【週刊グランドスラム356】大型左腕・沢山優介の成長で「エース頼み」を脱却し、日本選手権王者のヤマハは黒獅子旗も狙う
リーグ戦第1戦でTDKに3対6で敗れるも、第2戦は鷺宮製作所に4対2、第3戦はロキテクノ富山に2対0といずれも僅差で勝利した。今季は打線が大爆発という展開は少ないが、上位を打つ矢幡勇人、相羽寛太らの勝負強さは健在。一方で、昨年に続いて課題と言えるのが、絶対的エース・佐藤 廉に次ぐ先発投手の確立だろう。
昨年の日本選手権では、佐藤廉が全5試合に登板。うち3試合に先発して2試合で完投する活躍で、最高殊勲選手賞に輝いた。佐藤廉は昨夏の都市対抗でも2完投しており、敗れた準決勝は補強した投手を先発マウンドに送っている。そこで、梅田健太郎、金原祥太らが先発を任されて奮投するも、まだ確立には至っていないという印象だ。
そんな中、リーグ戦第3戦では、沢山優介がロキテクノ富山を相手に2安打12奪三振の無四球で完封勝利と圧巻の投球を披露した。5年目を迎えた左腕は、昨年まで主に中継ぎ。先発しても、長いイニングを投げる機会は少なかった。試合後、社会人で公式戦初完封の感想を問われると、「試合中はアドレナリンが出ていたので大丈夫でしたが、終わってみるとドッと疲れを感じた。しんどいですね。廉さんは凄いと思います」と、エースに敬意を表しながら話した。
沢山は、佐藤廉を師匠と崇める。
「ずっと目標にしている投手です。仲がいいので、プライベートでも一緒に過ごしますし、廉さんの背中を5年間、見続けて参考にしてきました。一番身近にいる偉大な投手なので、追いついて、追い越せるよう頑張っています」
佐藤廉は、今大会もリーグ戦第2戦で当たり前のように完投勝利を挙げた。その力投に続く形での完封劇。沢山は、「やっと廉さんの足にしがみついたような感覚です」と笑った。
日本選手権とWBCを経てうんと増した成長への貪欲さ
その上で、今オフは変化球を強化した。「スライダーに自信を持てないのが、プロに行けていない理由のひとつ」と考え、特に磨きをかけた。ロキテクノ富山を相手にしても、140キロ台後半の直球にスライダーを織り交ぜた投球がハマったとあって、「真っ直ぐ中心で押す中で、変化球でもカウントを取れた。冬からやってきたことが、そのまま出せた登板だったと思います」と手応えを口にした。
また、国を背負って戦った経験も生きている。3月には、ブラジル代表としてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場。イギリス戦とイタリア戦に先発し、ともに4回まで無失点に抑えて注目を浴びた。
「WBCを経験したからこそ、平常心を保って自分のピッチングができるようになった。これまではピンチの場面で後手に回るクセがあったのですが、ピンチでも気持ちが揺るがないようになりました」
大舞台での成功体験を経て、現在は「焦らず、自分のピッチングさえできれば抑えられる」と、自信と余裕を持ってマウンドに立っている。二大大会でもそれを実践できれば、好結果はついてくるはずだ。
そして、WBCでは「観客の声援もケタ違いで、その中で活躍するのがスターだと感じた」と言い、「そんな、みんなから憧れられる選手になりたい」と決意を新たにした。昨年から、自身の成長を追い求める貪欲さは日に日に増している。
ヤマハの投手陣には、若い有望株も加わっている。高須大雅(明治大出)と芹澤大地(高蔵寺高出)だ。長身右腕の高須はリリーフで無失点を続けており、高校時代から注目される左腕の芹澤も長野県知事旗大会でデビューすると最速156キロを計測した。今年で23歳を迎える沢山は、二人の新人からも刺激を受けていると言い、特に同い年の高須には「トレーニングの数値ひとつにしても負けたくない」と対抗心を燃やす。そうして、ベテランも若手も関係なく競い合うムードが、ヤマハでは投手、野手ともに年々整ってきている。
都市対抗東海二次予選は、5月28日に幕を開ける。「完封勝利を挙げられるような投球を東京ドームでもできればいいですし、そのための準備をします。今年は、結果しか考えていません。都市対抗がすべてです」と沢山。エース頼みにならない磐石の勝ち上がりで頂点に辿り着きたい。
取材・文=川浪康太郎
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