【FC町田ゼルビア】~THIS IS MY GAME~木村日凪子さん(運営部)
FC町田ゼルビアとの出会いはひょんなことがキッカケだった。大学のバスケットボール部でプレーに熱中する傍ら、サッカー好きの家族の影響で一緒にさまざまなスタジアムに足を運んで試合観戦をする日々。自身が運動が好きで体育会の部活に所属していることもあり、「将来はスポーツ業界で働きたい」という漠然とした思いはあった。ただし、当時大学生の彼女には、具体的にどういった関わり方ができるのか、ハッキリとしたものは見えていなかった。
「どちらかと言ったらマネージャーや選手のリハビリをサポートするトレーナーなどを考えていたので、大学を卒業したらスポーツの専門学校に行って学ぼうかなとも思っていました」(木村)。
FC町田ゼルビアのホームゲームにも行ったことはあったが、特に応援しているわけではなかった。だが、大学3年になった10月、一つのSNSが目に留まった。FC町田ゼルビアの学生スタッフ募集だ。
「『町田GIONスタジアム』に行った時に“天空の城”というブランディングをしていて、『面白いクラブがあるんだな』と頭の中に残っていました。そうしたら、たまたまXで募集していて『スポーツの関わり方は、こういう事業側の面もあるんだ』と知り、応募しましたね」
スタジアムの立地が決して恵まれているとは言えない町田だが、丘の上に位置する場所を逆手にとって“天空の城”との愛称をつけてホームゲームを運営している。そうした試合業務も含めて、プロクラブにはチームや選手たちを支えるフロント職員がいる。SNSに流れてきた募集で初めてその存在を知った木村は、さっそく応募。面接を経て採用が決まり、翌年の2月からFC町田ゼルビアで働くことになった。
実際に働くと、フロント業務は実に魅力的だった。大学4年では授業に加えてバスケットボール部のキャプテンを務めるなど多忙なこともあり、働ける頻度は週に1度の内勤と部活が休みの日に行けるホームゲームのみ。業務は現在に繋がる運営部のサポート。試合日にはスタジアムの場外にあるイベント広場で、社員とともに汗を流した。イメージとは違った業務だったが、逆にそれが楽しかった。
「接客やグッズを作成したり、キラキラな一面のイメージしかなかったのですが、実際は重い物を運んだりもするし、準備など泥臭いこともいっぱいある。それが試合の場でお客さんがいる中で形となり、笑顔などが見られる仕事は自分にとってすごく魅力を感じました。また、クラブの社員さんがすごく良い方ばかりだったので、『この方たちと働きたい』とずっと思いながら学生スタッフの活動をしていました」
仕事を通じてFC町田ゼルビアの魅力にどんどん引き込まれていった木村。自らの性格を「人見知り」と分析するが、仕事に対する姿勢をクラブも見逃さなかった。新卒採用の候補者として木村の名が挙がり、彼女は社内にある複数の部署の研修に参加。真面目でタフに一生懸命働く姿が評価され、2024年4月から正社員としての採用が決まった。
「一番の志望はFC町田ゼルビアでした。他の企業からも内定はいただいたのですが、その内定を断っていたこともあり、(ゼルビアの採用が決まった時は)嬉しかったと同時に安心しましたね(笑)」
社員ともなると、仕事を任される範囲が広くなることはもちろん、精神的な部分でも自立が求められる。「仕事に対する責任と自覚は学生スタッフの時より感じながら、より自分の任された仕事に対して責任を持ってやっています」(木村)。業務も社内に限らず社外とも関わるなど、実に多忙だ。
「学生の時はどちらかと言うと、POPを作成したり、細かい業務が多かったのですが、社員になってからは協力会社や他部署などと調整をさせてもらっています。業務はスタジアムの場外を担当しているので、ホームゲームの場外のレイアウト作成、備品の調整、手配。また、場外の装飾のところで案内板の設置場所やデザインを決めたり。場外の全般的な部分です。あとは、場外、場内を含めたイベントの取りまとめをし、それを資料にまとめること。ボランティアスタッフのやり取りもしていますね」
自身の課題にも真摯に取り組んでいる。無から有を作り出す「『0→1(ゼロイチ)』がすごく苦手」という彼女だが、来場者のことを考えて新しい試みにもチャレンジした。スタジアムから出ている町田駅行きのシャトルバス乗り場に行く導線が気になっていた。
「乗り場に行くまでがメチャクチャ暗くて、街灯もついていない道でした。何か少しでも良い状態で帰れるようにできたらなということで、当時の運営部の皆さんといろいろ相談させていただいた中で、150mぐらい真っ暗だった道に光をつけたんです。青いチューブライトやイルミネーションで使うようなLEDライトをつけて『青いライトロード』を作ったことが自分の中でゼロイチを生み出した初めての経験でした。Xなどでそれをアップしてくれたファン・サポーターの方もいらっしゃったので、それは自分にとって良い経験でした」
今年で入社3年目。社会人として充実した日々を送り、何より運営部に誇りを持って業務にあたっている。
「ホームゲームを作り上げる中心の部署だと思います。いろんな協力会社や他部署との連携などを担った上で、ホームゲームを作る。お客さんの『楽しかった』や『ありがとう』といった声を直接肌で感じられますし、そこはすごく魅力を感じますね」
では、木村にとって『町田GIONスタジアム』、そして『FC町田ゼルビア』の魅力はどこにあるのだろうか。
「自分たちもアクセスなど課題を感じている中で、野津田はすごく温かい場所だと感じています。自分たちクラブスタッフが作り出す雰囲気もそうですが、来場者が芝生の広場でボールを蹴って遊んだり、ピクニックみたいにレジャーシートを広げて遊んだり、そういうところは緑豊かな『町田GIONスタジアム』ならではだと思っています。ここにはここにしか出せない雰囲気があるのも魅力ですね。
FC町田ゼルビアは、スタッフがすごく良い人たちばかり。明るくて、かつゼルビアをいろんなところに広めようと熱い思いを持っている人が多いです。フロントだけでなく、トップチームのスタッフやアカデミー、そしてボランティアスタッフの皆さんなど、いろんな人たちがゼルビアを通してチーム一丸となってやっていこうというのが伝わるし、感じています。それは、ファン・サポーターの長年の方もそうですし、ライト層の方も、分け隔てなくみんなでゼルビアを応援しようというのが伝わってくる。初めての人でも行きやすい空気になっているのが魅力だと思います」
プロサッカークラブの試合は“興行”である以上、チームの結果は重要な要素だ。選手たちも目の前の試合で勝つために人生を懸けて挑んでいる。そしてファン・サポーターは応援するチームの勝利を願って、スタジアムに足を運ぶ。その人たちをピッチ以外で“おもてなし”するのが木村の大きな仕事だ。試合日の来場者の往来をスムーズにし、スタジアム周辺のイベント会場などでアクシデントがないように目を見張る。チームの勝利でファン・サポーターが笑顔になってもらうのはもちろんだが、ピッチ外でも満足してもらうことが彼女にとって一つの成果であり、喜びだ。
「FC町田ゼルビアは私にとって癒しの空間のような感じですね。職場内はみんな和気あいあいとやっているので、そこが一つ落ち着く空間にもなっています。ホームゲームでは、親子連れや老若男女さまざまな方がいる中で、みなさんそれぞれ笑顔で試合観戦やその前のイベントを楽しんでいる姿を見るだけで嬉しい気持ちになります。それが自分の生きる糧ではないですが、癒しとして繋がっています」
ピッチの外から、スタジアムの“体験”を支える存在として。木村日凪子はこれからも誰かの記憶に残るホームゲームをつくっていく。
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