もう「隙あらば」と言わせない! 広島4年目・野間、打撃覚醒の秘密
丸の故障によりチャンスつかむ
マツダスタジアムに、O−Zoneの『Dragostea Din Tei』(邦題『恋のマイアヒ』)が鳴り響く。今季、ブレークの兆しを見せている広島のプロ4年目、野間峻祥が打席に入る際の登場曲だ。ルーキーイヤーに菊池涼介に決められたというダンスナンバー。昨年までは失笑混じりだったスタンドの反応が、現在では期待を込めての手拍子に変わっている。
今季の野間は、ここまで51試合に出場して打率3割5分9厘、3本塁打、19打点、7盗塁(6月10日現在)。開幕当初は代走、守備要員の位置付けだったが、丸佳浩が故障離脱後、5月中旬からセンターのポジションに入り、丸の復帰後もレフトでレギュラーの座をつかみつつある。
スタメン起用が増えた要因は、打撃力の向上に尽きる。もともと俊足を生かした走塁と守備には定評があった。特にベースランニングでのトップスピードに入る加速力は球界屈指で、昨季は代走の切り札として不可欠な存在となっていた。そんな野間の定位置確保を阻んでいたのが、非力さが見える打撃。昨季までは安定感を欠き、速球に差し込まれてしまう場面が目立っていた。
しかし、今季は5月19日の東京ヤクルト戦で満塁弾を含む2本の長打を放つと、その後の10試合中7試合で複数安打を記録するなど、高打率をキープ。チームの“隠れ首位打者”となっている。
緒方監督の一目惚れでドラ1入団も…
「映像をひと目見て感じるものがあった。一目惚れです。絶対に、野間峻祥を欲しいという思いが強かった」
当時のドラフト後、緒方監督はこう熱弁していた。そして、緒方監督が新人時代につけていた背番号「37」を継承した野間は、ルーキーイヤーから積極起用された。開幕カードの3戦目にはいきなり「1番・ライト」でスタメン起用され、第1打席でプロ初安打も記録した。
だが、この年は3年目の鈴木誠也が台頭し、右投手相手には松山竜平が起用されるケースが増え、野間のスタメン起用は次第に減っていった。1年目の成績は、打率2割4分1厘、1本塁打、10打点。リーグ2位の6三塁打と俊足の片りんは見せたが、打力面での弱みが見え、レギュラーというには物足りない成績と言わざるを得ない。それでも127試合出場と、外野手では丸に次いでチーム2位の出場数を記録した。
この年、チームは優勝を期待されながら4位に終わり、緒方監督の采配を疑問視する声も出ていた。さらに入団時の経緯なども重なり、代打や代走、終盤の守備固めなど、あらゆる場面で野間を起用する緒方監督に対して、ネット上の心ないファンからは「隙あらば野間」という造語も作られた。
2年目は開幕1軍にこそ入ったが、プレーに精彩を欠き、出場数がわずか21試合と激減。試練のときを過ごすことになった。