぐのは、学びに楽しさをプラスする、また楽しさに学びをプラスする「エデュテインメント」。これが体現できるのが、スポーツプロジェクトでした。

宮本代表理事 エデュテインメントは、エデュケーションとエンターテイメントからくる造語ですが、スポーツも一緒ですよね。スポーツの中で選手を育てるというエデュケーションとプロスポーツクラブ=興行という意味でのエンターテイメント。構造としても、やっていることや理念はすごく近いですよね。

江藤リーダー そうですね。私たちはコンテンツを生み出し、守っていくのが仕事。そして育てていくことも仕事です。

宮本代表理事 それは本当に同じですよね。持っているコンテンツで何をするか。保育園での運動プログラムも、みんなが喜んでくれる中でお互いに新たな発見があります。その上で横浜FMに触れてもらうこと、知ってもらうことにもつながりますから。

―では、今後の展開や活動などについてはどのように考えていらっしゃいますか?

江藤リーダー 今の時代、子どもたちがスポーツに触れる機会が減っています。ボールを使って遊びたいけど校庭が使えなかったり、遊具が撤去されてしまったり……そういう子どもたちにこの活動を通してスポーツに触れる機会を増やしていきたいですね。

宮本代表理事 その中から世界につながる子どもたちが出てきます。これから10年後、トップチームの中にShoProでサッカーを始めたという選手も出てくるかもしれません。可能性も広がりますよね。

江藤リーダー おじいちゃんおばあちゃん含めた3世代や家族みんなが楽しめる企画をやりたいですね。いまFMSCさんにご紹介いただき、横浜F・マリノス公式チアリーディングチームであるトリコロールマーメイズさんともチアを通してそのような企画ができないか相談しております。

宮本代表理事 ホームタウンである大和市が目指す「健康都市」実現に向けた企画にもなりそうですね。

江藤リーダー そうですね。そうなるように具現化していきたいです。

宮本代表理事 スポーツを切り口にしていますけど、FMSCとしては文化的な活動もOKですし、それこそ将棋等も面白そう。いろいろな種目やジャンルもトライしたいですよね。多くの人たちにいいモノを提供して、“横浜F・マリノスのファン”をつくる。横浜FMを好きになってほしい、応援をしてほしいという根底の気持ちは、やっぱり大きい思いですから。

江藤リーダー 私たちも同じ気持ちです。会社としては価値を高めて継続していくことは大事なことだと考えていますが、その上でスポーツが好きな人を増やしたいという思いがあります。その意味でも、一緒にプログラムができることは大きいですし、これからも大きな可能性があると思います。新型コロナウイルスが落ち着いたら、ぜひまた保育園でのプログラムも実施拡大していきましょう。

宮本代表理事 そうですね。保育園での活動も今後、若手選手やアカデミー生の教育プログラムとして行えたら、いい経験になると思います。それから、セカンドキャリアの出発点としてもいいなと。昨シーズンで引退をした富澤清太郎がコーチとして活動を始めますが、ぜひ小学館アカデミー保育園でその第一歩を踏み出してもらおうかなと考えています。本人にとっても大きな学びがありますし、指導者を育てるという意味でもすごくいい経験になると思うんですよね。

江藤リーダー Jリーグで活躍していた選手がコーチとして来てくれる。選手たちのセカンドキャリアはきちんと考えないといけない重要な部分ですが、それを一緒に構築していけるのは大きな試みですし、アイコンのような存在になってくれたら、なおうれしいですね。

宮本代表理事 そうですね。富澤はまだまだ動けますし、いい運動プログラムになるのではないかなと思いますから、ぜひ実施しましょう!

保育園でおこなわれた未就学児向け運動プログラムの様子 【©F.M.S.C.】

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著者プロフィール

日産自動車サッカー部として1972年に創部。横浜マリノスに改称し、1993年にオリジナルメンバーとしてJリーグ開幕を迎えました。1999年には横浜フリューゲルスと合併し、現在の横浜F・マリノスの名称となりました。マリノスとは、スペイン語で「船乗り」を意味し、世界を目指す姿とホームタウンである国際的港町、横浜のイメージをオーバーラップさせています。勝者のシンボルである月桂樹に囲まれたエンブレムの盾には、錨とカモメが表現されています。こちらでは、チーム、試合やイベントなどさまざまなニュースをお届けします。

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