今日の推しメン#010「逆境を乗り越え開花。声に出して行動し、憧れを現実に変えてきた」 岡田一平

チーム・協会

写真:せきねみき 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの選手やスタッフを“思わず推したくなるエピソード”について紹介する連載インタビュー「今日の推しメン」。第10回は、リーグワン2025-26シーズンのスピアーズを象徴する選手であり、ムードメーカーとしてチームを牽(けん)引し続ける“いっぺー”こと岡田一平(おかだ・いっぺい)選手が登場。「メディア取材でこれまで一度も話したことがない」というエピソードも披露してくれました。

退団危機からつかんだ劇的ドラマ、「32歳からが本番」を証明したシーズン

決勝戦後からオフシーズンの間に、数多くのメディアから取材を受けたというスクラムハーフの岡田選手。改めて昨季の感想を求めると「何度振り返っても、本当に面白いシーズンでしたね」と、晴れやかないっぺースマイルで答えます。
 
岡田選手は今年3月末に退団を告げられましたが、同じポジションの選手が負傷したため、わずか数日後に白紙撤回。その後は巡ってきたチャンスをつかみ取り、出場した試合で結果を残し、最終的にはシーズン終了までグラウンドに立ち続けたのです。誰もが予想できないジェットコースターのようなシーズンを「面白い」と表現できるのは、強いメンタルがあってこそ。

約3年ぶりに出場した第16節三重ホンダヒート戦では2トライをマークし、プレーヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれた岡田選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

「決勝で神戸(コベルコ神戸スティーラーズ)に敗れた直後は、悔しさと自分の至らなさ、そしてスピアーズを去ることが決まっているレジェンドたちの姿を目の前にして、『優勝するのとそうでないのとでは、大きな差がある……』という強い思い残しを抱えていました。ですが、今はもう気持ちを切り替えています。まずはこの暑さを乗り切って、体づくりに励みたいです」

決勝戦後、岡田選手が「Best man」と語るバーナード・フォーリー選手との一枚 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

岡田選手は現在32歳。決勝戦後の囲み取材時には「ラグビーは32歳からが本番です!」と話していました。「そう思えたのも、昨シーズンの自分のプレーがあったから。自分が膝をケガしたのは30歳手前でしたが、大きな負傷を機にコンディションを崩す選手も少なくありません。S&Cのウラさん(浦山真吾ヘッドオブアスレティック)から『常に全力でやるだけの選手は、いい選手ではない』と助言を受けて、失敗を重ねながら自分の体との向き合い方を熟知できたのが、32歳のまさに今なんです」

写真:せきねみき 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

背中を追い続けた「絶対的な存在」の引退に涙

岡田選手がラグビーを始めたのは中学生になってから。4歳年上のお兄さんと同様、ソフトボールからラグビーの道を歩むことに決めました。「通っていた(大阪市立菫)中学校がたまたま強豪校で、兄がラグビー部で頑張っている姿を見ていたので、僕も中学に入ったら当然ラグビーをやるものだと思っていました」

幼少期の岡田兄弟(写真提供:岡田一平選手) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

高校もお兄さんと同じ常翔学園高等学校へ進みます。常に一歩先を行くお兄さんは、岡田選手にとって憧れの存在でした。

「僕が中学のときは兄が高校で花園に出場して、僕が高校のときには関東学院大学で活躍。その姿を間近で見ていて、ラグビーでは兄が一番強いと信じていました。家では、僕が小・中学生の頃は完全に主従関係でしたよ。4歳差って力の差があるじゃないですか。果敢に勝負を挑むんですけど、絶対に勝てない。押さえつけられてボコボコにされてきました(笑)」

兄・航太さん(写真左)と。「師匠と呼んだことはないけれど、一番身近で刺激になる存在」(写真提供:岡田一平選手) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

そのお兄さんが大学卒業時に「教員になるからラグビーをやめる」と伝えた日のことを、岡田選手は振り返ります。

「兄は僕にとって一番の目標。ユース代表にも選ばれていた兄はトップリーグに行って、日本代表を目指すものだと思い込んでいました。これは家族も含めて誰にも話していないのですが、兄の話を聞いた日の夜、実は一人でこっそり泣きました。面と向かって『やめないでほしい』と言える関係ではなかったので言えませんでしたが、ずっと目標にしていた存在がいなくなってしまうのが悲しかったんです


そんな岡田選手はお兄さんの応援で中学3年生から大学ラグビーを観るようになり、早稲田大学のプレースタイルに魅了されていきました。高校時代、監督やコーチに「早稲田に行きたいと言い続けてきた」と話します。

「野上(友一)監督が僕の思いをくみ取ってくださり、推薦入試に必要な小論文の書き方を教えてくれました。そんな中、たまたま1枠面接だけで入れる推薦枠が空いてチャレンジしたところ、早稲田の辻(高志)監督に選んでいただきました。自己推薦は落ちる人も多いと聞いていたので、本当に運がよかった。もし早稲田に行けていなかったら、どうなっていたかわからないですね。ニュージーランドにラグビー留学していたかもしれないです」

いつも自分の思いを声に出し、行動に移してきた岡田選手。高校ジャパンの選考に落ちたときも「高校ジャパンに落ちたなら、次はU20のトライアウトを受けに行こう」と次なるチャレンジに挑み、その結果ピックアップメンバーに選ばれました。「このとき小倉順平(横浜キヤノンイーグルス所属)とハーフ団を組むことになったんですけど、『お前、本当にヘタクソだな!』と笑顔で言われましたね(笑)」

「選手会活動」は未来のラグビー界への恩返し

念願の早稲田大学に進み、4年次にはキャプテンを務めた岡田選手。卒業後は関西に戻らず、東京でいろいろな人や価値観に出会いたいという思いが強かったといいます。複数チームから声がかかる中、スピアーズへの入団は、2015年のラグビーワールドカップで大活躍していた立川理道選手と一緒にプレーできること、フラン・ルディケヘッドコーチが就任することが決め手になりました。

「この頃は特に海外への挑戦意欲もあったので、海外の人脈を持っているフランHCのもとでチャレンジしたいと考えました。実際に入団して、スピアーズの文化や核となる部分をゼロから一緒に築き上げられたことは、僕自身の大きな財産になっています」

第16節の三重ホンダヒート戦が終わり、フランHCからねぎらいの言葉をかけられた岡田選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

社員選手の岡田選手は、当初慣れない仕事にプレッシャーを感じて続けられるか不安だったそう。そんな中、当時の上司の言葉に救われたと話します。

「僕が『業務とラグビーの両立を頑張ります』と言ったら、上司に『そんなこと簡単にできると思ってんのか! ラグビーのプロとしてやってるんだろ? 俺たちは仕事のプロとしてやってるんだ。そんな俺たちに向かって安易に両立なんて口にするな』とお叱りを受けたんです。プロとしてラグビーで結果を出し、試合で活躍して会社の雰囲気をよくする。部署や社内でラグビーの話題をつくることが、社員選手として求められている本質なんだと再認識しました。両立という言葉に甘えず、ラグビーに対してプロとしての覚悟を持つこと、職場で仕事を支えてくれている社員のみなさんへの敬意を忘れないことを肝に銘じています」

現在、岡田選手は日本ラグビーフットボール選手会の副会長としても精力的に活動中。オンライン配信番組「選手会の部屋」のプロデュースを手がけるなど、多忙な日々を送っています。「LINEで直接連絡して、出演交渉から日程調整、配信回ごとのグループLINEの作成まで全部自分でやっているんですよ」。ファンのみなさんに喜んでほしいという思いで取り組んでいるそうです。
「僕自身ラグビーのおかげで、高校や大学、そしてクボタというすばらしい会社や仲間に出会うことができました。選手が直接自分の意見を主張でき、安心してラグビーに打ち込めるための組織を未来の子どもたちや後輩選手たちにつないでいくこと。これこそが、人生を支えてくれたラグビー界への恩返しだと思っています」

写真:せきねみき 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

取材後記:インタビュー後に「トレーニング中の写真撮ってや!」と追加リクエストを受けたのは、今日の推しメン連載10回目にして初めての経験でした。いっぺー選手の真剣な表情をぜひご覧ください!

写真:せきねみき 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

取材・文:せきねみき(ライター・コラムニスト)
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著者プロフィール

クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、日本ラグビーの最高峰「ジャパンラグビーリーグワン」に所属するラグビーチームです。。1978年創部し1990年にクボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市の(株)クボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備しました。「Proud Billboard」のビジョンの元、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っています。またSDGsの推進や普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進しています。

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