【GPシリーズ 木南記念 】村竹ラシッドが今季世界最高13秒05!! 諸田実咲が日本新など好記録続出 /大会レポート&コメント
男子110mハードルでは、昨年12秒台ハードラーの仲間入りを果たした村竹ラシッド選手(JAL)が、今季世界最高となる13秒05で快勝して2026年シーズンをスタート。女子棒高跳では、諸田実咲選手(アットホーム)が、アジア大会派遣設定記録でもある4m50をクリアして、自身の日本記録を更新しました。また、男子400mハードルではダイヤモンドアスリート Nextageの後藤大樹選手(洛南高校)が49秒34をマークして、自身が保持していたU18日本記録およびU18アジア最高記録を塗り替えたほか、複数の種目で今季日本最高や日本歴代上位記録がアナウンスされる活況となりました。
男子110mハードルは、村竹が13秒05!
今季世界最高で、2026年シーズンイン!
男子110mハードルには、2024年パリオリンピック、2025年東京世界選手権と2大会連続で5位入賞を果たしたほか、日本人で初めて13秒を切る12秒92の日本記録をマークした村竹ラシッド選手(JAL)が、今季初戦としてこの大会に出場しました。村竹選手は、「試合勘を取り戻すことに集中して、最初の3台をしっかり頑張った」という予選を13秒41(+1.1)で通過すると、決勝では全開モードにギアチェンジ。スタート直後からリードを奪うと、圧巻の走りを披露し、向かい風0.2mのなか、今季世界最高となる13秒05で快勝したのです。
村竹選手は、当初、5月8日に予定されていたダイヤモンドリーグ(以下、DL)第1戦のドーハ大会でシーズンインを計画していました。しかし、中東情勢の緊迫化に伴い、同大会が6月19日に延期となったため、会期の近い木南記念へスライド出場することに。奇しくもこの日は、師である山崎一彦コーチの誕生日。ビッグなプレゼントを贈る形となりました。
レース直後に感想を求められた村竹選手は、「まずまずじゃないですかね」とコメント。フィニッシュしたときは、「おお、(13秒)0台か」と思ったものの、「いざ、冷静になってみると、“うーん、(13秒)0台かあ”という(物足りない)感じ。自分の求めるレベルが上がっているのかなと思う」と振り返りました。
13秒05は、自己記録の12秒92、その前の日本記録であった13秒04に次ぐサードベストです。しかし、レース自体は、「フィジカルで走っている感じだった。もっともっと今まで(の冬期練習で)積み上げてきた技術に頼りたかったので、そこは今後の課題」と満足はしていません。この冬、「そろそろ着手しなければ」と、ばらつきのあった抜き足の軌道や、リード脚が接地した際の支持の状態など、特にハードリング技術の向上に取り組んできただけに、決勝は「丁寧にハードルを越えたいと思っていた」そうですが、「まだ、1本走っただけでは、まだなかなか」と、その手応えを得るには至らなかったようです。
とはいえ、向かい風のなかワールドリーダーとなる13秒0台でシーズンインと、その滑りだしはまさに“世界仕様”といってよいでしょう。この日のレースを「70点」と評価。今季は「どんなに身体の調子や気象が悪くても、(13秒)0台で走ることを大事にしていきたい」と言います。さらに勝負については、「去年は、“メダル、メダル”と言っていたが、結局、勝ちは金(メダル)だけで、銀や銅は負け」として、「勝ちにこだわり、ちゃんと1位を取りにいくレースをしたい」ときっぱり。「今シーズンの目標は?」という問いに、「アジア記録更新(注:2006年に中国の劉翔選手が当時世界記録として樹立した12秒88)、ダイヤモンドリーグのタイトルを1つ以上とること、アジア大会優勝とWAアルティメット選手権表彰台」と、頼もしい言葉を残しました。
なお、男子110mハードルには、4月にアメリカのマウントサックリレー男子十種競技で8321点の日本新記録を樹立した丸山優真選手(住友電工)も出場。決勝進出はならなかったものの、予選で13秒87(-0.4)の自己新記録をマークし、好調を維持している様子を印象づけました。十種競技の次戦は、5月末にWA混成ツアー・ゴールドとして実施されるハイポミーティング(オーストラリア・ゲツィス)。世界最高峰のデカスリートが集うこの大会での活躍が、大いに期待できそうです。
毎年高水準のレースが繰り広げられる女子100mハードルは、日本記録保持者(12秒69)の福部真子選手(日本建設工業)が今季日本最高の12秒.90(-0.5)で優勝。2位には、予選で12秒.94(±0)のシーズンベストをマークした中島ひとみ選手(長谷川体育施設)が12秒95で続き、ともにアジア大会派遣設定記録(13秒08)をクリアしました。
第110回日本選手権
男子110mハードル
6月13日(土)予選・準決勝/6月14日(日)決勝
女子100mハードル
6月12日(金)予選・準決勝/6月13日(土)決勝
https://www.jaaf.or.jp/jch/110/
諸田、大ケガ乗り越え、4m50の日本新!
アジア大会派遣設定にぴたり到達!
前戦は5月5日の水戸招待。この段階からすでに十分に記録が狙える状態で臨んでいたのですが、水戸では強弱があるうえに向きが定まらなかった風の攻略に苦しみ、連覇を果たしたものの記録は4m20。「これから連戦となるので、風の条件さえ整えば、(4m50は)必ず跳べるはず」と話していました。それから中4日空けて迎えた木南記念は、諸田選手の祈りが通じたのか、朝からすっきりと晴れ、待望の追い風に。安定して追い風となる上々のコンディションとなったなかで臨むこととなりました。
4m00から試技を始めた諸田選手は、この高さと、次の4m20は1回でクリア。2回目で成功した4m30で優勝が決まると、バーの高さを、自身が持つ大会記録(4m40)を上回る4m41に上げました。この高さは、あとがなくなった3回目での成功でしたが、「1本目で、助走が風任せになっていて自分で(身体を)動かせていないと気づいたので、2本目から修正し、そこからさらに意識して臨んだ3回目に跳ぶことができた」と諸田選手。手間取ったようにも見えた4m41の試技で、きっちりと動きを修正したことで、「このまま行けば跳べると思ったので、(4m)50は落ち着いて臨むことができた」と自ら良い流れをつくりだし、正念場となる4m50の試技へとつなげます。
そして、この4m50は、みごと1回でクリア。スピード感あふれた助走から踏み切った諸田選手の身体は大きく浮き上がり、バーよりもずっと上を軽々と越えていきました。空中で成功を確信した諸田選手は、その段階で笑顔に。両手を広げてガッツポーズしながら、“最高の自由落下”を楽しみました。
2023年秋のアジア大会で4m48を跳んだ段階から、「4m50もすぐに跳べると思っていた」そうですが、翌2024年のパリオリンピックはワールドランキングでの出場にわずかに及ばず。そして、1年前のクミ・アジア選手権では強風に煽られてマットの外に落ち、両手首を骨折する重傷を負うアクシデントに見舞われました。東京世界選手権にはワールドランキングで出場権を獲得。懸命の治療とリハビリで復帰を実現させ、本番では4m25の記録を残しました。その後、充実した冬場のトレーニングを経て、手首の痛みも1月末ごろからはほぼなくなり、不安なく跳ぶことができるように。2月から海外を転戦し、国内屋外シーズンを迎えていました。
今年の目標は、アジア大会での金メダル。「中国に強い選手がいるので、優勝するためには、(4m)60を越えることがポイントになると思う」と言います。「まだ使ったことのない14フィート・160ポンドのポールが使えるようになったら4m60は跳べると思うので楽しみ。でも、今日使ったポールでも、もっと曲げ込んで反発を得ることができそうに感じたので、もう少し行けそうな気がするし…。そう思うと、まだまだやることがいっぱいあります」と笑顔。ワクワクを抑えきれないようなその口調からは、大きなケガを乗り越えて、「跳ぶことが楽しくて、楽しくて仕方がない」という様子が伝わってきました(諸田選手のコメントは、別記ご参照ください)。
第110回日本選手権
女子棒高跳
6月12日(金)決勝
男子棒高跳
6月13日(土)決勝
https://www.jaaf.or.jp/jch/110/
男子400mハードルでは黒川が再びの快走
ダイヤモンドアスリート Nextageの後藤がU18日本新!
今季、後藤選手は、日本記録保持者の為末大選手(47秒89、2001年)が広島皆実高校3年の1996年にマークした高校記録49秒09の更新、さらには高校生初の48秒台突入を、目標に掲げています。今回は、50秒42にとどまった静岡国際での課題を修正して好結果。30年ぶりの高校記録更新が、ぐんと現実味を帯びてきました(後藤選手のコメントは、別記ご参照ください)。
男子走幅跳では、伊藤陸選手(スズキ)と津波響樹選手(大塚製薬)が、ともにアジア大会派遣設定記録(7m93)を上回る7m94をマーク。セカンド記録の差で、伊藤選手が勝利を手にしました。
このほか、女子走幅跳では、日本記録保持者(6m97、2023年)の秦澄美鈴選手(住友電工)が、6m53のアジア大会派遣設定記録には及ばなかったものの、今季日本最高となる6m44(±0.0)で制し、徐々に調子を上げてきていることを印象づけました。
また、ノングランプリ種目として実施された男子800mは、源裕貴選手(NTN)が日本歴代3位の1分45秒46をマークして、樹立当時の2021年は日本タイ記録だった1分45秒75の自己記録を5年ぶりに更新。このレースでは、2位の田邉奨選手(中大)も日本歴代4位に浮上する1分45秒57をマークしており、活況の800m上位戦線に名乗りを上げる好走を見せました。
第110回日本選手権
男子・女子400mハードル
6月13日(土)予選/6月14日(日)決勝
男子・女子100m
6月12日(金)予選・準決勝/6月13日(土)決勝
男子走幅跳
6月12日(金)決勝
女子走幅跳
6月13日(土)決勝
男子円盤投
6月12日(金)決勝
https://www.jaaf.or.jp/jch/110/
【新記録樹立者コメント】
諸田実咲(アットホーム)
優勝 4m50
=日本新記録、アジア大会派遣設定記録突破
(1回で成功した4m50の跳躍は)本当に、自分の課題としているポイントが、うまくハマって、きれいに跳べたと思う。4m41は、1本目で助走が風任せになっていて、自分で(身体を)動かせていなかったので、2本目でちょっと修正した。それでもまだという印象があったので、さらに意識して3本目に臨んだら、ちょっとハマって流れができてきた。それが4m50につながったと思う。
ポールは、水戸招待でも使った14フィート・155ポンドのマックスポールを、4m30から使ったが、今日はしっかり使いこなすことができたなという感じ。世界で戦っていくには、(4m)50を最低でも跳んでいかないとと思っていたので、そういう意味でも本当に、ここがスタートに過ぎないと感じている。4m50という記録は、3年前のアジア大会で4m48を跳んだときから、「すぐに(4m)50は行けるだろうという感覚はあったのだが、そこからなかなか跳べなかった。特に、去年は大きなケガ(アジア選手権での両手首骨折)もあったので、あのときのことを考えると、よくここまで戻ってこられたなと思う。
トレーニングは順調に積むことができていて、特に、この冬からシーズンにかけては、トレーナーさんにメニューを組んでもらって、棒高跳につながるようなフィジカルのトレーニングをしっかり継続してくることができた。実際、去年に比べると、ポールのフレックスも少し上がっていて、(試技の)入りのポールも、少しフレックスの硬いものから入れるようになっている。そういう点からも筋力は上がっているのかなと思う。また、コーチからも、助走が速くなったといわれることが多いので、スピードもついてきているのではないかと思う。
今季は、アジア大会での優勝を目標にしている。中国に強い選手がいるので、優勝するためには、(4m)60を越えることがポイントになってくると思っている。今日使ったマックスポールのもう一つ上の(フレックスの)ポールも用意はしている。それを使えたら跳べると思うので楽しみ。ただ、今日使ったポールも、もっと曲げ込んで反発を得られそうな感触があったので、まだまだやれることはありそうに思う。
このあとは、アジア跳躍(5月18~19日、中国・重慶)がすぐにあって、5月末にプサン(韓国)の試合があり、そのあと日本選手権というスケジュール。ただ、今回、4m50が跳べたので、(気象)条件などもみて無理はせず、日本選手権にしっかり合わせられるように過ごしていきたい。
男子400mハードル
後藤大樹(洛南高校) ※ダイヤモンドアスリート Nextage
タイムレース決勝1組1着 総合7位 49秒34 =U18日本新記録
<今後も、この歩数で行くのか? の問いに>
高校生なので、守りに入るのではなく、もっとチャレンジしてもいいと思っている。逆足を使えば、どんどん自分の課題も出てくる。そこで出た課題を潰していくのがいいのかなと思っている。
もともとは、小・中学校とトッパー(110mハードル)をやっていたので、利き足でない逆足で踏み切って跳んだことがなかった。逆足で踏み切ってのハードリングは慣れていないために、リードから抜きまでのすべてを難しく感じている。しかし、1カ月くらい練習すれば、逆足でも行けるのかなという自信はあるので、やっていればできるようになると思っている。
<シニアのレースに出た感想は? の問いに>
楽しかったという気持ち。自分のレースが終わって(49秒34の)タイムを見たときには、「これで(洛南高校の先輩である)井之上(駿太、富士通)さんとかにプレッシャーを与えられたのかな」と思ったが、(上位4人が48秒台となった)3組目を見て、黒川(和樹)さんの大人の意地を感じた。静岡・木南とシニアの大会に出てみて、アップ会場からテレビで見るような世界陸上に出た選手がいっぱいいたことで、「ああ、自分も将来、ここで戦えるようにならないとな」という気持ちが出てきた。本当にいい経験になったと思う。
(49秒09の)高校記録は、もちろん目標にしているが、5月からそんなに固くならなくてもいいのかなとも思っている。今日も、記録(を狙おう)というよりは、ワクワク、ドキドキ、ハラハラという気持ちで、本当に楽しかった。自分に期待しながら、「どんなタイムが出るのかな」という思いで臨んでいたので、緊張とかよりは、「早く走りたい」という気持ちのほうが強かった。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
第110回日本陸上競技選手権大会
兼 愛知・名古屋 2026 アジア競技大会 日本代表選手選考競技会
日時:2026年6月12日(金)〜14日(日)
※男子100m予選・準決勝は12日(金)、決勝は13日(土)
会場:パロマ瑞穂スタジアム(愛知・名古屋)
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