【ソフトボール】7点差を逆転したホンダ、勝ち越しに見えた投打のコントラスト JDリーグ開幕

日立ーホンダ戦は逆転また逆転(公式記録は2時間55分)(2026年4月12日、宇津木スタジアム) 【撮影:若林哲治】

女子ソフトボールのニトリJDリーグ2026は10日に開幕し、13日まで4会場で東西地区シリーズ20試合が行われた。高崎ラウンド(宇津木スタジアム)では、昨季東地区3位のホンダが、投手陣の不安が的中しながらも野手陣の粘りと長打力でビックカメラ高崎と日立に競り勝ち、開幕節を2勝1敗と勝ち越した。

秋豆、みんなが回してくれた4番の仕事

延長八回表、秋豆朱音が勝ち越し2点二塁打(2026年4月12日、宇津木スタジアム) 【撮影:若林哲治】

12日の日立との第3戦。ソフトボールらしい投げ合い守り合いの末ではなく、10-10の打撃戦で延長タイブレークにもつれ込んだ。
八回の場面設定は無死二塁。川畑瞳の安打などで2死二、三塁として残ったチャンスで、決着をつけたのは4番秋豆朱音だった。再登板した日立・長谷川鈴夏の外角球を右中間へ打ち返し、2点を勝ち越す。その裏は3人目のアリー・カーダが進塁すら許さず、2時間55分の激闘を終わらせた。
秋豆は投手から外野手登録になって2年目の昨季、ブレイクして後半から4番に座ったが、開幕から4番で迎える今季はまた別の思いや重圧があっただろう。オフには苦手なコース、球種の克服に取り組んだとはいえ、すぐに結果が出るものでもない。前の打席まで3試合で8打数無安打1犠打1四球。11打席目の今季初安打だった。
八回の打席へ入った時の心境を尋ねると、目にうっすら光るものが浮かび、少し言葉に詰まった。「ずっと打ててなかったので…。あの状況をつくってくれたのは、みんながつなげてくれて。最後のチャンスだなぐらいの気持ちで打とうと」

開幕3戦目の初安打が殊勲打となった秋豆朱音(2026年4月12日、宇津木スタジアム) 【撮影:若林哲治】

山口2発7打点、怒涛の逆転

三回表2死満塁、山口未葵が右へ満塁本塁打を放つ(2026年4月12日、宇津木スタジアム) 【撮影:若林哲治】

前日、戸田中央に1-14で大敗したホンダは、この試合も大量失点で始まった。一回に新外国人投手エミリー・ケネディが一挙5点を失い、二回にもデジャ・ムリポラに2ランを浴びて沈む。
その重い空気が、三回表に変わった。長谷川鈴夏から9番堀内香瑚がソロ本塁打を放つと、なお2死満塁から5番山口未葵が右越えにライナーで今季1号を打ち込んだ。これまで右中間本塁打はあったが、正味の右越えは初めて。
内角を強気に引っ張り、ファウルでカウントを稼がれてから外角球に泳がされるパターンが多かった。今オフはその課題克服に取り組み、「外角に対する苦手意識がなくなったので、それが結果に出たのはよかった」という。

五回表、逆転3ランを放って本塁へ向かう山口未葵。三塁コーチは岡野武志監督(2026年4月12日、宇津木スタジアム) 【撮影:若林哲治】

さらに五回、代わった坂本実桜から川畑、塚本蛍の連打で2死二、三塁として、山口が今度は内角球に腕をたたんで左越えに放り込んだ。逆転の2打席連続本塁打。しばしばチャンスになると引っ張った打球が切れない「持ち味」が出た形だ。7点差を五回でひっくり返し、ベンチも応援団も大変な騒ぎになった。
その裏、唐牛彩名に2ラン、杉本梨緒にソロを浴びて再逆転を許し、また2点差を追う形勢になったが、諦めない。六回に川畑の二塁打で1点。七回には山口の安打を足場に、2死一、二塁から2年目の代打・田中愛乃が食らいついて二塁内野安打とし、追いついた。

ビックに雪辱した開幕戦

ビックカメラ高崎との開幕戦、上野由岐子から先制打を放つ堀内香瑚(2026年4月10日、宇津木スタジアム) 【撮影:若林哲治】

開幕当初はまず、各チームのスイングの強さ、走る姿、守備のフットワークを見てオフの鍛錬ぶりを想像することにしているが、さすがに昨季の上位チームはしっかり鍛えてくる。
中でもホンダはビックとの開幕戦の前、打撃練習で各打者が鋭いスイングで低いライナーを連発するのが目を引いた。新主将の大川茉由は「オフの間に、低重心で下半身を使って打とうと取り組んできたので」という。
雨上がりの人工芝対策でもあったが、上野由岐子からの4安打はいずれも低い打球で先取点を奪った。2年目の岡野武志監督は「この試合のためにやってきたことが出た」と手応えを口にした。先制打を放った20歳の堀内は、今季も勝負強さとしぶとさが期待できそうで、「ハイ、9番バッター頑張ります!」と元気がいい。
3-2のまま進んだ試合は、七回裏2死満塁のピンチを、塚本のダイビングキャッチで守り切った。ホンダは野手の主力に大きな変動がなく、安定のうえにプラスを目指せるオフを過ごした数少ないチームでもある。昨季3戦3敗で、プレーオフでも勝てなかったビックを倒したという意味でも、好スタートになった。

若手投手陣、2戦連続大量失点

第2戦先発の新宮怜美は、二回まで無安打の立ち上がり(2026年4月11日、宇津木スタジアム) 【撮影:若林哲治】

だが、対照的に投手陣の課題が早ばやと露呈した。カーダとの両輪だったジェイリン・フォードがトヨタへ移籍して抜けたあとを、どう埋めるか。10勝近い計算が立つだけでなく、日本人的なハートも持ち、先発にリリーフに毎年100回近く投げた投手の代わりは、なかなか見つからない。
4年目の松下華菜、3年目の新宮怜美、新外国人ケネディ、新人・下村彩葉(日本体育大)の4人の力を合わせることになる。開幕戦をカーダの完投でものにしたあと、岡野監督は「全員が、あした誰が投げるかわからないくらいの競争をしているので、楽しみ。アリー頼みじゃないチームだというところをお見せできれば」と話していたが、厳しい結果になった。

戸田中央戦は大川茉由のソロ本塁打で完封を免れた(2026年4月11日、宇津木スタジアム) 【撮影:若林哲治】

11日の戸田中央戦は新宮、下村、松下がリーグ・タイ記録のチーム1試合7本塁打を浴び、14失点。大川主将が「2戦目でこういう結果が出たことは、良い方向に考えて、次につなげたい」と話して臨んだ12日の日立戦も、六回からカーダの救援を仰ぐまで、ケネディと下村で10点を失った。
打たれただけでなく、カーダを含め3試合とも9四死球を出して傷口を広げたことが反省として残る。同時に、若手投手たちが自分の能力、可能性、重ねてきた努力をこの程度で見失わないでほしいと思う。
いつの時代も打撃は水もの。岡野監督は打線のつながりで開幕節に勝ち越したことを評価しつつ、「失点を少なくするチームとしてスタートした中では、優勝を狙ううえで、大きな課題が出た1節ですね」と、目指すべき形を再確認した。

若林哲治(元時事通信記者)
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