【週刊グランドスラム367】若手の手本・臼井 浩(東京ガス)が迎える10年目の夏
「都市対抗10年連続出場がかかったシーズン。やはり自チームで東京ドームに行きたくて、意識し過ぎていたように思います」
松田孝仁監督には春先の調整から任されているが、「だからこそ、投げさせてもらう試合で負けるわけにはいかない」と、ベテランになったからと言って慎重かつスローペースでコンディションを整えることはしない。今季も2月のおいどんリーグから実戦登板し、先発もリリーフもこなしながら仕上げていく。
都市対抗東京二次予選は一回戦の先発を任され、JR東日本を相手に7回まで116球で5失点。1点をリードして交代したが、直後に逆転を許してしまった。続く第三代表二回戦は、セガサミーとシーソーゲームを演じ、9回途中の一死満塁からリリーフ。勝ち越しタイムリーを許すも、タイブレークの延長10回に際どくサヨナラ勝ちする。
そして、打線の爆発で第三代表決定戦に駒を進めると、NTT東日本を3安打でシャットアウトし、5回裏に奪った1点を守り切って6年連続、臼井自身は10年連続となる東京ドーム行きを決めた。
「今季チームに貢献できたのは、まだその1試合だけ。他チームからは『臼井も落ちてきたな』と、思われているかもしれませんね」
そんな厳しい自己評価も、やるべきことは常にやり尽くしているという自負と、もう一度、日本一を勝ち取るという闘志の表れだろう。
黒獅子旗や10年連続出場に満足感はない
黒獅子旗や10年連続出場を達成できたら、現役生活に悔いはないとユニフォームを脱ぐ者もいる。
「橋戸賞はチームの代表としていただけたと思っていますし、10年連続出場も強いチームでプレーできたから。その瞬間の達成感や感謝の気持ちはありますけど、僕自身はそれで満足したり、『もう目標がない』と感じることはないですね」
振り返れば、ルーキーながら主要な公式戦で6勝を挙げ、年間表彰で最多勝利投手賞を獲得した。
都市対抗に向けて勢いもつけたい北海道大会ではリーグ戦を3連勝で勝ち上がり、大阪ガスとの準決勝で先発を任される。1回裏に不運な安打で1点を先制されるも、粘り強く投げて3回表には同点に追いつく。だが、5回裏二死一塁から橋本典之に2ラン本塁打を許した。
「2年目の越川海翔とバッテリーを組み、僕が抑えれば越川にもいい経験になるところ、完全なコントロール・ミスでやられた。その回で交代になりましたし、僕もまだまだです」
プロの世界なら、臼井は先発で6回まで3失点のクオリティ・スタートをほぼ達成している。しかし、一発勝負の社会人では、年間防御率0点台でも都市対抗一回戦を1失点で負けるかもしれない。そんな厳しさの中で勝利を求める臼井の姿は、若い投手たちの手本となっているようだ。実際、20代前半の投手から「東ガスの臼井さんのようなピッチングが理想」という声をよく聞くようになった。
「それは嬉しいですね。僕らも若い頃、トヨタ自動車の佐竹功年さん(現・副部長)をそういう目で見ていましたから」
社会人野球のアイコンとなった10年目の夏も、大舞台で臼井のパフォーマンスを愉しめる幸福を満喫したい。
取材・文=横尾弘一
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