【日本ダービー】「デアリングタクト以上に興奮」嬉し涙の松山騎手、ロブチェンと目指す“もう一つの三冠”
ロブチェンは今回の勝利でJRA通算5戦4勝。昨年暮れのGIホープフルSと合わせてGIは3勝目。松山騎手はデビュー18年目、杉山晴紀調教師は開業11年目でともに嬉しいダービー初制覇となった。
なお、アタマ差の2着にはクリストフ・ルメール騎手騎乗の4番人気パントルナイーフ(牡3=美浦・木村哲也厩舎)さらに3/4馬身差の3着には川田将雅騎手騎乗の11番人気バステール(牡3=栗東・斉藤崇史厩舎)が入った。
「これがダービーなのかな。違った景色が見えました」
「悔しかったり、悲しかったりすると涙が出るのですが、自分は嬉しいと笑顔になるタイプなんです。だから、嬉しくて泣くことは本当にこれまでなかった。デアリングタクトで三冠を取った時も少し涙が出たかもしれませんが、だからそれ以上に興奮したんだなと思います。なので、これがダービーなのかなと、自分の中で違った景色が見えました」
1番人気の皐月賞馬ロブチェンで挑んだ2026年のダービー。確かにプレッシャーはあった。しかし、同じく皐月賞馬アルアインで臨みながらも「ダービーの雰囲気に吞まれてしまった」という9年前とは違う。愛馬とともに全ての力を出し切り、3歳の頂点へと駆け上がった。
序盤は思ったよりも後ろ、それでも「馬の力を信じて」
「スタートは五分に出たのですが、初速がつきにくい馬なので外枠の分、思ったよりも中団になってしまいました。本当はもう1列前で競馬をしたいと思っていました。ただ、17番ですので、そのポジションを取りに行こうと思うと、もう1速、2速上げていかないといけない。でも、それは違うと思ったんです。リズムを大事に、馬の力を信じて乗りました」
一方、前半の主導権を握ったのはマイケル・ディー騎手のメイショウハチコウで、2番手から津村明秀騎手の皐月賞2着リアライズシリウスが続く展開。だが、最初の1000mが60秒7とペースが遅く、たまらずリアライズシリウスが先頭に立ち、さらに最後方にいた川田騎手のバステールが一気に3番手まで上がっていく。ゆったりとした流れから一転、向こう正面からレースは慌ただしく変化していったが、ロブチェンと松山騎手は動かなかった。
「僕も一緒に動こうかなとも思いましたが、ここで少しペースが上がった感じがしたので、このリズムなら問題ないなと思いました」
共同通信杯3着がこの大一番で生きた
「追い出した時の反応も良かったですし、そこは共同通信杯での負けが生きているなと感じた競馬でした。最後の最後で手前を替えたところでどうかなと思ったのですが、差し切ってくれて素晴らしかったと思います」
キャリア唯一の敗戦となっている2走前のGIII共同通信杯の3着。馬の気持ちが入りすぎてスタートが良すぎたことが終始チグハグな競馬となってしまい、ロブチェンの力を出し切れなかった。この敗戦がジョッキー、厩舎陣営にとって大きな教訓となり、糧となって皐月賞、ダービーの勝利へとつながったと、松山騎手は語る。
「あの時の負けが皐月賞にも生きましたし、そのことを踏まえてロブチェンの持ち味、心肺機能の強さを再認識できましたね」
加えて、ロブチェン自身の成長も見逃せない。今回、パドックからゲートに入るまで初めてメンコを着用したが、これがズバリと当たり、「もう少し気合が乗ってもいいと思うぐらい」(杉山調教師)に落ち着いていた。それでいて、本当に気合が足りないわけではなく、返し馬でキャンターに入ると脚取りはしっかり。「皐月賞では少し緩いと感じましたが、今回はそんなところもなく、皐月賞よりもいいな」と、ジョッキーはここで自信を深めたという。
松山騎手と杉山調教師、牡馬でも三冠なるか
「どんな競馬でもできるのがこの馬の持ち味。競馬は毎レースで流れが違うので、そこでジョッキーの思った通りにポジショニングができることがこの馬の強さだと思います。脚質的に逃げた方が強いのか、後ろから行った方が強いのかというのは一概に言えないと思いますね」
素の能力の高さというのはもちろんあるだろうが、それに加えてこの自在性があれば、どんな条件でもトップレベルの力を発揮し続けるだろう。そして、このダービーがロブチェンの最高到達点ではないことは、松山騎手が力強く約束してくれている。
「まだ緩さはあるのですが、だいぶしっかりしてきたなと今日は感じました。まだまだ成長してくれると思いますし、これからもう一段階、二段階上がってくれると思うので、夏を越して、これからが楽しみだなと思います」
松山騎手と杉山調教師と言えば、真っ先に思い浮かぶのは2020年に牝馬三冠を達成したデアリングタクトだろう。同じコンビで牡馬三冠も達成となれば、前人未到の話どころではない偉業となる。ジョッキーとトレーナー、そしてロブチェンが目指している頂上は、まだまだはるか高みにあるに違いない。(取材・文:森永淳洋)
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