【安田記念】「日曜は休みだな(笑)」から劇的ドラマ、急きょテン乗り武豊騎手が魅せたシックスペンス激変V
シックスペンスは今回の勝利で通算13戦6勝(うち地方1戦0勝)、重賞は4勝目。武豊騎手は1990年オグリキャップ、95年ハートレイク、2009年ウオッカ以来となる安田記念4勝目となり、57歳2カ月24日での勝利はJRA・GIレース最年長記録を更新。また、田中博康調教師は同レース初勝利となった。
なお、クビ差の2着には津村明秀騎手騎乗の7番人気ワールズエンド(牡5=栗東・池添学厩舎)、横山武史騎手騎乗の1番人気ガイアフォース(牡7=栗東・杉山晴紀厩舎)が同着で入った。
騎乗馬回避から一転、舞い込んだ依頼
「依頼をいただいて嬉しかったですね。イメージ的にチャンスのある馬だなとすぐに思ったので、今日に向けてできる準備をしてきました」
何度も騎乗経験のあるクリストフ・ルメール騎手からシックスペンスの特徴をリサーチし、また、レース前には田中調教師とも打ち合わせを重ねて臨んだレース。序盤は二の脚を利かせて先行すると、やや行きたがる相棒をなだめつつ、逃げたワールズエンドを見る形の2番手にスッと収まった。
「調教師とは前めの位置でしぶとさを生かすレースをしようという話をしていました。行く馬がいなければ逃げてもいいくらいの気持ちでしたし、1頭行ってくれたので、ちょうど2番手でいい形になったなと思っていました」
前半600mが34秒5で、半マイルが46秒1。良馬場とはいえ、今週の水曜には台風の影響でまとまった雨が降り、この日も小雨がぱらつく天気だった。加えて、開催が進んだことで馬場コンディションもやや荒れてきた状態だったことを考えれば、このペースはだいたい平均といったところか。とすれば、この2番手は陣営と練ってきたプラン通りの絶好位であり、また、やや時計のかかる馬場状態も「すごく切れるというよりはしぶといイメージだったので、いい条件だなと思っていました」と武豊騎手は振り返っている。
計ったような差し切り「最後の一完歩で前に出た」
「良い手応えで直線に向けたのですが、前の馬も止まる気配がなかったですし、後ろと横からも他の馬が来ていましたから、何とか頑張ってくれという気持ちでした。最後の一完歩で前に出たという感じだったので、最後まで分からなかったですね」
最後の50mは5頭が横並びになりそうになるほどの大接戦。そこからゴールの一歩手前で計ったようにクビ一つ抜け出したのが武豊騎手とシックスペンス。今年の東京競馬場でのGIレースはとにかく接戦が多かったが、そんな春の府中決戦を象徴するようなフィナーレを主演・武豊が飾ったのだ。やはり“絵になる男”だ。
「ユタカさんと一緒に勝てたことが本当に嬉しい」
そう喜びを噛みしめたのは田中調教師だ。今年3月で定年引退した国枝栄元調教師(現厩務員)からシックスペンスを引き継いだ当初は手探り状態。転厩初戦として臨んだ前走のマイラーズCは納得のいく調整を施せず、「こんな状態で戦えるのかと、正直、自信もなかった」と振り返る。
だが、そこからシックスペンスに合っている調教はどういったものかを模索し、またブリンカーを装着してはどうかというスタッフの意見を取り入れるなど、安田記念に向けてあらゆる可能性を追求してきた。その答えが勝利という最高の形で表れたことに、40歳のトレーナーは胸をなでおろした。
「ただやってきただけではなく、マイラーズCからここまで色々と考えてやってきた課程も含めて、喜ばしい一戦となりました。今回の勝利はとても大きな1勝です。国枝先生が大事に作ってくださって、そのベースの上にうちの厩舎の味付けができて、新たな取り組みの中で勝てたことは本当に嬉しいのひと言ですね」
シックスペンスはこの勝利をさらなる飛躍のきっかけに
「調教師になってからの彼を見ていて、本当に調教師が向いていたんだろうなと思いましたし、開業してからすぐにどんどんと結果を出していたので、いい調教師だなと見ていました。まあ、あんまり乗せてくれなかったので『あれ?』と思っていたんですけど、ここ一番で乗せてくれて、いい後輩を持ちましたね(笑)」
一方、シックスペンスの今後にかける期待も大きい。もともとが高い能力を持っていた馬だ。一度はスランプを打開すべくダートにも挑戦したが、今回の勝利がさらなる飛躍のきっかけになると、ジョッキーは信じている。
「芝のマイルはぴったりじゃないかなと思いますね。シックスペンス自身、久しぶりの勝利ですし、今日をきかっけにまた大きな舞台でさらに活躍してくれたら嬉しいですね」
紆余曲折を経て芝マイルのGIタイトルをつかんだシックスペンス、田中厩舎の取り組み、そして騎乗馬回避から急きょのテン乗りで結果を出した武豊騎手――当初はメンバーがやや寂しいかと思われた安田記念だったが、終わってみれば2026年春の東京5週連続GIの最後を締めくくるにふさわしい、競馬の面白さが凝縮されたレースだった。(取材・文:森永淳洋)
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