佐々木麟太郎の決断について
【これはnoteに投稿された十兵衛さんによる記事です。】
「今頃?」という話題で恐縮だが、タイトルの通り。昨年ドラフトでソフトバンクから1位指名を受けていた佐々木麟太郎選手が、MLBドラフトを受けてマーリング入団を決断した件について。
本当はタイムリーなタイミングで書こうと思っていたが、中日ドラゴンズがCS進出の可能性を残している間は試合の記事に特化しようと考え、先送りにしていた。
本当はタイムリーなタイミングで書こうと思っていたが、中日ドラゴンズがCS進出の可能性を残している間は試合の記事に特化しようと考え、先送りにしていた。
1. 佐々木麟太郎のMLB入り
MLBドラフト8巡目でマイアミ・マーリンズから指名を受けた佐々木麟太郎。先に指名を受けていたNPBのソフトバンクか、マーリンズ入りかで熟考の末、7/末にマーリンズ入団を決断した。
マーリンズの契約金は21万200ドルで、日本円で言うと約3,500万円弱。ソフトバンクへ入団の場合は、おそらく最高評価の契約金1億円以上を手にしていた訳で、目先の金銭というよりは将来的な部分を加味しての判断という事は明らか。元々、佐々木麟太郎自身のMLB志向が強かったという事もあり、この判断は極めて妥当だったと言えるだろう。ソフトバンクも、環境面の良さを訴求したり、「背番号1」を用意するなど、熱意のある交渉を続けて佐々木の心を動かしていたのは事実だが、その思いは叶わなかった。
以前、佐藤幻瑛のペンシルベニア州立大学編入の件と合わせ、自分は佐々木麟太郎のドラフト指名について以下のような記事を書いた。
↓以前の記事
マーリンズの契約金は21万200ドルで、日本円で言うと約3,500万円弱。ソフトバンクへ入団の場合は、おそらく最高評価の契約金1億円以上を手にしていた訳で、目先の金銭というよりは将来的な部分を加味しての判断という事は明らか。元々、佐々木麟太郎自身のMLB志向が強かったという事もあり、この判断は極めて妥当だったと言えるだろう。ソフトバンクも、環境面の良さを訴求したり、「背番号1」を用意するなど、熱意のある交渉を続けて佐々木の心を動かしていたのは事実だが、その思いは叶わなかった。
以前、佐藤幻瑛のペンシルベニア州立大学編入の件と合わせ、自分は佐々木麟太郎のドラフト指名について以下のような記事を書いた。
↓以前の記事
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以前の記事を書いて以降、佐々木麟太郎の指名について様々な方の考えに触れる中で、「このような佐々木の指名は、新たな「逆指名制度」の温床となるのでは?」と、とある方の意見を聞いて自分の軽薄な考えを思い知らされた。なかなかに鋭い視点でのご意見だ。仰る通り、佐々木の指名には現行制度を瓦解させるほどのリスクを孕んでいる。
2. 「佐々木麟太郎の指名」に潜むリスク
昨年のドラフトでは、ソフトバンクと横浜DeNAが佐々木麟太郎の指名に踏み切った訳だが、その他の球団にも「佐々木が事前のMLB志向を覆し、NPBに戻る意志がどれだけあるのか」という可能性が、等しく共有されていたのか。という事は大事な要点だ。「佐々木の想いを調査する事や、MLBを蹴ってまで入団してくれる魅力的な環境を作る事は、各球団の自助努力」と言ってしまえばそれまでだが、看過できない金銭問題への発展から逆指名制度を撤廃させ、「全球団均一条件」でのドラフトへと踏み切ったNPBにとって、この点は慎重に考えなければならない。見方を変えれば、「米国の大学に行けば、選手の希望球団に入団できる可能性が高まる」という事になるからだ。
現状のドラフト制度は、選手側から「球団を選ぶ権利」を強制的に剥奪する事で成り立っている。FA制度の拡充というトレードオフがあるとは言え、「一生の判断となる所属チームを、自分の意志で選びたい」という人として当然の想いは、現状の制度では叶わない。ただ、多くの選手がその想いを吞み込んでいる状況下で、佐々木麟太郎の一件はある種の「抜け道」を提案するものだ。「海外の大学に行けば、MLB入団をチラつかせて意中でない球団からの勧誘を排除できる」。その事実は、有力な人材の海外流出を後押しするだけでなく、日本野球界、特に大学野球界の空洞化を助長しかねない。この「自分で自分の首を絞める」という事実に、NPBは気付いていたのだろうか。
また、「自分で自分の首を絞めている」のはNPBだけではない。他でもない、指名したソフトバンク自身にも当て嵌まる。元来ソフトバンクは、所属選手へのポスティングを認めていない。ポスティングは「海外FAによる選手の流出に対し、球団に少しでも見返りを作るという制度」だが、そもそも資金が潤沢なソフトバンクには、そのようなニーズがさほど無い事は自明の理。ただポスティングを禁ずる事は、「ソフトバンクに入団した場合は、余分に日本に留まらなければならない」という選手側のデメリットとなる。海外FA権の取得条件は、「1軍145日以上のシーズンを通算で9シーズン」。高卒で入団当初から1軍に出続ければ、この条件を満たすのは最速で27歳。一方でMLBには「25歳ルール」という「25歳未満の選手に契約金・年俸で使える金額は年間500万ドル」とする上限が設定されている。したがって、ポスティングをするのであれば26歳から海外FA権の取得まで。最速なら26歳でMLB挑戦が出来るところ、ソフトバンクでは少なくとも27歳までは待たなければならないという事だ。
たかが1年とは言うものの、限られた選手生命の中で、またシーズン中にケガをするリスクも考えると、選手としては非常に大きなデメリットだろう。今回の佐々木のケースにおいても、この「余分な1年」はMLBを選ぶ判断材料の1つとなったのではないか。もし仮にソフトバンクが「佐々木だけは特例」としてポスティングを認めていたのであれば、今度は現所属選手がそのダブルスタンダードを許さない。MLB直行と天秤にかける選手が増えていく事は、ソフトバンクにもポスティングへのアプローチの見直しを強制する事にも繋がる。佐々木のドラフト指名は、そういった状況をより近づけるような「悪手」だったのではないか、と考えてしまうのだ。
現状のドラフト制度は、選手側から「球団を選ぶ権利」を強制的に剥奪する事で成り立っている。FA制度の拡充というトレードオフがあるとは言え、「一生の判断となる所属チームを、自分の意志で選びたい」という人として当然の想いは、現状の制度では叶わない。ただ、多くの選手がその想いを吞み込んでいる状況下で、佐々木麟太郎の一件はある種の「抜け道」を提案するものだ。「海外の大学に行けば、MLB入団をチラつかせて意中でない球団からの勧誘を排除できる」。その事実は、有力な人材の海外流出を後押しするだけでなく、日本野球界、特に大学野球界の空洞化を助長しかねない。この「自分で自分の首を絞める」という事実に、NPBは気付いていたのだろうか。
また、「自分で自分の首を絞めている」のはNPBだけではない。他でもない、指名したソフトバンク自身にも当て嵌まる。元来ソフトバンクは、所属選手へのポスティングを認めていない。ポスティングは「海外FAによる選手の流出に対し、球団に少しでも見返りを作るという制度」だが、そもそも資金が潤沢なソフトバンクには、そのようなニーズがさほど無い事は自明の理。ただポスティングを禁ずる事は、「ソフトバンクに入団した場合は、余分に日本に留まらなければならない」という選手側のデメリットとなる。海外FA権の取得条件は、「1軍145日以上のシーズンを通算で9シーズン」。高卒で入団当初から1軍に出続ければ、この条件を満たすのは最速で27歳。一方でMLBには「25歳ルール」という「25歳未満の選手に契約金・年俸で使える金額は年間500万ドル」とする上限が設定されている。したがって、ポスティングをするのであれば26歳から海外FA権の取得まで。最速なら26歳でMLB挑戦が出来るところ、ソフトバンクでは少なくとも27歳までは待たなければならないという事だ。
たかが1年とは言うものの、限られた選手生命の中で、またシーズン中にケガをするリスクも考えると、選手としては非常に大きなデメリットだろう。今回の佐々木のケースにおいても、この「余分な1年」はMLBを選ぶ判断材料の1つとなったのではないか。もし仮にソフトバンクが「佐々木だけは特例」としてポスティングを認めていたのであれば、今度は現所属選手がそのダブルスタンダードを許さない。MLB直行と天秤にかける選手が増えていく事は、ソフトバンクにもポスティングへのアプローチの見直しを強制する事にも繋がる。佐々木のドラフト指名は、そういった状況をより近づけるような「悪手」だったのではないか、と考えてしまうのだ。
3. 今年は、佐藤幻瑛が対象だ
結局、佐々木麟太郎がマーリンズ入りを決断した事で、とりあえずは上記のリスクは回避された。ただ、グローバル化の潮流は歯止めが利かず、今年は仙台大学に属していた佐藤幻瑛が、佐々木麟太郎と同じような立場でドラフトを迎える事になる。今ドラフトで、NPBは佐藤幻瑛の扱いをどう判断するのか。また、仮に佐々木と同様に「指名可能」となった場合、各球団は佐々木とソフトバンクの顛末も参考にしながら、佐藤幻瑛指名のリスクをどう判断するのか。昨年の佐々木に比べると佐藤自身に未だ米国大学での実績が無いため、佐々木ほど各球団の食指が動いていないかもしれないが、それはMLBが指名する可能性が低いという事も意味する。今ドラフトで、改めてNPBと各球団は、この「自分の首を絞めかねない」難問と向き合わなければならない。
個人的には、「海外の大学へ行った選手も、国内在住の選手と同様に『プロ志望届』の提出が必須」とルールは、最低限設けるべきと考える。システム瓦解のリスクを有したイレギュラーなアプローチは、制度を維持するうえで真っ先に否定すべきである事は、NPBも認識しているはずだ。
翻って、中日ドラゴンズの判断はどうか。と言われれば、おそらく佐藤幻瑛の指名は無いだろう。今の中日に、1位指名の権利を手放すリスクを負うほどの余裕はなく、またMLBと天秤にかけて中日に来てくれるほどの魅力を訴求できるのかも懐疑的だ。このような事実はファンとしても寂しいものであるが、今年も傍観者という立場でこの事象を眺めながら、「他球団が1位指名を手放すリスクを抱えてラッキー」という目先だけを見た軽薄な想いと、それでもNPBの行く末を案じる考えを心のどこかにそっと置いて、今年のドラフトを見届けたいと思う。
ドラフトまで、残り1ヶ月と半月だ。
個人的には、「海外の大学へ行った選手も、国内在住の選手と同様に『プロ志望届』の提出が必須」とルールは、最低限設けるべきと考える。システム瓦解のリスクを有したイレギュラーなアプローチは、制度を維持するうえで真っ先に否定すべきである事は、NPBも認識しているはずだ。
翻って、中日ドラゴンズの判断はどうか。と言われれば、おそらく佐藤幻瑛の指名は無いだろう。今の中日に、1位指名の権利を手放すリスクを負うほどの余裕はなく、またMLBと天秤にかけて中日に来てくれるほどの魅力を訴求できるのかも懐疑的だ。このような事実はファンとしても寂しいものであるが、今年も傍観者という立場でこの事象を眺めながら、「他球団が1位指名を手放すリスクを抱えてラッキー」という目先だけを見た軽薄な想いと、それでもNPBの行く末を案じる考えを心のどこかにそっと置いて、今年のドラフトを見届けたいと思う。
ドラフトまで、残り1ヶ月と半月だ。
見出し画像:葉っぱ
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