部活動の指導者不足をチャンスに変える「海陽モデル」とは 徳島県海陽町が大阪体育大学とICT連携 学生が遠隔で中学バレー、バスケ部指導
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町長「地方でも、都会と同じレベルの指導を子どもたちに提供したい」
海陽町には海陽、宍喰の2中学がある。宍喰中学の生徒はバスで海陽中学の体育館に行き、バレーボール、バスケットボールの合同練習をしているが、部活動の指導者不足は大きな課題だった。教員は教科指導で高い専門性を持っていても部活動では専門ではない競技を担当することも多く、保護者から厳しい声が出ることもあったという。一方で子どもたちには「もっと上達したい」「専門的なことを学びたい」という思いがあった。
町長の意向を受けて指導スキルがある大学との連携を模索し、地元の海部高校に務める卒業生を通じて、大阪体育大学に協力を呼びかけた。
先駆的な学生によるICT指導を進める大阪体育大学と連携
4月に遠隔指導スタート
スポーツ科学部3年の陽本千咲(ようもと・ちさき)さん(大阪・城南学園高校)は大阪から現地をオンラインで結び、基本的なパスの他、アタック、サーブ練習を指導。練習の映像を見ながら、サーブ練習では「目印にしているコーンの位置を変えたら」などと生徒にアドバイスした。
バスケットボールでは、園田大翔(ひろと)さん(体育学部4年、兵庫・三田松聖高校)、冨士本美咲さん(体育学部4年、大阪・堺西高校)が生徒を指導した。遠隔指導の模様は地元のメディアで大きく紹介された。
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「ICT指導は地方の子どもにとって『どこでもドア』」
また、指導にあたった陽本さんはICT機器の利点として、遠隔での指導以上に生徒たちの主体性向上につながる点を挙げる。「タブレットを見て生徒が自分で課題を見つけ、『この課題どうする?』と生徒たち同士で話し合っている。ICTを活用することで課題解決力が身に付くようになると思う」と話す。
また、今後、同町での遠隔指導に携わる予定の大城里緒さん(教育学部1年、沖縄・小禄高校)も同席した。
海陽町の三浦町長は「海陽モデル」の完成形として「部活動だけでなく、すべての教育で都市部に負けないような教育環境を作りたい」としている。三浦教育長は「小学校の体育の授業の進め方について教員が指導を受けたり、生涯スポーツの分野でも指導を受けたりするなど、大阪体育大学と連携を深めることができれば」と話している。
三浦教育長に聞いた。
三浦良教育長「教員の学び、生涯スポーツ。『海陽モデル』をさらに拡大できたら」
中学校の部活動では、海陽中でも指導者不足が大きな課題になっています。教員は教科指導では高い専門性を持っていますが、部活動については必ずしも専門ではない競技を担当することも多く、十分な指導が難しい現状があります。そうした中で、保護者から厳しい声をいただくこともあります。
一方で、子どもたちは「もっと上達したい」「専門的なことを学びたい」という思いを持っています。そうした気持ちに応えるためにも、専門的な知識や技術を持った方から指導を受けられる環境を整えていく必要があると考えていました。
その方法を模索する中で、「大学と連携できれば理想的ではないか」と考えました。ただ、海陽町は地理的に離れており、徳島県内の大学とも距離があります。そんな中、専門的なスキルを持つ体育大学と連携できないかと考え、海部高校で勤務する卒業生を通じて大阪体育大学に相談させていただきました。
実際に連携をスタートしてみて、まだ十分に取り組みが進んでいる段階ではありませんが、今後、子どもたちへの指導面で大きな効果が期待できると感じています。子どもたちや保護者からも期待の声が上がっており、これからさらに連携を広げていきたいと考えています。
――三浦茂貴町長の方針は
町長は、部活動のみならずあらゆる教育分野において、都市部に負けない教育環境の整備を重点施策に掲げています。現在、予算面を含めた強力な支援のもと、具体的な施策を順次実行に移しているところです。
――部活動の地域展開は部活動には逆風だが、新しい試みを模索するという観点ではチャンスと考えるか
チャンスだと思います。プラス面は、教員の負担軽減。さらに子どもたちが地域へ帰ることで地域の方々との関係性も生まれます。もっと専門的に指導者も入れていくので、専門的な指導が受けられるメリットがあると感じています。
――地方から見て、ICT指導に可能性を感じるか
感じます。遠隔指導はコロナ禍を機に広がりました。ICTは部活動で指導を受ける子どもたちにとって指導者との距離を一瞬で縮め、まるで「どこでもドア」のようです。過疎の地でも専門的な指導を受ける可能性が広がると思います。
――2日間の視察の目的は
部活動の地域展開を推進するにあたり、先進地である芦屋市へ視察研修を行いました。中尾先生のご尽力により、現場のリアルな課題や実践的なノウハウを深く学ぶ機会となりました。視察を通じて、指導者の確保が都会も地方も同じ課題であることを改めて確認しました。この現状を踏まえ、今後は専門的なスキルを持つ大阪体育大学と連携を深めることで、本町の実情に即した、質の高い教育環境の整備に尽力していきたいと考えています。
成功のカギは学校内での協力体制の構築
ICTの活用は、子どもたちのために実施する町の方針です。方向性をしっかり学校の教員に示していきます。
――「海陽モデル」をどう発展させていくか
私は大阪体育大学との連携は、部活動だけでなくいろいろな分野で進めていきたい。例えば、中学校には保健体育専門の教員がいるが、小学校には体育の専門教員は少ない。小学校での実技指導もオンラインを活用できないか。教員が体育の授業でどう指導したらいいのか、どのような声掛けを子どもにしていったらいいのか。教員はそんなことを学んでいかなければいけない。また、海陽町は高齢化が進むが、お年寄りの方々は運動をしたいという気持ちが強い。生涯スポーツでも大学と連携することができたら素晴らしいと考えています。
陽本千咲さん(スポーツ科学部3年)「タブレット見てみんなで課題を話し合っている。ICTは子どもの課題解決力を養う」
バレーボール部に新しく1年生が増えて、面白いチームになりそうだなと思いました。半面、この子たちを伸ばすために自分は何ができるのか考えながら指導していきたいと思います。
――ICT指導の可能性についてどう考えるか
とても可能性を感じます。タブレットを見て子どもたちが自分で課題を見つけ、『この課題どうする?』と生徒たち同士で話し合っています。ICTを通じて子どもたちは課題解決力が身に付くようになると思います。
――将来の目標は
教員はもちろんですが、子どもと関わる仕事に就きたいと考えています。
――部活動指導は自分の成長のためにプラスになっているか
海陽町のほか、昨年1月から大阪府藤井寺市の中学校で女子バレーボール部を指導しています。部活動指導を通して、自分自身、子どもにかかわる仕事に就きたいという夢が固まりました。子どもは一人一人いろいろな性格やタイプの子がいて、1人1人に合わせた指導や対応ができるようになりたいと考えています。その意味では、ICTを通じて海陽町など多くの現場を体験でき、いろいろな子どもと係ることは自分にとってすごくプラスだと思います。
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