SAMURAI BLUE(日本代表)のフィジカルコーチに聞く暑熱順化と熱中症対策
FIFAワールドカップ2026を目前に控える中、SAMURAI BLUE(日本代表)の松本良一フィジカルコーチに、熱中症対策やSAMURAI BLUEでの取り組み、そしてワールドカップに向けた暑熱対策について聞きました。
※このインタビューは2026年4月21日に実施しました。
しっかりと時間をかけて「暑熱順化」を
松本 猛暑といわれる7~8月を前に、すでに暑くなってきましたね。熱中症対策では、暑い時期に備えて「暑熱順化」が必要になりますが、それを早めて行わなければならない時代になってきたと感じます。
――暑熱順化にはどのような方法がありますか。
松本 徐々に体を暑さに慣れさせるため、基本は2週間くらい時間をかけて行います。方法としては、普段より少し厚着をして運動したり、入浴で汗をかいたりすることが有効です。なお、それらを行う前提として、普段の食事や睡眠をしっかり取り、体調を整えるとともに、ベースの体力を上げておくことも大事です。
――SAMURAI BLUEは暑い地域で戦うことも多いですが、どういった対応をしていますか。
松本 選手たちは居住する国が異なりますので、普段の環境と代表チームで活動する環境の気温や湿度の差が大きければ、事前に重ね着をしてのジョギングや入浴、サウナなどで、個別に「暑熱順化」をしてもらうように伝えています。
そして、活動が始まってからは、暑い環境であえて練習負荷を上げ、短期間で体を暑さに慣らし、コンディションを整えながら試合に向けて準備をします。ただこの方法は、トップアスリートだからこそできることです。短い準備期間の中でも“勝つため”に必要なことだと思って取り組んでいます。皆さんには、気象情報をチェックしながら、しっかりと時間をかけて「暑熱順化」を行ってもらいたいと思います。
水分補給は「喉が渇く前」に
松本 水分を取ることが最も大切です。喉の渇きを感じた時には、すでに脱水が始まっているとも言われます。そうなる前に、こまめな水分補給を心掛けましょう。サッカー選手の場合、トレーニングや試合中、その後にも水分を取ると思いますが、トレーニングや試合の前にも、水やスポーツドリンクでしっかりと水分補給しておくことが大事です。水分補給は、ぜひ習慣化してほしいですね。
――水分補給の目安はありますか。
松本 人それぞれ、その日の体調によっても変わってきますので、いろいろと試しながら自分に合った方法を見つけてほしいと思います。ただ、その指標になるのが体重の変化です。体重が減っていたら、それは水分や栄養が不足していると考えられます。毎日体重をチェックすることで、体の状態や変化にも気付きやすくなります。
日本代表チームでも、体重や心拍数、睡眠のモニタリングなどの体調チェック、またGPSを装着して走行距離やスプリントなどのデータを蓄積して対策を練っています。暑熱対策でいうと心拍数の計測も重要な指標で、暑さに慣れていくと心拍数は徐々に下がり、その後は一定になります。これが良いパフォーマンスにつながる状態です。心拍数を毎日計測していれば、今どういう状態なのかを確認できます。
松本 水分を摂取することは体を冷やすことにもつながりますが、直接体を冷やすことも大事です。日本代表チームでは、バケツに入れた氷水で手のひらを冷やしたり、アイスベストを着用したりしています。また、エアコンの効いた部屋に入れる環境では、サーキュレーターで風を当てるなどの工夫もしています。それによって選手のストレスを軽減させ、1試合をしっかり走り切れるようにしています。全てを導入するのは難しいと思いますが、チームや環境に合った形でいろいろと取り入れて実践してほしいですね。
――SAMURAI BLUEの選手たちは暑熱対策への意識も高いと感じますか。
松本 育成年代の頃から、自己管理を含めてあらゆることに取り組んできていますので、自分にとって何が有効なのかをよく把握しています。われわれスタッフとしては、選手を支えるために、トレーニングや試合で水分補給を促すこと、また補食でエネルギーや栄養を補えるようにしたり、体調のチェックをしたりなども行っています。
ただ、代表選手たちも、基本的に皆さんとやっていることは同じです。水分をしっかり取り、食事で栄養を摂取して、疲労回復やコンディションを整えるためにお風呂に入って、質の高い睡眠を心掛ける。サッカー選手に限らず大事なことですので、意識して取り組んでほしいと思います。
暑熱環境下でFIFAワールドカップを戦う
松本 私自身、各会場を数年かけて視察しましたが、カナダ以外はどの会場も本当に暑いです。また試合時間もバラバラで、トレーニングの時間設定も工夫しなければいけません。さらに、アメリカではストーム(強風や激しい雷雨など)の時期にも入るため、その対策も必要です。日中は日差しも強く、それを浴び続けると肌がやけどのような状態になり、体内の水分が奪われる要因になるので気を付ける必要があります。
事前のキャンプはメキシコのモンテレイで行いますが、そこが一番暑いと予想されますので、一気に体を暑さに慣らし、最初の適応段階をつくろうと。そして、ベースキャンプ地のアメリカのナッシュビルに入る予定です。
――大会規模が大きくなり、移動も多いことでコンディション調整が大事になりますね。
松本 3カ国開催ということで、移動も踏まえてリカバリーが大事な要素になると思います。まずはグループステージでの戦いに焦点を当てつつ、ノックアウトステージ以降を含めたシミュレーションも全て行っています。また各地の過去の気象データも収集して予測を立てています。かなり過酷な戦いになることが予想されますが、あらゆることを想定しながらしっかり準備して挑みたいと考えています。
――最後にファン・サポーターにメッセージをお願いします。
松本 今回のワールドカップは、コンディショニング面においてもこれまでとは異なる難しさがありますが、それも大きなやりがいだと感じています。われわれスタッフの持っている力を全て出し切り、ピッチに立つ選手たちをしっかりサポートし、最高の結果を届けたいと考えています。応援よろしくお願いします!
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