今日の推しメン#011「ラグビーの道に進むか、一般企業へ就職するか。気持ちは半々だった」 山田響

チーム・協会

写真:せきねみき 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの選手やスタッフを“思わず推したくなるエピソード”について紹介する連載インタビュー「今日の推しメン」。第11回は、快足を活かしたプレーでスタジアムを沸かせているウイングの山田響(やまだ・ひびき)選手が登場。その飄々(ひょうひょう)とした姿からは想像できない、意外な一面についても話してくれました。

高校の時点で、ラグビーに一区切りつけてもいいかもと思っていた

兵庫県の明石ジュニアラグビークラブで4歳からラグビーを始めた山田選手。元ラグビー選手の父・賢さんがコーチを務めていたクラブチームで、中学卒業までプレーしました。「小さい頃は結構やんちゃだったので、タックルが好きでした。小学校の高学年以降はアタックに魅力を感じて、そこからはずっとアタック中心のポジションです」。

明石ジュニアラグビークラブ時代の山田選手(写真提供:山田響選手) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

三兄弟の次男である山田選手はその後、3つ上のお兄さんの背中を追いかけ、県内のラグビー強豪校・報徳学園高等学校へ進学。高校2年生でブエノスアイレスユースオリンピックの男子7人制日本代表や高校日本代表に選ばれるという輝かしい実績を残し、3年生では主将を務めました。しかし、意外にも「実は高校の時点で、ここでラグビーに一区切りつけてもいいのかなという思いがありました」と告白します。

「大学を選ぶときも、その後の進路でラグビー選手、就職両方の選択肢を残せるところに行きたいと考えて、慶應(義塾大学)に決めたんです」

山田選手(写真右から2番目)の左にいるのは、スピアーズで一緒の二村莞司選手。なお、一番左は小西泰聖選手(浦安D-Rocks所属)、左から2番目はメイン平選手(リコーブラックラムズ東京所属)、一番右は石田吉平選手(横浜キヤノンイーグルス所属) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

大学1年生までは主にフルバックでプレーしていた山田選手ですが、2年生以降スクラムハーフ、スタンドオフ、ウイングなどさまざまなポジションを経験。4年生では副主将としてチームを引っ張りました。そして卒業を前に、再びラグビーを続けるか一般企業へ就職するかの分かれ道に差し掛かります。

「今までラグビーをやってきて、“終わりがある”というのがいいなと思っていて。例えば高校は3年間、大学は4年間でチームでの活動は終わります。一方、リーグワンというプロの世界には、明確な区切りが存在しません。自分の中でラグビーを続ける意味や目的を見いだせなくなるのではないかという迷いがあり、当時『絶対にラグビー選手になるんだ』という強いこだわりはありませんでした」

強固なフォワードが前に出てくれるおかげで、バックスが生きる

ラグビー継続と一般企業への就職への思いが半々だった山田選手。商社への就職も視野に入れていた中で、山田選手に最初に声をかけたチームがスピアーズでした。自分を必要としてくれる気持ちがうれしかったこと、スピアーズに慶應出身の先輩があまりいなかったことが入団の決め手になったといいます。

新入団選手の記者会見での様子 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

「大学進学のときもそうでしたが、自分のことを知らない人が多い環境のほうが楽しいんです。先入観なく接してもらえますし、プレーもプライベートもまっさらな状態で見てもらえるほうが自分には合っている気がします」

実際にスピアーズに入ると、「アットホームな雰囲気は想像通りだった」と笑顔を見せます。「大学時代の経験からフォワードが強いチームでプレーしたかったので、自分にとってベストな選択でした。強固なフォワードが前に出てくれるからこそ、バックスが生きるんです」。

2024‐25シーズンの第17節・埼玉ワイルドナイツ戦では後半40分に同点トライを決め、秩父宮が歓喜の渦に包まれた 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

ここまで山田選手の話を聞いていると非常に度胸が据わっているように感じますが、意外な一面について教えてくれました。「試合前は緊張して、えずいてしまうんです。中学校の頃からずっと続いていて、試合に限らず練習試合やジムでの測定時でも体が勝手に反応してしまいます。自分の中では『いつも通り、これで試合モードに入ったな』というバロメーターとして捉えています」。

選手名鑑の試合前のルーティーンに記載されている“前日にあたりめを食べる”についても、「高校の遠征時に先輩とコンビニで買って以来の好物で、かんでいると気持ちが落ち着きます」と明かしてくれました。

2026‐27シーズンは、試合出場数とプレータイムを増やしたい

スピアーズ入団後、山田選手はウイングとしてチームに貢献しています。どこのポジションでプレーするのが一番好きなのかを尋ねると「フルバックです」と即答。「他のポジションに比べて自由度が高いところが魅力だと思います。ですが、僕自身ポジションにこだわりはありません。チームが求めているポジションでしっかり結果を残したいです」と力強く言葉にします。

昨年はニュージーランドのウェリントン・ライオンズへのラグビー留学も経験し、現地の選手たちの覚悟や、ラグビーに対する姿勢の違いを強く感じたそう。「試合に出られなければ即生活に関わるような環境で戦っている選手も多く、一戦一戦にかける必死さや、ラグビーができていることへの感謝の思いが印象的でした。日本がいかに恵まれた環境にあるかということを再認識しました」と当時を振り返ります。

そんな山田選手の2026-27シーズンの抱負は、試合出場数とプレータイムを増やすこと。昨シーズンはリザーブでの出場が多かったこともあり、常にいつでもグラウンドに立つための準備を怠りません。「いざ試合に入ったときに、自分のやるべきことは決まっています。練習でやっていない余計なプレーはしない。特にランやディフェンスなど、練習してきたことをそのまま試合で発揮できるようにしたいですね」。

2025‐26シーズンの第6節・東芝ブレイブルーパス東京戦では11番で先発し、後半26分にトライ 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

昨シーズン山田選手がフル出場した試合は、第6節・東芝ブレイブルーパス東京戦、第7節・浦安D-Rocks戦の2試合でした。今シーズン、多くの試合で先発に名を連ね、1分1秒でも長くグラウンドで輝く姿を観られることを願っています。

マイブームは高校野球観戦。報徳学園が甲子園球場から近く、学生の頃から観に行っていたほどのファン(写真:せきねみき) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

編集後記:山田選手は現在岡田一平選手と同じ部署「水循環プラント積算課」で働いています。岡田一平選手が選手名鑑で紹介している好きな本『基礎からわかる下水・汚泥処理技術』は、今岡田選手から山田選手の手に渡っているそうです。

取材・文:せきねみき(ライター・コラムニスト)
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著者プロフィール

クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、日本ラグビーの最高峰 「ジャパンラグビーリーグワン」に所属するラグビーチームです。1978年創部し1990年にクボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市の(株)クボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備しました。「Proud Billboard」のビジョンの元、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っています。またSDGsの推進や普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進しています。

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