【週刊グランドスラム358】転籍の山﨑慎ノ介が一発で勢いをつけ、沖縄電力が2年ぶりの都市対抗出場を決める
日産自動車九州との一回戦は、2対2の同点で迎えた7回裏二死走者なしの場面で、途中出場の山﨑慎ノ介が勝ち越しソロ本塁打を放って3対2で勝利を収めた。山﨑は昨年まで、信越硬式野球クラブに在籍していた。主将を担い、四番として昨夏の都市対抗にも出場している。
その後、社業中心のクラブチームから、野球に専念したいと昨秋にオイシックス新潟のトライアウトに臨んだ。その直後に、沖縄電力から誘いを受ける。巨人へ入団した小濱佑斗の穴を埋める即戦力として求められたのだ。
「もしトライアウトに落ちたら、野球を辞めようと考えていました。結果を待たずに沖電へ入社する意思を固めたのですが、結局、合格者だけに来るはずの連絡はもらえませんでした。そんなタイミングで声をかけていただいたことに、縁を感じます」
夢を追うことを快諾して送り出してくれた、信越硬式野球クラブの箱山和宏総監督に報告すると、「野球ができる場所があってよかったな」と、温かい言葉をかけてもらった。
沖縄出身の山﨑には、新しい環境に馴染むための時間はそれほど必要なかった。
「明るくて、いい意味で気を遣わずにいられるチーム。スタッフも含め、全員が沖縄県出身ということもあり、独特の空気感が漂っていて、とてもやりやすい。田場(亮平)さんをはじめ、みんなにいじってもらって、ムード―メーカーのような、信越とは違うキャラクターにしてもらっています」
少し照れ臭そうに話しながらも、楽しくプレーできていることが伝わってくる。そして、一回戦のホームランについては、こう振り返る。
「途中出場で初めての打席だったので、思い切りいくだけだと。しっかりとらえることができ、結果を出せてよかった。春先にスタメンが固定されてきた時、選ばれずに悔しい気持ちを抱えながらも、限られた打席の中で結果を残すことを大切に取り組んできました」
『ラブ&スマイル』で勝ち取った17年ぶりの九州第一代表
そうして迎えた第一代表決定戦、Honda熊本に先制を許すも、3回表に無死満塁の好機を築くと、嘉数が押し出し四球を選んで反撃開始。続く田場の左前タイムリーで同点に追いつき、山城裕飛の一ゴロの間に逆転する。だが、その裏にHonda熊本は一死満塁から森 翔太郎のタイムリー二塁打で再び1点をリードする。それでも、沖縄電力は食らいつく。4回表には、7本の長短打を放って6点を挙げて再逆転。4回、5回に1点ずつを加えて詰め寄るHonda熊本の攻撃を継投で振り切り、11対6で熱戦を制した。野原監督はこう話す。
「沖縄県一次予選では、『つなぐ』というテーマを掲げました。心をつなぎ、プレーをつなぐ。そして、九州二次予選は『スマイル』です。笑顔でリラックスすると、いいプレーが生まれますからね。さらに、練習時に(田場)亮平がみんなにこう言ったんです。『野球ができる場所に立てていることに感謝して、野球愛を忘れずにやろう』と。それから、『ラブ&スマイル』をテーマに、28名の総力戦で挑みました。守りに入らず、常にチャレンジャーの気持ちで前向きにいこうと声をかけてきた。それが体現できたことが、一番嬉しいです」
今年、沖縄電力の選手たちが本大会出場へかける思いは、ひと際強かった。その理由は、これまでチームを牽引してきた田場の10年連続出場がかかっていたからだ。補強も含めて都市対抗でプレーしてきた田場の表彰は、沖縄電力のユニフォームを着て、全員で祝福したい。その願いが見事に叶った。そんな田場は、山﨑をつかまえて「慎ノ介は2年連続、自チームで出場するんですよ。凄いですよね」と笑う。
もちろん、東京ドームに立つことがゴールではない。次なる目標は、沖縄県勢初白星だ。
取材・文=古江美奈子
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