【週刊グランドスラム357】新リードオフ・山路将太郎が引っ張る打線で、パナソニックが都市対抗近畿二次予選に臨む
東北大会のリーグ戦は、北海道ガスに0対4、JR東日本東北に1対9で敗れた。それでも、第3戦ではJFE東日本に2対0で勝利を挙げる。井上貴晴監督は試合後、「選手たちに元気がなく、気持ちが落ちている雰囲気があったので、自分たちがやるべきことをもう一度、確認してから戦った。1回表からそれを体現してくれたので、チームとしては非常にいい1勝になったと思います」と手応えを口にした。
その1回表は、リードオフの山路将太郎が初球をとらえて右前安打で出塁。すかさず二盗を決めると、二死二塁から四番の松浦隆己がセンターへ弾き返して先制した。
「ガンガン打てるようなチームではないので、走者が出て、足を使って、次の打者につなぐ」
これこそが、井上監督が今春の就任時から口を酸っぱくして言い続けてきた攻撃だ。投げては、先発の定本拓真が7回を3安打無失点と好投。8回は本田峻也、9回は伊藤岳斗が無失点に抑え、リードを守り切った。
今季は、リードオフに定着した山路が打線の起爆剤になっている。井上監督が「彼が出塁すると雰囲気が変わる。彼の1球、1打席はチームにとっても大切」と大きな信頼を寄せるほどだ。山路自身も、「自分が初回から塁に出ることでチームは勢いづく。打って走ってというのが自分の持ち味なので、一番という打順は好き。何が何でも出塁する気持ちで打席に立っています」と強い自覚を胸に秘める。
鶴岡東高時代は甲子園で快音を響かせ、東北福祉大では2年秋に.423で最高打率賞を獲得。非凡な打撃センスの持ち主だが、社会人1年目の昨年は納得できる成績を残せなかった。そこで、今オフは打撃を「ガラッと変えた」という。重心を低く構えるフォームに変更し、打撃練習の際はボールにバットを当てにいくのではなく、しっかり振って「自分のスイングをする」よう心がけたという。
今年に入って一番を任されるようになると、京都大会で打率.533(15打数8安打)、1本塁打6打点をマークするなど進化を証明。文字通り打線を引っ張っている。高校以来というセカンドの守備も板についてきた。
井上貴晴監督が選手に伝えた「最終年に活動する意義」
それでも、「だからこそ、この一年、このチームで1試合でも多く野球ができるように勝ち進もう」とすぐに前を向いた。
「ショックもありますが、仕方のないこと。いつまでもくよくよするのではなく、気持ちを切り替えました。モチベーションが落ちたことはないです」
それが表向きの発言でないことは、今年の活躍ぶりを見れば一目瞭然だろう。
とはいえ、選手全員がすぐに現実を受け止めて同じ方向を見られたわけではない。ミーティングを重ね、「最終年に活動する意義」を選手間、スタッフ間で何度も話し合った。井上監督がその内容を明かす。
「休部が発表されて、野球を続ける、続けないという選択を含めて個人個人の思いが左右される局面でもありました。ただ、野球はチームスポーツなので、最後の一年を活動させてもらう者として、残るからには真剣にやろうという話をしました。面白おかしく、楽しく、肩を組んでではなく、鎬を削り、競争して、『いいチームだけど休部になってしまった』と惜しまれるような終わり方をしようと。そのメッセージをパナソニックだけでなく、他企業の方々がどう感じるかが大事だと思っています」
意思統一をしてからは、チームに活気が戻ってきた。JFE東日本戦の初回のような攻撃ができれば、勝ちパターンに持ち込めることは、今年の公式戦を戦う中で共通認識になった。あとは、その野球を大一番で披露するだけだ。
「個人的にはドキドキしますが、選手たちはそれを感じずに、パナソニックらしく元気よく、雰囲気よくプレーして、その姿を多くの方々に観てもらいたい。何人もが真剣に野球をやって、本気で喜んだり、悲しんだりするのがラストになるかもしれないと選手たちには伝えているので、彼らの底力に期待しつつ、まずは都市対抗予選を突破できるよう準備します」
井上監督は、そう言葉に力を込めた。
都市対抗近畿二次予選は、6月2日に大阪シティ信金スタジアムで幕を開ける。パナソニックの一回戦の相手はニチダイだ。「初戦から、気合いを入れてビシバシいきます」とは山路。都市対抗57回、日本選手権43回、計100回の全国出場を誇る社会人の名門は、最後にどんなメッセージを残してくれるのだろうか。
取材・文=川浪康太郎
次号は、都市対抗九州第一代表が決定した翌日にリリースします(順延がなければ6月5日です)
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