「気にしてたら準硬には来ない」。関西大・福榮陸(洲本)の「自然体」な選択肢
「いや、あんまり考えていないです」。
返ってきた答えに、思わず笑ってしまった。
清瀬杯第58回全日本大学選抜準硬式野球大会、準々決勝。関西大は青森大とのシーソーゲームを7―6で制し、ベスト4へ進んだ。
決勝打を放ったのは、1番・福榮陸(3年=洲本)。8回、同点に追いつき、なお2死一、三塁。ここで中前へ勝ち越し適時打。「打席では真っすぐとか変化球とか、余計なことを考えず、来た球を打とうと思っているんです」。全国大会でも、そのスタンスは変わらなかった。
福榮と話していて面白かったのが、準硬式球について聞いた時だった。
準硬式球は大きさや重さは硬式球とほぼ同じだが、表面がゴムで覆われている。硬式から転向した選手に話を聞くと、バウンドや打球、握った感触など、その違いに戸惑ったという話は珍しくない。
ところが福榮は、「本当に硬式と変わらないんですよね」と、あっさり言う。
むしろ「投げやすい」と。
「守備では準硬の方が強い球を投げられる感じがする」という。
この日の球場も普段とは違う人工芝だった。「めっちゃ足を取られる!」「打球も意外と伸びてこない」と違いは感じていた。それでも、そこに必要以上の意味を持たせない。
準硬式球は硬式球に比べて縫い目や回転が見えにくいと感じる選手もいる。球種の判別に影響はないのか。
そう尋ねると、福榮は笑った。
「分からなくても、あんまり気にしないというか。気にしてたら準硬には来ないですね」
なるほど。これも一つの「適応力」なのかもしれない。
まず受け入れてみる。見えないものは気にしない。環境が違えば、その環境の中で自分のできることをする。だから打席でも「来た球を打つ」。シンプルである。
高校まで硬式を続けてきた選手が、大学でも全員同じ道を歩むわけではない。硬式野球部へ進む者もいれば、準硬式を選ぶ者もいる。野球から離れる者もいる。
どれが正解という話ではない。
自分が置かれた場所で、自分なりの野球を見つければいい。ならば、自分たちは準硬式で日本一を目指す。
関西大準硬式野球部は、学生主体でチームを運営している。選手同士で教え合い、考え、試合に臨む。福榮が何度も口にしたのが「自分たちの力」という言葉だった。
「春に硬式野球部が全日本選手権で優勝した。友達もいるのえ刺激になりました。準硬式野球部は僕が入ってから全国での優勝はない。なので、自分たちの力で全国大会に行って、自分たちの力で優勝する経験を、僕たちの代で成し遂げたいと思っています」
準硬式という大学野球の面白さを、勝利を通じてもっと味わうつもりだ。
文・樫本ゆき(編集部)
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