【週刊グランドスラム355】少年時代からの憧れだった大阪ガスを東北大会優勝に導いたルーキー・田村剛平
決勝ではJR東日本東北との打ち合いを制し、7対6でサヨナラ勝ち。殊勲打を放った清水聖也、この試合で本塁打を含む3安打をマークした石橋昂樹、リードオフとして躍動した橋本典之らを中心に、大会を通じて打線が機能し、チーム打率は.310をマークした。
一方、リーグ戦3試合で計4失点と投手陣も奮闘。中でも鮮烈な印象を残したのが、速球派右腕のルーキー・田村剛平だ。日本製紙石巻とのリーグ戦第1戦に先発し、3安打9奪三振の快投で公式戦初完封。バックの守備や高橋佑八の好リードにも助けられながら、5回までは走者をひとりも出さない完全投球を披露した。負けたら終わりの準決勝でも先発を任されると、ここでもTDKを相手に8回まで4安打7奪三振で3失点(自責点1)の力投。決勝進出の立て役者となった。
「チームが勝つためだけに投げた。コースに力強い真っ直ぐをしっかりと投げ切れるのが自分の長所ですが、2試合ともそれができてよかったです」
田村は、淡々と自身の投球を振り返った。その言葉通り、今大会は球威のある140キロ台中盤から後半の直球に、カーブやスプリット・フィンガーなどの変化球を織り交ぜながら丁寧に投げ込んだ。力強さと丁寧さを兼ね備える新人離れした投球で、ベテラン打者をも手玉に取っている。
社会人になって、「怖いバッターばかりなので気が抜けない」と感じながらも、公式戦初登板となった京都大会では、YBSホールディングスに7回4失点(自責点1)と上々のデビューを飾り、今大会はそれ以上の結果を残した。田村は「レベルが高い中でも、真っ直ぐで勝負できていると思います」と胸を張る。
「力強い真っ直ぐ」の原点は、京都産業大時代にある。入学当初、練習試合で指導者から「変化球禁止」を命じられるほど徹底的に直球を磨き、その直球を荒れることなくコントロールする術を身につけた。並行してウエイトや体幹トレーニングに取り組むと、球速も150キロの大台を突破して高校時代の最速を10キロ上回った。そうして、大学4年間で習得した武器を社会人の舞台で早くも駆使している。
大学時代の因縁の相手・遠藤翔海と切磋琢磨して
社会人からのプロ入りを目指して、今春に大阪ガスへ入社。兵庫県宝塚市出身で、西宮市にある報徳学園中・高で腕を磨いた田村にとって、同じ西宮市にグラウンドがある大阪ガスは憧れのチームだった。少年時代からよく今津グラウンドの近くを通り、都市対抗をテレビ観戦する際は大阪ガスを応援したという。
「大阪ガスで日本一になって、その先でまたプロに挑戦したいです」
現在は、憧れのチームを日本一に導くことを第一の目標に据えている。
また、チームには切磋琢磨するライバルもいる。そのひとりが同期の左腕・遠藤翔海だ。ともに昨秋のリーグ戦を制して、関西地区大学選手権の第二代表決定戦では田村と遠藤が投げ合う。互いに完投し、遠藤の立命館大が1対0で勝利して神宮大会の出場権を獲得。軍配は遠藤に上がった。田村にとっては、これが大学最後の登板となった。
東北大会では、その遠藤も日本製鉄室蘭シャークスとのリーグ戦第2戦で7回無失点と好投。決勝は8回途中からリリーフし、サヨナラ勝利を呼び込んで2勝を挙げた。決勝の試合後に遠藤と「ナイスピッチング」と讃え合った田村は、「ライバルとして切磋琢磨できていると思う。今日も、遠藤なら抑えてくれると信じて見ていました。大学時代は負けたので、もう負けられません」と笑みを浮かべた。
なお、同じ近畿地区の日本生命には報徳学園高の同期である久野悠斗(明治大出)が入社した。高校時代は久野がエースで、田村は背番号11の三番手。久野に対しても、「負けたくない相手のひとりなので、社会人では勝ちたいです」と対抗心を燃やした。
日本一、打倒ライバル、そして、プロ入りへ……。様々な目的を達成するためには、成長を止めてはならない。「変化球のキレやコントロールはプロで戦うにはまだまだ足りないですし、球速ももっと伸ばしたい。そのあたりを大阪ガスでしっかり鍛えたいです」と田村。課題と向き合いながら前進し続けるつもりだ。
6月2日からは、都市対抗近畿二次予選に臨む。頼もしいルーキーは「新人らしく、攻める気持ちで、失敗を恐れずにチャレンジしたいです」と次を見据えた。
取材・文=川浪康太郎
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