【浦和レッズ】確信めいた過信と闘争心…石原広教はチームのために闘って走る「誰かのミスをミスにしないために」
そのプレーに、いつも闘争心と献身性を見ていた。
明治安田J1百年構想リーグでPK戦負けを含めて7連敗を喫していたチームは、第13節の川崎フロンターレ戦を前に田中達也監督が引き継ぐと、長いトンネルを脱した。
石原広教に、8試合ぶりに手にした勝利の意味を聞けば、その大きさに強くうなずいた。
「負けが続くと、どうしてもミスに対して執着してしまうというか、どうしても一つのミスが目立ってしまうところがある。でも、勝っているときはミスが目立たなくなるというか、たとえ誰かがミスをしたとしても、みんなですぐに取り返そうとする姿勢が生まれる。明らかに反応も速くなりますから」
連勝の背景には、田中監督がチームの闘い方を整理して、選手たちのやるべきことがクリアになった要因もある。だが、石原は「単純なミスがミスではなくなっている」と、変化を明かす。
言わんとする場面は、第14節のジェフユナイテッド市原・千葉戦でも確かに見られた。48分、石原が宮本優太に預けたボールをカルリーニョス ジュニオに奪われたが、2人ですぐにカバーすると、窮地を脱した。
「個人的に、その言葉が結構、好きで。それを意識して、自分のためにというよりも、そういうチームの雰囲気を作るためにという気持ちで試合に臨んでいました」
第7節の柏レイソル戦で今季初先発したときから、その姿勢を感じていた。球際では痛むことを怖れずに激しくボールを奪いにいく。仲間の背後を常にカバーし、たとえボールが出てこなかったとしても全速力で駆け上がる。もちろん、戻るときも全力疾走を欠かさない。
チームの結果が伴わずにいた第10節の東京ヴェルディ戦でも、第11節の鹿島アントラーズ戦でも両チーム最多のスプリント回数を記録した。だが、そうした数字に表れない場面での闘争心みなぎるプレーと献身性あふれた動きに目を奪われていた。
「戦術どうこうじゃないでしょうと思うところもあった。浦和レッズにはこれだけの(能力の高い)選手たちがいるんだから、選手たち自身で変えられると思うところもあった。少しでもそうした空気や雰囲気を変えたいなと思っていましたし、自分にできることはそこしかなかったっていう感じでした」
「もうサッカーを始めたときから、ずっと闘っていました。本当に負けず嫌いだったから」
幼なじみとも呼べる齊藤未月(京都サンガF.C.)とボールを追いかけていた藤沢FC時代から「バチバチとやっていた」。湘南ベルマーレのアカデミーに舞台が変わっても「気持ちの部分は今と変わらなかった」。
「曺(貴裁)さん(現・京都サンガF.C.監督)をはじめとする当時のアカデミーコーチからも球際については言われてきましたけど、その前からそういうプレースタイルだったし、言われる前からできていたから、もはや“育ち”の部類に入ると思っています」
彼の礎は球際、ハードワーク、運動量だけではなく、出場機会に恵まれない時期の思考や姿勢にも当てはまる。
昨季はリーグ30試合に出場しながら、今季はベンチを温める日々が続いた。
「自分が試合に出たときのことを考えて、『オレならやれる』って思っている」
「過信はよくないって言われるじゃないですか。でも、その過信が逆にうまくいくこともあると思うんですよね」
それを「自信」と言うのではないか。そう問いかけたが、石原は首を横に振って、はっきりと否定する。
「だって試合に出られていないのに、自信を持っていたらおかしいじゃないですか。オレのほうがいいのであれば、試合に出られているわけですからね。だから、自分が思っているのは自信じゃない。現実的ではないから、それはあくまで過信なんです。良くいえば根拠のない自信ですけど、悪くいえば過信なのかも。昔からそういうところはありましたけど、特にここ数年は、その過信があるから試合に出ていても、出られずにいても、ぶれずに続けられている」
「もちろんプロ1、2年目は自信がなくなる時期はありましたよ。プロでは無理かもしれないって。でも、結果的に『自分はやれる』という方向に気持ちを持っていったから1年目にJ2リーグで10試合に出ることができた。そこで『試合に出られたし、試合に出てもやれる』という感覚を持てた。
プロ2年目は初めてのJ1リーグで、自分が出場して試合に勝っていても、育成年代の日本代表に選ばれていた杉岡(大暉/柏レイソル)が帰ってくると、ポジションを失うこともありました。そのときも今と同じように『やれる』という過信があったから、プロ3年目にアビスパ福岡に期限付き移籍して、自分の力を確かめに行ったんです。そこで(リーグ戦37試合を)経験して自信が確信に変わったし、そのあと、湘南に戻ってからもぶれずにやり続けることができました」
湘南のアカデミーからトップチームに昇格できるかどうかが分からないときも親には「大丈夫」と答え、「根拠のない自信はどこから来ているのか」と不安視されたこともあった。試合に出られない日々が続くと、妻にも「大丈夫なのか」と心配されたというが、そのたびに「大丈夫でしょ」「オレでしょ」と即答してきたと、再び笑う。
「それが正解かどうかは分からないですけど、オレはその心の持ちようでここまでやってきましたから。でも、サッカー選手はそれでいいのかなって。試合に出たら『自分のほうがやれる』『自分のほうができる』。そのメンタルがなければ、もしかしたらプロサッカー選手にはなれなかったのかもしれない……」
「それがいい準備にもつながるし、いい結果にもつながる。絶対にそうだと思っています」
だから、いついかなるときも彼のプレーは全身全霊で、それでいて気持ちにあふれている。それは田中監督がチームを率いるようになって役割が大きく変化した今も——。
8試合ぶりの勝利をつかんだ川崎フロンターレ戦、続く千葉戦では、センターバックの宮本、根本健太に加わり、3枚でビルドアップを担った。
「もともと3バックを経験していたので、むしろやりやすさすら感じています。角度もできるし、逃げ道もたくさんあるので、起点になるところはある程度、やれていると思います。あとは、(金子)拓郎くんにボールが入ったときに1対1を任せていたところがありますけど、達也さんも『行っていい』と言ってくれているので、そのタイミングについてはすり合わせて図っているところです。タイミングを見て、自分も攻撃に参加できるようになれば、相手も嫌だと思うし、自分たちの武器にもなると思っています」
思わず、そこは「過信ではなく、自信なのか」と、笑って問いかけるとうなずいた。
「相手の人数によるところもありますし、1対1のときに(数的優位を作るために)行くべきなのか、2対1のときに(数的同数にするために)行くべきなのかも図っています。拓郎くんは能力が高いから、2対1のほうが間を突破できることもある。そこだけが今、見極め中で、ホントに他は迷いもなければ、不安もない」
攻撃ではアシストやゴールへの意欲もあるが、それ以上に「チームのバランスが大事」だと即答する。攻撃に顔を出す回数が少なくとも、後ろでプレーする時間が長くても、「チームが勝てればいい」と言い切る。
「浦和レッズには個性を生かせるメンバーが十分すぎるくらいにいるので、これ以上はいらないって思っちゃう。自分が行くくらいなら、他の選手に仕掛けさせたほうが圧倒的に強みになる。自分はそっち派。人を生かすことができればと思っています」
スタッツを見れば総走行距離は10kmを超え、スプリント回数はチーム最多の16回を数えていた。
次の試合でも石原は闘って走って、また闘って走るのだろう。その闘争心と献身性はミスをミスではなくし、チームを奮い立たせる。「やれる」という過信は、チームの自信として蓄えられていく。
(取材・文/原田大輔)
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