【大学サッカー】学生の企画運営で地域スポーツ交流会を開催
(取材:2026年3月20日)
天候次第ではイベント中止も検討される中、午前9時半頃から、アスレティックパーク稲城内のサッカー場へ続く道に、傘を差した親子連れがぽつぽつと姿を見せ始める。雨のせいか参加者の出足が悪く、イベント開始予定の午前10時近くになって、ようやく受付が賑わうようになった。しかし、受付を済ませ、観戦スタンドに張ったテントの下で待機する親子はもちろん、部員たちもまた、空を見上げて不安の表情をのぞかせていた。
雨足が弱まってきたところで、イベントリーダーを務める企画運営班長の石川晴太(経済4・清水エスパルスユース)が、「今日は来ていただきありがとうございました。僕たちも楽しみにしていました。寒さと怪我に注意して楽しんでください」と開会の挨拶を述べ、スポーツ交流会は予定より10分遅れでスタートした。
未就学児から小学校高学年まで、約30名の子どもたちとその保護者は5つのグループに分かれ、準備運動を兼ねたアップ競技で体を温めた後に、グラウンドに準備された6つの競技コーナーをローテーションしながら楽しんだ。
ドリブル競争のコーナーでは、軽快なフットワークでコースを1周して戻り、見守っていた学生と得意気な顔でハイタッチする子もいれば、サッカーボールに初めて触れたような年少の子は、部員たちにサポートされながら真剣な顔つきでゆっくり確実にカラーコーンの間を蹴って回る。またゴールキーパーとのPK対決コーナーでは、助走をつけて思い切り蹴ったボールがあらぬ方向に飛んでいってしまい頭を抱える子や、キーパー役の部員がゴールインを演出するパフォーマンスに笑いがあふれる保護者の姿もあった。
いずれの競技コーナーでも、部員たちが大きな声で子どもたちのチャレンジを励まし、称える姿が見られ、時には保護者にも声を掛けて競技への参加を促すなど、積極的なコミュニケーションを図ろうという姿勢が見えた。
歓声を挙げながら元気いっぱいにグラウンドを駆け回る子どもたち。その様子を笑顔で見守っていた保護者の方々に話を聞くと、誰からもこうしたイベントを歓迎する言葉をいただき、今後も継続的な地域交流を望む声が多く聞かれた。
5年生の男児と1年生の女児を連れて参加した父親は、「前回参加した後に、家で『楽しかったので、また機会があったら参加したいね』と話していました」という。「私たちの住宅街の近くに、日大さんの素晴らしい施設があって、何かしら交流ができるというのは非常にうれしいこと。住民が学生さんのプレーを見る機会もあるので、お互いを知ることができて良いことだと考えています。クリーンデーでも清掃を率先してやっていただいて助かっていますし、こうしたイベントを学生さんたちが主体的に企画してくれて、子どもたちを喜ばせようという思いが伝わってきますし、和やかな雰囲気がいいですね。また来年も、ぜひ参加させていただきたいなと思います」。
第1回イベントを開催した当時の自治会長だったという2児の母親は、「開始当初は手探りだったと思いますが、いつも楽しい会にしていただきました。特に今年は新たな企画を採り入れて、よりブラッシュアップされて良い会になったという印象で、子どもたちも例年以上に楽しくやっているなという感じがします」と学生たちの取り組みを高評価。「クリーン活動でも、夏は調整池周辺にすごい雑草が生えていますが、そういう大変なところにも入って草刈りをしてくださるので感謝しています」との言葉をいただいた。
また、初めて参加したという母娘は「どんなイベントなのか、よく知らないまま参加しましたが、楽しかったです」(母親)と言い、小学2年生の女児は「一番楽しかったのはPK。お兄さんたちも優しかった」と声を弾ませた。
同じく初参加で、今も稲城市のサッカーリーグでプレーしているという父親は「将来、子どもにもサッカーをやってほしいので、そのきっかけになれば」と、4歳の男児を伴ってきたが、「今回は『恥ずかしい』と言って、親の助けがないと自分でボールを蹴れませんでした」と苦笑い。「機会があればまた参加させていただき、ボールに慣れ親しんで、サッカーを好きになってくれたらと思っています。少子化の中でも、こういうイベントを通じてサッカー人口が増えてくれたらいいですね」
ミニゲームがタイムアップになり、イベントも終了時間を迎えた。閉会式では、石川が改めて交流会への参加に感謝を述べるとともに、日本大学サッカー部が目指す目標と決意を語った。
最後に、参加者全員で記念撮影を行ったが、イベント終了を待っていたかのように、再び冷たい雨粒が落ちてきた。
部員たちが並んで作った花道を通って帰途につく子どもたちと保護者。その一人ひとりに声を掛け、ハイタッチをしながら見送りをする部員たち。誰もが満ち足りた表情で、柔らかな笑みを浮かべていた。
地域社会の一員としての交流も、チームの力になっている
大学サッカーを3年間やってきた中で「日本大学サッカー部の価値を高めたい」という思いが強くなった石川は、「どうすれば自分の行動でそれができるかを考えた時に、企画運営班長を務めることに行き着いた」と、自ら立候補した。そして、企画・準備の段階から部員たちへ「交流会は感謝を伝える場だよ」と言い続けてきたという。
「自分たちだけでなく、地域の方があってからこそできる活動なので、そういう感謝の気持ちを持って会を盛り上げていこう、全員が積極性を大事にしていこう、というのをみんなに伝えてきました」
企画を進める中では、「参加する子どもたちの年齢が異なるところで、『どんな種目にすれば、小さい子も一緒にやりながら、みんなで楽しめるのか』という面でだいぶ悩みました」と苦労した点を挙げたが、「最終的にうまく種目を分けることができ、部員のみんなも協力して声を掛け合ってやれたので良かったですし、子どもたちも楽しんでくれたように感じます」と、満足そうに振り返った。
また、初めての参加となる新1年生の中村宗士朗(スポーツ科1・東京ヴェルディユース)は、「地域の方も楽しくやってくださり、僕らもすごく楽しくできました。子どもたちがすごく可愛いかったですね」と感想を語った。
「日大サッカー部が、地域の方々に本当に支えられて活動できているんだというのを実感しました。そして、競技をしていると“楽しむ”ということを忘れがちですが、子どもたちと触れ合って自分自身が初心に戻るというか、楽しむことが大事だと改めて気付かされました」
その一方で、出てきた課題を今後につなげていくようにフィードバックもしたという。「今日のような雨天時は、臨機応変な対応が必要でマニュアル通りにはいかないので、プランB・Cを持っておいたほうがいいとか…。トライするところからエラーが出るのはウェルカム。チャレンジしないと何も得ることがないので、どんどんトライして、課題が見つかれば、それを次に生かしていく。そういうサイクルをもっと広げていこうという話をしました」
さらに金澤コーチは、上平尾ひなた自治会が実施するクリーンデーへの部員の参加や、地域交流イベントの積み重ねを通じ、その関係性が深まっていることを実感しているという
「自治会の方から『ホームゲームの情報をください』と言ってもらえますし、N.サッカースクールの活動も含めて、ふだんから地域の方々とコミュニケーションをしている中で、サッカー好きの保護者の方が『日大ファンになりました』という人たちも増えてきている。そういうリンケージが、学生の代が変わっても少しずつ強くなっているなと思います」
地域社会とのつながりや共生、そのためのチャレンジや努力もまた、チームと学生たちの成長に寄与していることは間違いないと言えるだろう。
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