「泥臭く!」。日本大が体現する新生・全員野球。155キロ右腕を撃破し準決勝へ
2022年に全日本選手権で日本一に輝いた栄光から、4年の歳月が流れた。あの全国制覇の熱狂を、肌で経験した者は今の部内にはもう誰もいない。さらに、昨年までチームの絶対的な大黒柱として君臨した、150キロ超えの絶対的エース、竹川葉琉、首藤玄大の4年生コンビも引退。
「去年に比べれば、正直、打力は落ちてしまう。圧倒的なタレントもいません」と西河陸人キャプテン(3年=大垣日大)は語る。だからこそ彼らが選んだ道がある。圧倒的な力がないのなら、どこよりも泥臭く、足を使って、全員で考え抜く野球で日本一を掴み取る、と。
清瀬杯の準々決勝、日大はまさにその「泥臭い全員野球」を完璧に体現し、最速155キロを誇る大産大の右腕・野上龍哉と死闘を制してベスト4への切符をもぎ取った。
155キロの剛腕に食らいついた泥臭い攻略法
しかし、焦ることなく「徹底して揺さぶる」という泥臭いゲームプランに舵を切った。マウンドに立つのは、準硬式史上最速の速球を持つ剛腕・野上。
「本当に、今まで見たこともないような速さでした。上からグッと来る感じで。でも、僕たちのプランは、最初から『9回を通して、どうにか野上君を打ち崩せればいい』というものでした」と西河。
日大打線が共有したのは徹底した「徹底的な状況判断」だった。 「相手の思うつぼになってしまうので、威力のある高めのボールは捨てる。そして、連打で崩すのは正直難しい。だからこそ、どうにかランナーを出して、足を絡めて、走って走って揺さぶろうと決めていました」
その言葉通り、4回表、四球と死球でチャンスを作ると、5番・杉浦凜(2年=日大鶴ケ丘)のライト前ヒットで満塁とし、内野ゴロの間に1点。さらに7番・井上開斗(3年=福井商)がライト前へ泥臭く食らいつく適時打を放ち、すぐさま2-3と1点差に迫る。
5回表には、代打・浅倉七星(3年=日大東北)のヒットを足がかりにすかさず二盗を決め、相手の野手選択の間に3-3の同点に追いついた。
キャプテン西河が切り開いた8回表、総力戦で奪った決勝点
先頭打者として打席に入った西河は、野上が投じた力強いストレートを捉え、センター前へと弾き返すクリーンヒットを放つ。 「誰が出ても、誰が後から出ても仕事ができるのが、今年のチームの特徴なんです」(西河)。
無死一塁。ここで日大ベンチは、迷わず西河に代えて代走・宮﨑大河を送り出すと、初球から完璧なスタートを切って二盗に成功。無死二塁とすると、手堅く送りバントで1死三塁へ。ここで6番・吉田航太朗(3年=岡山学芸館)が、執念で高めの球をレフト前へ運ぶ勝ち越し適時打を放ち、5-4と勝ち越しに成功した。
最後は、継投した赤岩稜太朗(3年=日大明誠)が、大産大の9回裏の反撃を抑えきり、3時間11分の壮絶なゲームを締めくくった。
「この舞台は、先輩たちのお陰」
「こうやってトーナメントの一発勝負を経験できているのは、これまでの4年生が積み上げてきてくれた土台があるからです。本当に感謝しかありません。先輩方が作ってくれたこのチャンスを、絶対に無駄にはしない」
かつての「日本一」の栄光を知る者はもういない。だからこそ今年のチームには、過去の栄光に縛られない「泥臭い強さ」がある。
キャプテン西河陸人率いる日本大は、清瀬杯の頂点へ向けて、一歩一歩、泥まみれの足跡を力強く刻み込んでいく。
文・樫本ゆき(編集部)
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