勝敗を超えて示したもの――クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、成長の2025-26シーズン/vol.2 受け継がれるリーダーシップ
自らのプレーと言葉でチームを導くキャプテン。その背中を支えたのは、これまでスピアーズの文化を築いてきたリーダーたちの存在でもあった。
受け継がれてきた基準、日々の振る舞い、そしてチームへの思い。変化の時代を迎える中でも、スピアーズが大切にしてきたものは、確かに次の世代へつながっている。
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背中で示すリーダーへ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ、前川泰慶ゼネラルマネジャーがマキシの成長として口をそろえたのは、リーダーとしてのその行動だった。大学時代からマキシのことを知る前川GMが語る。
「ここまでチームのために体を張ってくれる人間になるとは、正直、想像していませんでした。あとから聞いたことですが、決勝では、ふくらはぎの肉離れを2箇所もやっていたと。それがいつ起きたのか本人も分からないくらいの状態だったと思います。その状態で、80分間あれだけのパフォーマンスをする。チームのためにそこまでやれるというところが、まず一番すごい部分です」
キャプテンとして迎えた2シーズン目。その変化は、プレーだけに表れたものではなかったという。
「本人はあまり認めないかもしれないですけど、選手たちにかける言葉や、その言葉の選び方、タイミングもすごく上手になっていると思います。僕自身が試合前のハドルに入っているわけではないので、人から聞いた話や映像、レフリーマイクを通して聞こえる選手やレフリーとのやり取りでしか分からない部分もあります。それでも、そういうところも含めて、マキシは本当に成長していると思います」
また、誰よりも近くでキャプテンとしての歩みを見守ってきたフランHCも、同じ変化を感じ取っていた。
「彼自身、全選手をどうマネジメントするかという部分で成長したと思います。彼の強みは、さまざまなリーダーやチームメイト一人ひとりと、どうつながりを作るかというところにありました。彼は日本語を話すことができますし、トンガ出身の選手たちとはトンガ語で話し、とても近い関係を築いています。そして海外出身の選手たちも、そのプレーを見てリスペクトしています。
彼はプレーで手本を示してリードする選手です。タフで、身体を張ってボールを運ぶことができる。決勝の舞台でも、その姿を示してくれました。だからこそ、チームメイトは彼をリスペクトしているのです」
シーズン終盤、3年ぶりの公式戦復帰から決勝の舞台まで駆け上がった岡田一平も、そんなマキシの存在に支えられた一人だった。決勝後、「ルアにはかなり助けてもらいました」と岡田は振り返っている。
「もともとイッペーは素晴らしい選手です。僕がクボタに入ったときも、イッペーのプレーを見て『素晴らしい選手だ』と思っていました。数年ぶりの公式戦ということもあり、緊張感もあったと思います。だから、できるだけコミュニケーションを取りました。スクラムやラインアウトなど、プレー面でも毎試合声をかけていました。そこから生まれる信頼関係もあります」
チーム文化を築いたリーダーたち
彼らが残したものは、数字や勝利だけではない。日々の振る舞い、チームメイトとの関わり方、そしてプロフェッショナルとしての基準である。チーム文化における貢献について、前川GMに聞いた。
「プレー以前に、クラブハウスに来たときの振る舞いですよね。まず人と話すこと。彼らはよく『コネクト』という言葉を使っていましたけど、人とのつながり、コネクションを大切にするカルチャーです。一人で好き勝手にやるのではなく、周りとつながり、周りと一緒に何かを作っていく。そういう文化を、あの3人は残してくれたと思います。だからこそ、その部分を次の選手たち、特に若い選手たちには、さらに良いものにしていってほしいと思います」
プレーだけではなく、日々の振る舞いによってチームに文化を残していった3人。その存在を、フランHCは「チーム文化の建築家」と表現する。
「行動、スタンダード、プレースタイル、環境作り。そういったすべての部分で、私たちは毎週、どうすれば1%でも成長できるか、どうすればもっと良くなれるかを話し合ってきました。常に向上し続けることが、私たちのフォーカスでした。
ハル(立川理道)、(バーナード)フォーリー、ラピース、DB(デーヴィッド・ブルブリング)……、イッペーもその輪の中にいました。彼らはみんな、その中心にいた選手たちです。彼らがチームに与えた影響は本当に大きかった。なぜなら、彼らは自分の姿でチームをリードしてくれるからです。そして、課題に対して解決策を持ってきてくれる。プレッシャーのかかる場面で、どうすれば勝てるのか、その道を見つけ出してくれる選手たちでした」
彼らはレガシーを残してくれた、とフランHCは言葉を続けた。3人の代わりになることは、誰にもできない。しかし、彼らが築いた文化を受け継ぎ、そこに新たな1%を積み重ねていくことはできる。
「若い選手たちも、それを理解しています。だからこそ、私たちは次の世代が育ってきていることを本当に楽しみにしています。(スタンドオフの)オシ(押川敦治)、キシ(岸岡智樹)はフォーリーから学んできました。(ロックの)ヴァンジー(デーヴィッド・ヴァンジーランド)やアキラ(アキラ・イエレミア)も、DBから多くのことを学んでいます。そうやって次の世代が成長している。だからこそ、新しいシーズンが楽しみです。本当にワクワクしています」
カテゴリー問題にどう向き合ったのか
これまで一つだったカテゴリーAは、A-1とA-2に分けられる。日本代表資格を持つ選手であっても、代表キャップ数など一定の条件を満たさなければA-2となり、チーム編成上の制限を受けることになる。それでも、「私たちの考え方の一つは『コントロールできることをコントロールする』ということ」だと、フランHCが大切にする原則は変わらない。
「私たちは、それをコントロールすることはできません。だからこそ計画を立て、選手たちとコミュニケーションを取り、リクルーティングも調整しました。そして、決勝は私たちにとって一つの『勝利』だったと思っています。私たちは新しい構成で戦いました。フィールドには8人の日本人選手がいました。若い日本人選手たちは、すでに2回目の決勝を経験し、リーグワンで3シーズンを戦ってきました。自分たちをどう位置づけ、準備していくかが大切なのです。
私たちはそれを分かっていました。このシーズンを通してローテーションを行い、選手層を成長させ、将来に向けたチーム作りも進めてきました。ただ同時に、目の前の試合に勝つことも考えていました。その中で選手たちが、試合に勝つ責任を持てるようにしてきました」
すべては、シーズンを通して取り組んできた「全員で勝つチーム作り」につながっている。その土台にあったのは、「透明性」だった。
「透明性とは、そのことについてしっかり話し合ってきたということです。私たちは恐れていませんでした。状況を理解し、議論し、選手たちともコミュニケーションを取ってきました。すべてをオープンにしていたのです。怖がったり、不満を抱いたり、それに抵抗するようなものではありませんでした。私たちは、その状況を受け入れました。自分たちではコントロールできないことだと分かっていたからです。
だからこそ、選手を成長させ、新しいチーム、新しい世代を作っていく。そのプロセスの中で、一歩先に進めるように準備してきました」
その準備は、カテゴリー変更が決まってから始まったものではない。数年をかけて積み重ねてきたチーム作りの結果でもあった。
「マエカワさん、そして前GMのイシカワ(石川充)さんが、素晴らしい若手日本人選手をリクルートしてきてくれました。私たちは、そのプロセスやシステムに入ってきた選手たち一人ひとりにチャンスを与えてきました。チーム作りにおいて、若い選手に十分な力があるなら抜擢し、責任を与え、プレーさせる。それは常に私たちの考えの中にありました。
それができたのは、選手をローテーションすることを恐れず、若い選手たちが責任を持ってパフォーマンスしてくれると信じていたからです。これは今年だけのことではありません。ここ数年続けてきたプロセスです。若い選手を育て、チャンスを与える。力があれば、年齢は関係ありません」
その考え方は、チーム編成を担う前川GMとも共有されていた。変わるルールの中で何を失うかではなく、これから何を作っていくか。視線は常に、その先へ向けられていた。前川GMはこう語る。
「基本的なところは、そんなに変わらないと思っています。カテゴリーに関係なく、チームに必要な選手であれば残ってほしいですし、本人もこのチームに残りたいと思ってくれれば残ってくれる。そこの考え方は変わりません。だから、この変更がものすごく大きな問題なのかと言われれば、そうではないと思っています。
決められたルールや制度作りの部分は、自分たちではコントロールできないところもあります。だからこそ、リーグが決めたことに対して、自分たちがどう対応していけるか。そこを考えてやっていきたいと思っています」
何のために、何を積み上げるのか。そこが明確だからこそ、チームは迷わなかった。このシーズンは、未来を見据えて積み重ねてきたものが、確かな形となって表れた一年だったと言えるのかもしれない。(つづく)
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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