勝敗を超えて示したもの――クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、成長の2025-26シーズン/vol.4 また、新しい1日が始まる

チーム・協会

DAY1から始まった42週間の挑戦。そのすべてを懸け、スピアーズは2年連続となる決勝のピッチへ足を踏み入れた 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

歓喜には届かなかった。それでも、この42週間で築いたものまで失われるわけではない。
誰か一人に頼らないチームへ。困難を受け入れ、成長へ変えるチームへ。2025-26シーズン、スピアーズが追い求めてきたGRITは、決勝の敗北の先にも確かに残っていた。

スティーラーズとの3試合が示したもの

えどりくで続いていた連勝記録が止まったレギュラーシーズン最終節。それでも、この敗戦もまた決勝へ向かうチームにとって大きな学びとなった 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

フラン・ルディケ ヘッドコーチが印象に残った試合として挙げた、開幕節のコベルコ神戸スティーラーズ戦。スティーラーズとは、シーズンを通して3度相まみえた。初戦は勝利し、2戦目、そして3戦目のプレーオフ決勝では敗北。しかし。1勝2敗という結果以上に、そこにはスピアーズが積み上げてきたもの、そして最後に届かなかったものが表れていた。

「3試合を分けたのは、本当に小さな差でした。一つのラインアウト、一つのスクラム、一つのブレイクダウン。決勝でも、トライライン目前のブレイクダウンでペナルティを取られた場面がありました。あのボールをキープできていれば、次のフェーズでスコアできていたかもしれない。それくらい勝敗の差は小さいものだったと思います。そういうプレッシャーのかかる場面で必要になるのは、ファンダメンタル(基本)、ベーシックな部分です」

それは、6月7日に行われた国立競技場での決勝だけではなかった。“えどりく不敗神話”が崩れたあの日。レギュラーシーズン最終節、スピアーズえどりくフィールドでの一戦も同じだった。

「エドリクの試合でも、ラストプレーで自分たちのラインアウトがありました。あそこでモールを組み、スコアできれば勝つことができた。でも、そのラインアウトを失ってしまいました。
私は言い訳をすることを信条としていません。レフリーでも、相手でもなく、自分たちにフォーカスする。自分たちがコントロールできることに集中する。あのラインアウトは、勝つためのチャンスでした。2つの敗戦から学んだことは、基本を遂行すること。基本で相手を上回ること。それを決勝で改めて学びました」

では、勝利した開幕戦と、2つの敗戦。その差はどこにあったのか。フランHCが言葉を続けた。

「小さな瞬間を取れたかどうかです。開幕戦もそうですが、私たちは4年間、神戸に負けていませんでした。どの試合も接戦でした。ただ、重要な場面、その小さな瞬間で勝っていた。チャンスを作り、それを取り切ることができていました」

だからこその1パーセントの積み重ね。大きな何かを変える必要があるわけではない。勝敗を分けるのは、ほんのわずかな瞬間。その瞬間をつかむために、日々の基準を少しずつ高めていく。それが、フランHCがこのチームに植え付けてきた文化だった。

届かなかった先へ、また1%を積み重ねる

決勝後、ピーター“ラピース”ラブスカフニ(FL)と言葉を交わすフラン・ルディケHC。その胸には様々な思いが去来していた 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

決勝で届かなかった数センチ、数秒。その差を埋めるものもまた、特別な何かではない。毎日の練習、毎回のミーティング、一つひとつのプレー。その積み重ねの先にしかない。

だが、ときに悔しさは暴力的に人の胸を襲う。それは、この決勝での敗北も例外ではなかった。着実に積み重ねてきた手応えはあった。だからこそ、敗戦の痛みもまた大きかった。

「本当に大きなものです。本当に大きい。苦痛です。でも、“金継ぎ”です。そこから学ぶ。それが、学ぶための唯一の方法だと思います。だからこそ、決勝という舞台に立つことには大きな意味があります。そこにたどり着き、そして勝つ方法を見つける。そこにたどり着くこと自体が、自分たち自身について最も多くを学べる場所でもあるのです」

ただ、届かなかった現実を受け止めながら、それでも胸を張れるものが確かにあった。負傷者を抱え、チームは決して無傷ではなかった。だが、その課題を未解決のまま抱えて決勝の舞台に立ったわけではない。決勝の80分には、これまで築いてきたチームの確かな成長と、これからにつながる可能性が示されていた。

「決勝で何人かのキープレーヤーが不在だったことを考えると、そのわずかな差が勝敗を分けることもあります。ただ、あの決勝を見て、重要な選手が怪我でいなかったからチームを調整しなければならなかったようには見えなかったと思います。私たちは普段通りでした。ピッチに出て、ゲームをコントロールし、チャレンジし、最後は一つ、二つの小さな瞬間が勝敗を分けるところまで持っていきました。違いは見えなかったはずです。
それは、システムが機能していること、選手が成長していることの証明です。ルーキーや若手選手、私たちの“ヤングガンズ”が、あの決勝という舞台で素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。それは私たちにとって勝利です。大きな勝利です」

12番を背負い、力強いランを見せる廣瀬雄也。フラン・ルディケHCが期待する“ヤングガンズ”のひとりとして、さらなる成長が期待される 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

試合直後、記者会見に登壇したマキシ ファウルアは「チームメイトに『やり切った』と伝えたい」と話していた。その言葉には、この一年、チーム全員で体現してきたGRITが詰まっていた。マキシが改めて語る。

「怪我人が出る中で、メンバーに選ばれた23人は本当に素晴らしかったと思います。あの試合でも、これがクボタのDNAなのだと感じました。何があっても、次に誰が入っても、本当に良い仕事をしてくれました。誰が入ってもスタンダードを下げることなく、むしろそのスタンダードをさらに上げようとしてきました。
試合中もそう感じていましたし、試合が終わったあと、みんなの悔しそうな姿を見て、一人ひとりの目を見て、『よくやった』という言葉を伝えたかった。もちろん悔しい結果です。でも、ここまでみんな本当によく頑張った。やり切ったと思います」


確かな成長はあった。それでも、まだ先がある。もう一度ゼロからチームを作り直し、さらに高い場所を目指していく。悔いなく終わるために。そして最後の瞬間、全員で笑うために。では、その一歩先へ進むために必要なものは何なのか。マキシが見つめていたのは、決して大きな変化ではなかった。

「決勝のような試合では、本当に細かいところだと思います。“ビッグモーメント”でプレッシャーがかかる中、どれだけ遂行(エグゼキューション)できるか。大事な場面でトライまで取り切ること。そして規律の部分です。オフサイドやロールアウェイなどは、自分たちでコントロールできるところです。コントロールできないことは仕方ないですが、プレーオフのような舞台では規律が本当に大事になります。
そこは一つの学びとして残っています。大事な場面、プレッシャーがある中で、チームとして一つひとつのプレーにどれだけこだわれるか。トライまで取り切るエグゼキューションを高めていくことが、来季に必要だと思っています。また全員で準備して、少しずつ高めていきたいです」

決勝の舞台でラインアウトを確保するメルヴェ・オリヴィエ(LO)。最後まで細部の勝負が続いた80分だった 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

また、1%を追い求める日々が始まる。ただ、その前に必要な時間がある。フランHCが来シーズンへ向かうチームに求めたのは、もう一度走り出すためのリセットだった。

「まず大切なのは、リセットしてリフレッシュすることです。私たちの日々は非常にインテンスなものです。毎日、その1%を手にするために戦っています。だからこそ、最初の4週間は完全にリセットする時間です。リフレッシュして、普段の習慣やルーティンを変えること。家族との時間を過ごすことも大切ですし、普段食べないものを食べてもいい。チートフードだって大丈夫です」

傷跡を隠すのではなく、その経験さえも自分たちの一部にしていく。不完全さを抱きしめながら、また新しい1日が始まる。

【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

取材・文:藤本かずまさ(筋肉ジャーナリスト)
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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著者プロフィール

クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、日本ラグビーの最高峰「ジャパンラグビーリーグワン」に所属するラグビーチームです。。1978年創部し1990年にクボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市の(株)クボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備しました。「Proud Billboard」のビジョンの元、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っています。またSDGsの推進や普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進しています。

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