勝敗を超えて示したもの――クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、成長の2025-26シーズン/vol.3 再戦で示した成長の証
昨季決勝で敗れた東芝ブレイブルーパス東京。そして、今季終了間際の逆転劇を許した埼玉パナソニックワイルドナイツ。悔しさの残る敗戦は、そこで終わりではなかった。
敗北を分析し、課題を受け止め、次につなげる。その積み重ねこそが、スピアーズを再び決勝の舞台へ押し上げる力になった。
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ブレイブルーパスとの3度の戦いが残したもの
そのチームには2023年2月の対戦を最後に、約3年間も勝てていなかった。昨年6月の決勝でも、勝利には手が届かなった。東芝ブレイブルーパス東京との戦いは、2025-26シーズンを通しての、大きなテーマの一つだった。
フラン・ルディケ ヘッドコーチは、昨年の決勝から続くチームの変化について、こう語った。
「昨年のあの決勝から、プレッシャーの中でどのように基本を遂行するかについて、チームとして自分たちのことを多く学びました」
このシーズン、スピアーズはプレーオフトーナメント準々決勝を含め、ブレイブルーパスと3度向き合った。最初の対戦となった第6節の交流戦(1月24日、秩父宮ラグビー場)。後半残り25秒、リッチー・モウンガにトライを許し、逆転負けを喫した。その一戦の記憶は、フラン・ルディケ ヘッドコーチの脳裏にも鮮明に刻まれていた。
「1戦目に負けたのは、我々がリードしていたのに、キッキングゲームなどゲームを十分にコントロールできず、最後にスコアを許してしまったからです。リッチー・モウンガが裏に蹴り、ショーン(スティーブンソン)と(バーナード)フォリーのキック処理がうまくいかず、相手に簡単なチャンスを与えてしまったことを覚えています。ですから、あの試合でさえ、我々がコントロールし、スコアでもリードしていたのですが、試合を締めくくることだけが学びでした」
勝利は心で、敗北は頭で受け止める。昨年の決勝後にフランHCが残した言葉である。この敗戦から目を背けず、自分たちの成長につなげたからこそ、次の2度の対戦では勝利を掴むことができたという。
「だからこそ、チームの成長を感じていますし、自分たちが正しい方向に進んでいると感じています」
3月28日、スピアーズえどりくフィールドでの再戦では51対7で快勝を収めた。そして、プレーオフトーナメント準々決勝(5月24日、秩父宮ラグビー場)ではノートライに抑えて完勝。今季、磨き続けてきたディフェンスと規律。その完成形とも言える姿を見せた試合だった。
「その通りです。また、相手が我々のディフェンスに対してどう攻めたいのかも理解していました。選手たちは我々のプランを遂行するためにハードワークしてくれました。相手をノートライに抑えられたことは非常に価値がありました」
「おお、本当ですか。彼はその試合を楽しんでいたんですね。東芝はこの2、3年、私たちにチャレンジを与えてきたチームでした。リッチー・モウンガが加入してから、彼らのスタイルは私たちにプレッシャーをかけるものでした。だからこそ、私たちは対戦するたびに学び、成長してきました。そして、その成果を得ることができた。だからマキシにとって、あの試合は特別なものになったのだと思います」
勝ち進んだ準決勝。そこに待っていたのは、レギュラーシーズンではまだ一度も勝てていない、あのチームだった。
37フェーズの記憶。準決勝で証明したチームの成長
3月14日、1万6,647人の観衆が詰めかけた秩父宮ラグビー場。楕円球が描く熱戦はスタジアムを揺らし続け、80分を過ぎてもボールはまだ生きていた。トライライン目前での攻防。スコアは30対25。スピアーズが5点をリードしていた。
スピアーズが耐え、ワイルドナイツが迫る。その攻防のフェーズは実に37を数えた。最後に執念でトライラインを越えたのは、ワイルドナイツだった。難しい位置からのコンバージョンゴールを山沢拓也が決めた瞬間、スピアーズの指先から、勝利がこぼれ落ちた。
フランHCいわく、この試合での学びは2つあるという。
「ひとつ目は、どう試合を締めくくるかという部分です。あの場面も、もともとは私たちがボールを持っていました。ただ、キックの部分でうまくコントロールできず、自分たちのキッキングゲームから相手にチャンスを与えるアンストラクチャーな状況を作ってしまいました。ボールを持っている中で、いかにプレッシャーをかけるキックを使い、ゲームをコントロールするか。それが最初の学びでした」
そして、二つ目は「相手がボールを持ち、勝つためにトライが必要な状況で、どうボールを奪い返すか」。
「ただ守るだけではなく、ペナルティを与えずに、ディフェンスでプレッシャーをかけ、どうターンオーバーを生み出すか。それも私たちにとって大きな学びでした。なぜなら、彼らは37フェーズもボールをキープし続けたからです。それは長い時間です。我々はボールを取り戻す必要がありました。いかに相手を絞り、いかにキャリアを孤立させ、ボールやタックルシチュエーションでプレッシャーをかけてボールを奪い返すかを理解しなければなりません」
その学びが試される瞬間は、2カ月後に訪れる。5月31日、秩父宮ラグビー場。プレーオフトーナメント準決勝。相手は、同じワイルドナイツだった。フランHCがまず挙げたのは、ワイルドナイツが作り出すプレッシャーだった。
「彼らの戦い方で大きな部分は、相手をどう自陣に押し込めるか。つまりテリトリーの部分です。彼らはテリトリーを獲得し、非常に強いキッキングゲームを持っています。そして、そのキックによって相手にプレッシャーをかけてきます。さらに、彼らには素晴らしいディフェンスがあります。キックを使って相手を“窒息させる”ようにプレッシャーをかけてくるチームです」
だからこそ、必要だったのは、その圧力から抜け出すこと。そして、逆に相手へプレッシャーをかけ返すことだった。
「ここ数年、彼らと戦う中で、対戦するたびに自分たちは成長してきました。そのプレッシャーやキックプレッシャーのゲームをどう打開するか。そして逆に、どう彼らへプレッシャーをかけ返すかを理解してきました。理解していたからこそ、あの準決勝では多くのチャンスを作れたのだと感じました。我々がリードしていました。残り20分の時点で14点リードしていました。それは我々が成功し、チャンスを得点に結びつけ、逆に彼らにプレッシャーをかけていたことを示しています」
しかし、ワイルドナイツはまだレギュラーシーズン公式戦で一度も勝てていない相手である。やはりこの試合も、両チームが身を削り合う死闘となった。
26対12とリードして迎えた終盤、ワイルドナイツは再び圧力を強める。2カ月前に突きつけられた、試合をどう締めくくるのかという課題。その答えが、もう一度問われる時間だった。
だが、この日は違った。追い上げるワイルドナイツを振り切り、スピアーズは最後まで勝利を手放さなかった。スコアは26対24。「試合をどう締めくくるか」という学びは、確かにこの準決勝につながっていた。
積み重ねたプロセスが生んだ決勝前の確信
「決勝について考えたとき、今シーズンのインパクトプレーヤーたちのことがありました。終盤に大きなインパクトを与えられる選手たちに怪我人が出てしまいました。マルコム、フジワラ、ルアン、タイラー、G。彼らはチームに力を与えてくれる“本当の火力”でした。彼らが試合の序盤から力を発揮し、そこからハヤテ(江良颯)やタメフサ(為房啓次郎)らが終盤に大きなインパクトを与える。それが私たちの形でした。決勝では、違う方法で80分間を戦う方法を見つける必要がありました」
だからこそ、決勝へ向けた準備で大切にしたのは、特別なことではなかった。どれだけ自分たちのプロセスを信じ、冷静でいられるか。
「私たちが使っていた言葉は、“Calm people, calm team”でした。人が落ち着いていれば、チームも落ち着くという意味です。冷静であるということは、プロセスに集中しているということです。プロセスを信頼し、選手を信頼し、ゲームプランを信頼している。そうすることで、目の前のチャレンジを楽しみにすることができます。
なぜなら、自分の役割を理解し、自分たちがどう勝つのかを分かっているからです。相手の強みを理解し、自分たちがどう攻めたいのかも分かっている。その理解が冷静さを生みます。私たちがフォーカスしたかったのは、そこでした」
「100パーセント違いました。正直に言えば、勝てると信じていました。疑いはまったくありませんでした。なぜなら、全員が一つのチームになっていることが見えていたからです。自分たちがやるべきことも明確でしたし、自信もありました。メンタルの部分も良い状態でした。プロセスも明確でした。
怪我人、レフリー、スタジアム、不測の事態。そういった自分たちではコントロールできないものに気を取られることはありませんでした。自分たちのプロセスに集中していました。準備の段階から冷静でいることができました」
そして、その自信は決して感覚的なものではなかった。シーズンを通して積み上げてきたものが、その根拠になっていた。
「我々は非常に一貫性があったと思います。なぜなら、東芝とパナソニックにラストプレーで負けましたが、それ以外の多くの試合はすべて力強いパフォーマンスで納得のいく勝利を収めていたからです。我々は自分たちのゲームモデルについて明確でしたし、自分たちのスタイルや、様々な勝ち方に対して自信を持っていました」
決勝前に取材に応じたキャプテン、マキシ ファウルアも「去年は緊張しましたが、今年は楽しみ。早く試合がしたい」と語っていた。その言葉を伝えると、フランHCは「そうですか。それを聞けて、最高の気分です」と表情を緩ませた。待ち望んだ80分が、始まろうとしていた――。(つづく)
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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