初日の出は愛車とともに 「松原渓のスポーツ百景」

松原渓

バイクに乗り始めたのはある出会いがきっかけ

【松原渓】

 とはいえ、実際に自分がやることを想像してみると……下手をすれば命を落としかねない危険を伴う競技ばかり。とあるロケで一緒になったプロのレーサーの方の提案で、2人乗りをさせてもらったことがあるのだけれど、そこそこのスピードで走りながらウイリー(前輪を浮かせて後輪のみで走るテクニック)をするなど、後ろに乗っている私からすると狂気の沙汰で、スリルを通り越して恐怖心しか残らなかった。ただ、その時に、レーサーのメンタリティを少しだけ垣間みた気がした。そもそも恐怖心なんかあったらレースはやっていられないのだろう。

 ただ、私のようにスピードに興味が持てなくても、バイクに乗ることの魅力ならいくつも挙げられる。私がバイクに乗り始めたのは、高校時代のある出会いがきっかけだった。街中で見知らぬ小柄な女性が自分の背よりも高いオフロードバイクに乗っているのを見て、衝撃を受けたのだ。「格好いい!?」と感じた次の瞬間には免許取得を決意し(早っ!)、その日からバイクを買うためにお金を貯め始めた。

「いつか自分の愛車で遠くに行きたい!」と目標を持って励んだ日々も楽しかったけれど、実際に自分の愛車を手に入れて乗り始めると、世界が一気に広がって行く感じがした。このバイクで北海道でも沖縄でも、どこまででも行けるのではないか、というめくるめく妄想……。忙しくて自分の時間が持てない中でも、バイクが連れていってくれる非日常を想像すると、心に余裕が生まれた。

バイクには身体感覚の奥深さも

夏の海沿いの道もお気に入り 【松原渓】

 バイクには、あらゆるスポーツに通じる身体感覚の奥深さもある。マラソンや自転車のように、ダイレクトに自分の意志を走りに反映させるためには、自分のバイクをよく知らなければならない。

 右手のアクセルと左手のクラッチでギアを変え、道路状況に応じて右足の後輪ブレーキ(ブレーキ強度が弱め)と右手の前輪ブレーキ(ブレーキ強度が強め)を使い分ける……教習所に通っていたころはよく頭がこんがらがって失敗した。ただ、操縦の基本を身体で覚えてしまえば、やがてバイクとの一体感を感じられるようになり、景色を楽しむ余裕が生まれてくる。

 四季折々を実感できる森林のワインディングロードや夏の海沿いの潮風など、何ものにも代え難い気持ち良さがある。また、バイクに乗っていると、意識しなくても太ももの内側や腹筋、背筋などは自然と鍛えられる。

森林の道を走るのも気持ちいい! 【松原渓】

 乗る目的によってさまざまなタイプのモデルがあり、趣味としての奥行きもある。サーキットや峠の走り(スピード)を楽しみたいならスポーツタイプ、長距離のツーリングを楽しみたいならアメリカンやネイキッド、街乗りならストリートタイプやビッグスクーター。ワイルドな山道も走れるオフロードバイクを街で乗りこなすのもかっこいい。

 最近はバイクも性能が上がっているので、原付や250ccのスクーターでもそれなりのパワーを備えているし、一昔前に比べると手頃な価格で買える大型バイクも増えているように感じる。バイクを手に入れたら、自分好みのカラーやデザインなど手を加え、こだわり抜いた自分だけの一台を作るのも楽しい。

現在乗っているのはハーレーダビッドソン

10年来の愛車です 【松原渓】

 私が現在乗っているのは、ハーレーダビッドソンのダイナ・ローライダーというバイク。クルーザー(アメリカン)で、排気量が1450ccと大きく、車体重量は300キロを超えるため、取り回しも楽ではない。そのため「ちょっとそこまで」という感覚では乗れないけれど、女子サッカーの取材や電車では行きづらい現場に行く際にのったり、気分転換に夜の高速道路でお台場や横浜に夜景を見に出かけたりと、さまざまな場面で活躍してくれている。

女性向けのアパレルも充実! 【松原渓】

 バイクを通じて、できた友人もいる。先日、お世話になっているディーラー(バイクのショップ)で開催されたクリスマスパーティに初めて参加してみたら、女性が多くてびっくりした。旦那さんの影響で乗り始めたという奥様ライダーもいれば、「1人でどこにでも行ってしまう」という若い女性もいて、話が盛り上がった。「どんなバイクに乗っているんですか?」という言葉をきっかけに、赤の他人がツーリング仲間になれる。それも、バイクの魅力かもしれない。
 いつか、米国横断に挑戦してみたいと思っている。体験した人に話を聞くと、1日300〜400kmを走って10日以上もかかるというから、米国の広さがうかがい知れる。真っすぐな道をどこまでも走るのは体力も集中力も必要だけれど、ゴールにたどり着いた時の悦びや達成感はきっと、すごいんだろうなぁ……。2015年、元旦の日の出はどこで見ようか? これから、愛車と相談して決めたいと思っている。

 2014年も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いします。みなさんも良いお年をお迎えください!

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著者プロフィール

サッカー番組のアシスタントMCを経て、現在はBSフジにて『INAC TV』オフィシャルキャスターを務める。2008年より、スポーツライターとしての活動もスタート。日テレ・ベレーザの下部組織であるメニーナのセレクションを受けたことがある。『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生が監督を務める女子芸能人フットサルチーム「南葛シューターズ」にて現在もプレー。父親の影響で、幼少時から登山、クロスカントリー、サイクリングなど、アウトドア体験が豊富。「Yahoo!ニュース個人」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/)でも連載中

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