【駅伝】予選1位で2年連続の伊勢路切符を獲得 16年ぶり大学三大駅伝出場を決める
強風との戦いの中で、それぞれの仕事を果たす
400mトラック25周に挑むレースは、風の影響により序盤は超スローペースで展開。最初の1kmで3分06秒だったゆっくり目のラップは、2〜3kmでは3分37秒とジョギングレベルまでペースダウンした。互いの出方を伺うような状況に痺れを切らしたように東海大の檜垣選手が前に出ると一気にペースアップし、大東文化大とともに引っ張っていく。ペースの上げ下げがあった中でも4年生の高田眞朋(スポーツ科4・宮崎日大)は冷静に対応し、やや縦長になった集団の真ん中あたりをキープし、その後ろを追いかけるように1年生の首藤海翔(スポーツ科1・倉敷)がつけていた。
ペースが落ち着き、膠着状態のまま終盤へと進んでいく中、残り1400mを切ったところで突然レースが動く。仕掛けたのは、新雅弘監督が「勝負師ですね」と評していた首藤。第4コーナーに掛かるところで13・14番目にいたが、スッと外側に出ると一気に加速して前を行く上級生たちを抜き去り、トップに立った。
「先頭を引っ張らずに上手く集団を利用して、後半に余裕があったら勝負しろと監督に言われていたので、作戦通りやりました」と笑みかべる首藤。「どこかで仕掛けようとは思っていましたが、一番きついところがここかなと思ったので…。中央学院の選手が前に出たんですけど、ペースがそこまで上がらなかったので、今度は自分が一か八かの賭けということで仕掛けてみました」
後続との差を広げてラスト1周に入り、このまま逃げ切るかと思われた首藤だったが、「自分でも足が止まっているのが分かっていたので、どうなるかと思った」と、ついにはラストスパートを掛けてきた東海大・檜垣選手と日体大・荻野選手に残り200mを切ったところでかわされてしまう。それでも、日大チームメイトの声援が湧き立つ中、堂々3位でフィニッシュ。「後半にしっかりペースを上げることができたし、最後は抜かされましたが、なんとか3位をキープできた。2組目以降の先輩たちにもいい流れを作ることができたので良かったかなと思います」と、大学デビュー戦で30分29秒27の自己ベストを記録し、はにかむような笑顔を見せた。
さらに、「大学では初めての大きなレースで少し緊張もしていましたが、高校時代に何度か全国大会を経験させてもらったので、それが大会でも生きたかなと思います。1年生ながらいい経験ができたので、今後も生かしていきたい」と、自信を深めた鮮烈デビューだった。
「体の左右バランスというところで足に違和感があって、大会前は全く走ることができず、最低限の練習だけやっていました。それでも信頼されて1組を任せてもらったと思うので、それに応えたいという気持ちも強かった。4年生として1組目の流れを作らないといけない立場でしたが、それができなかったので、走りとしては60点くらいの出来」と反省の言葉が続いた。
それでも首藤と髙田との2人合計でトップ東海大に6秒69差の全体2位に入り、7位以上という目標に向けて順調な滑り出しを見せた。
レースは序盤から東洋大学と大東文化大が縦長になった集団を引っ張り、ペースが上下しながらも落ち着いた展開が続いていく。当初は集団の中盤にいた長澤と石川だが、2人とも状況を冷静に見ながら自分の走りに徹していた。
「昨年のレースでの失敗(17着)を今年も2組で活かそうという思いでやってきた」という長澤は、「昨年の経験上、内側にいると外側から来られた時にちょっとごった返してしまって、無駄な力を使ってしまった。風の影響を受けないよう先頭に出ない程度で、前の人のリズムに合わせながら外側外側という形で走ろうと決めていました」。
さらに「スタートから、空いたら前、空いたら前へと行こうと考えていたところで、しっかりうまく入って前にいけた」と、長澤が3000m過ぎから徐々に前に出て5・6番目で前を伺う位置につけた。
強かった風が収まりを見せてきた中で、5000mを前にややペースが上がってきたが、12人による先頭集団の5番目に長澤、石川も10番目をキープした。
「ペースが変わったと言っても、すごい上がったり下がったりではなく、しっかり冷静に対応すれば余裕を持ってついていけるペースだったので、そこは流れに乗ってリラックスしていこうとついていきました」(長澤)
「一時、集団が割れて第2集団の後方になる時間もありましたが、いずれ誰かが追いかけて前に追いつくだろうと思っていたので、焦ることもなく落ち着いて、しっかり力を貯めて自信を持ちながら走っていました」(石川)
レース終盤、東洋大・松井選手がロングスパートを掛けてトップを独走し、フィニッシュした。それに対し長澤は、「もしも、そこで前に行っていれば、もしかしたら組トップを狙えたんじゃないかなっていう部分での悔しさはあります。ただ、そこで行ってガス欠になって失敗するリスクもあった。集団の中でしっかり貯めた力で、最後にスパートを掛けて後続を離せたので、チームに貢献できたっていうところで悔いはない。個人としての悔やしさはあるけれど、チームに貢献できたことが何よりうれしいですね」と顔をほころばせた。
その時、石川もまた、個人よりもチームのために順位を落とさない選択をしていた。
「長澤が8800mくらいで仕掛けた時、ついていくという選択もありましたが、しっかり順位を意識して走りたかったので、第2集団の先頭で落ち着いて走りました。最後は負けない気持ちで追いかけたら、目の前に長澤がいたと言う感じです(笑)」
「9000m手前で余裕あったら行こうっていう風に決めていた」という長澤は、8800mで集団から抜け出して4位に上がるものの、最後はゴール前で追い上げてきた専修大に差されて5位でフィニッシュ。
石川はラストスパートで順位を上げて6位でフィニッシュ。ゴール後、同学年の2人は健闘を讃えあい短いハグとハイタッチを交わした。
2組の終了時点では、トップに浮上した大東大に僅差の2位、ボーダーラインとなる8位には56秒73のアドバンテージを得た
改めてレースを振り返った長澤は「昨年の反省を活かすことができ、自分が狙っていたレースをしっかりやれたので、良い形で走れたと思っています。今回は80点ぐらいかな」と満足そうに話し、「石川と一緒に走って、5番・6番でゴール。2人でまとまって上位で帰ってこられたのは、とても良かった。3年生として良かったなと思います」。
また「ようやく日大看板背負って走れるというのがベースにあったレース。デビュー戦ということもあって少し不安もありましたが、その中でしっかりまとめることができ、ある程度は納得いくレースができた」と、喜びを噛み締めた石川。「僕自身は才能があるわけじゃないので、誰よりも練習を長くやるとか、最初に来て練習をするとか、誰でもできることですが、それをしっかりコツコツ積み上げていく。そして、しっかり日大を引っ張っていけるような存在になりたいと思っています」と、熱い思いを口にした。
チーム全体の力がついてきたと感じる
最初の1kmは3分37秒という第1組を上回る超スローペースで始まり、山口は「遅いなとは感じていましたが、後半どこかで上がるかなと思っていたので、そこに備えて走りました」。
東海大の2選手が引っ張り始めると集団は縦に長く伸びていき、2000m以降は3分を切るタイムを積み重ねていった。
山口と天野はともに縦長の集団の真ん中あたりで様子を見ていたが、山口は徐々に上がっていくペースに乗って順位を上げていく。8000mを通過して山口は一時7位に浮上したが、天野は第1集団から離れ第2集団に後退。やがて、粘っていた山口も9000mに入ると第1集団が分裂した後方集団に下った。ラスト1周のスパートで何とか8位浮上を果たしたが、決して満足できるレースではなかった。
レース結果を振り返り山口は、「4年生の着順があまり良くなくて、後輩たちが頑張ってくれたおかげだと感じています」と言い、試合後に新監督からは「4年生がしっかりしてほしい」と強く言われたと明かした。
自身の走りとしては「残り3000〜2000mくらいで動きが出るかなと思っていたので、そこではしっかり前に行きたいと思い、落ち着いて走りやすいところで走ろうかなと思っていました」と言うが、思っていたよりもキツさがあったため「ペースが上がった時に上手く対応できなかった」との反省も。
「レースプランとしては、スローになったらついていって、ラスト後半に上げるところで粘って勝負するという形でした」と言うものの、「粘り切らないといけないところで粘れず、ラストの勝負する段階にいなかったので、プラン的にあまり良くなかったのかなと思っています。ラスト3000のところでペースが上がり、そこで足を使っちゃって、ラスト2000のところで離れてしまった。そこは最低でもずっと先頭集団には食らいつかないといけないところだったので、詰めが甘かったかなと思います」
さらに、「聡太と2人で3組目を任された以上は、上位でゴールしないといけなかった。3組目で勝負を決めて、いい形で4組目につなげたかったんですけど、それができなくてちょっと不甲斐ない」と言い、「自分の走りとしては30点くらい。後輩たちが頑張ってくれて今回の予選会を通過できたので、先輩として走りでもっと引っ張ってチームに貢献しないといけない立場でしたが、それができなかった。そういう評価になると思います」
3組が終わって大東文化大、東海大に続く3位。トップとは19秒48差になったが、ボーダーラインとなる8位までの差は1分52秒29差に広がり、予選突破はほぼ確実なものとなった。
スタート直後から、エティーリ(東京国際大)、ロンギサ(拓殖大)、キップケメイが先頭集団をハイペースで引っ張っていくが、後半に入るとキップケメイの走りは精彩を欠いた。序盤から終始3番目を走っていたが、6000mからは前の2人との距離が開き、7000m過ぎには城西大の柴田選手にかわされ4位に。ラスト1周ではさらに2人に先行され、まさかの6位に終わった。最近になって腰痛を発症していて、「前半5000mは大丈夫でしたが後半は腰が痛かった。それでスピードが出ませんでした」と告白。「6位という結果も、留学生たちに負けたことも悔しかった」と言い、秋の駅伝3大会での復活を誓った。
「最初は緊張していましたが、前の組で走った先輩方や後輩の走りを見て緊張がほぐれ、自分もやるぞという気持ちになって、自信が湧いてきた」と言い、「コケないことを意識して、自分で目標としていた28分20秒切りを目指して、チームのために頑張ろうと思ってスタートしました」。
日本人選手による第2集団の中で積極的な走りを見せた後藤は、東農大・前田選手ら他校の実力者たちに食らいついていく。ラスト900mほどで第2集団がロンギサ、エティーリに追いつかれ周回遅れになると、すかさず2人の背中についてロングスパートを仕掛け、第2集団の中でも前に立った。最後はややペースダウンしたが、それでも自己ベストを記録して日本人4位に入る大健闘を見せた。
「最初は集団の中盤でレースを進めていくつもりでしたが、思ったよりも先頭と差が開いてしまい自分のイメージとは違った展開になりました。その中でもしっかりと自分で前の集団に追いついたり、ラストもしっかりとスパートをかけることができたので自信のつくレースになりました」
2月には同期の岸端悠友(文理2・佐久長聖)、奥村櫂陸(文理2・大牟田)とともにアメリカに渡り、男子マラソン日本記録保持者の大迫傑選手との合同練習に参加し、競技への向き合い方や身体のマネジメントについて学んできた。その経験が走りの面での成長にも大きく寄与していると言えるだろう。
「夜も眠れなかったりするくらいの緊張感がありましたが、スタートラインに立った時には、自分がやらなきゃという気持ちだったり、応援してくださる方々のありがたみを身に染みて感じました。三大駅伝ではもっといい走りができるように頑張っていきたいです」と力強く語った。
山口主将は「今までは予選を通るか通らないかみたいな感じでしたが、しっかり1位で通過できて、チーム全体として力がついてきたなと感じています」と胸を張った。
-総合成績-
1位 3:57:10.99 日本大学
2位 3:58:12.32 東海大学
3位 3:58:35.09 大東文化大学
-個人成績-
6位 S・キップケメイ(4) 28分06秒71(4組6位)
11位 後藤 玄樹(2) 28分45秒16(4組11位)PB
38位 山口 聡太(4) 29分40秒74(3組8位)
47位 長澤 辰郎(3)29分46秒90(2組5位)
52位 石川 優斗(3) 29分49秒90(2組6位)
58位 天野 啓太(4) 29分52秒80(3組16位)
94位 首藤 海翔(1)30分29秒27(1組3位)PB
114位 髙田 眞朋(4) 30分39秒51(1組16位)
チーム全体の力がついてきたと感じる
「後輩たちが頑張って行ってなかったら、落ちていたかもしれない。逆に言えば、日大も土台がだんだんできてきているし、そこに力がついてきたんじゃないかという感じもしています」
今回のレースで注目を集めた1年生の首藤選手の起用について聞くと、「安定感ですね」と一言。「高校駅伝でも安定感を出していましたし、勝負所で前に出られるというのは、なかなか1年生にはできないこと。最後に逆転されて負けたのは仕方ありませんが、あのプレッシャーの中で出ていけるというのは、高校時代の経験も生かされていると思います」
これで今年度は三大駅伝に出場できることが決まった。それは同時に、新たなメンバー入りレースの号砲が鳴ったことになる。
当面の目標は10月の出雲駅伝。「僕も初めてなので、どうなるかわかりません(笑)。ただ、コースのことは高校時代に大会があるのでよく知っています。出雲はスピードが重要になりますが、うちは長い距離をずっとやっているので、スピードがありません。そういう大舞台を踏んでいって経験を積むのが大事になりますね」
そして重要なのは、やはり8月・9月の夏合宿。「夏合宿を乗り越えたら、一回り二回り変わってくる。今はまだ全員に走れるチャンスがありますが、夏が終わる頃にはわかります」
5月5日(火)、前日の全日本予選を走ったメンバーと故障者を除く、4年生から1年生まで25人の選手たちが、10000mタイムトライアルに挑んだ。その中から、3大駅伝のメンバー入りを果たす選手が出てくることが、チームの層の厚みになる。果たして、この秋の3つのレースの顔ぶれはどうなっているだろうか。
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