それで本当に大丈夫? 季節や山のレベルで変える登山ウェアの選び方
(1)ベースレイヤー×アンダーウェアを組み合わせて
【写真提供:デサント】
「ベースレイヤーの前にアンダーウェアを着ましょう。登山で何よりも気をつけなくてはならないのは、汗冷えの防止です。とくに一番汗をかきやすい背中、上半身は汗冷えから守らなくてはいけません。そのため肌にふれるアンダーウェアの肌面は、常にドライな状態にしておきたいところ。肌着としてはっ水性(編集注:水切れがよく乾きやすい性質のこと)や速乾性のあるアンダーウェアを身につけるとよいでしょう」
吉田さんは肌の上にすぐベースレイヤーを着るよりも、アンダーウェア→ベースレイヤーの順に重ねることを勧めています。はっ水性・速乾性のあるアンダーウェアは、メッシュ素材でできたものが多く、メッシュの穴から汗が外側に抜けていき、常に肌は乾いたままの状態をキープできる仕組みに。汗冷えによる風邪を予防できます。
「ベースレイヤーには、乾きが早く保温性の高い素材を選ぶとよいでしょう。最近ではメリノウール素材のものが人気です。メリノウールは濡れによる冷えを防ぐ性質を持っているので、アンダーウェアから抜けた汗で、背中がひんやりすることもありません」
メリノウールは温度調節機能にも優れ、ウールとはいっても夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことが可能。年間を通じて着られる優秀な素材です。
(2)ミドルレイヤーは休憩中に着て体温維持を
【写真提供:デサント】
ミドルレイヤーとして着るフリースやダウンは、動いている最中は暑くなり過ぎて、大汗をかいてウェアが濡れる原因になります。ウェアが汗に濡れたままになると、接する肌から体温が奪われ、低体温症になる危険性もあります。レイヤリング(重ねて着る)をして、その都度状況に応じて脱ぎ着して、調整できるようにすることがポイントです。
冬と春〜秋で着こなし方は変わりませんが、ウェアの厚さや素材を変えることが大事なよう。冬はやや厚めの生地で保温性を重視した素材を、春〜秋はやや薄めの生地ではっ水性・速乾性を重視した素材を用いるのがコツだとか。
(3)初級から上級者まで それぞれの山でのウェア選びポイント
・初級者向けの山
高尾山や御岳山など標高1000m以下の山。
「基準は低山で岩場や鎖場(編集注:登山者がつかまって登れるよう、鎖を張ったり垂らしたりしている登山路や岩場などのこと)などがなく、登り〜下山までの行動時間が3〜4時間程度の山であることです。低山でもアウターレイヤーは必ず持参しましょう。急な雨に備えられるのはもちろん、風を防ぐので防寒にも役立ちます」
万一、自力では歩けなくなった場合でも下山できるよう、ケーブルカーなどの交通機関を利用できることも重要だそう。
・中級者向けの山
雲取山や丹沢など標高1500〜2000m程度の山。
「基準は行動時間が6時間程度の山であることです。標高2000mにもなると、平地との気温差は10度以上になります。たとえ夏であっても汗冷えを防ぐために、ミドルレイヤーを持参しましょう」
・上級者向けの山
穂高連峰や南アルプスなど標高3000m程度の山。
「基準は行動時間が2〜3日と長時間に及ぶ山であることです。標高2000m程度までの山だと土の道が多いですが、3000m程度になると岩場の道が多くなります。登山靴選びも大きく変わってくるほか、長く歩いて生活するぶん、あらゆる装備を用意して行くことが必要になります。山小屋やテントでの宿泊を伴うため、朝晩の冷えはもちろん外で食事をしたり星を観たりするなど、じっとしている時間が長いことにも注意が必要です。防寒のためのミドルレイヤーやアウターレイヤー、末端の冷えを防ぐための帽子や手袋なども忘れないようにしてください」
自分がどれくらいのペースで歩けるかわからず、行動時間が予想できない場合は、コース地図を見ながら短い時間で歩けるルートを選んで検討するとよいと吉田さん。また、初めて登山を行う際には、登山慣れした人と行動をともにすることも大事だそうです。
識者紹介/吉田光成
好日山荘 銀座店ストアマネージャー。入社20年目。登山歴は15年。