【FC町田ゼルビア】PK戦3勝の立役者。谷晃生が見せる“異次元”の勝負強さ
「タニ・コウセイ! タニ・コウセイ! タニ・コウセイ!」
4月5日(日)のJ1第9節・FC東京戦。0-0でPK戦へ突入すると、ゴールスポットに立つ守護神に町田サポーターが力強く名前をコールして後押しする。
すると谷は、これまで同様、抜群の働きを見せる。1本目のキッカーを完全に読み切ってセーブすると、3本目も同じく左へ飛んでシュートストップ。今季3度目となるPK戦勝利を呼び込んだのは、今季圧巻のパフォーマンスを見せ続ける背番号1だった。
まさに今季は“PK職人”の名がよく似合う。これまでのリーグ戦のレギュレーションであれば90分で勝敗が決まらなければ引き分けで終了するが、現在の明治安田J1百年構想リーグは“PK戦”で白黒をつけている。そこで、Jリーグでも飛び抜けた存在感を発揮しているのがFC町田ゼルビアが誇るGK谷晃生だ。
すでに町田は4度のPK戦を経験し、結果は3勝1敗。その中で谷は17本中8本を止めるなど、セーブ率はほぼ五割だ。キッカーとゴールの距離はわずか11m。PK戦の成功率はプロの試合で一般的に約75~80%前後とキッカー有利と言われている中、谷のセーブ率は異色と言っていい。
いつも冷静沈着な男は、それでもやはり謙虚だ。PK戦勝利となれば、試合後のミックスゾーンでも多くの記者に囲まれ主役となる。端正な顔を笑顔で時折崩しながらも、その神髄を心にしまい、明かすことはない。
「PKは得意ではないですし、自信は全然ないです」
相手との心理的な駆け引き、キッカーの事前情報、自分なりの対策があるのがPK戦だ。それを明かしてしまえば、今後の戦い方に影響してしまう。それらを踏まえて、谷が大事にしているのは至ってシンプルだ。
「逆をつかれたらもう仕方ない。読んだコースをしっかり止められるようにしています」
確かに今季の谷のPKストップは、相手のコースを読み、しっかり防ぎ切っている。これだけのセーブをしていたら、対戦相手にも見えないプレッシャーを与えているのだろう。
黒田剛監督も頼もしい守護神の姿に賛辞を贈る。
「外から見ているが、谷晃生の立ち姿がすごく勇敢に見えるし、どこに蹴っても止めそうな雰囲気を醸し出している時点で、やはりキッカーもやりづらいと思います」
プロ8年目の25歳。経験豊富な選手が起用されがちなGKの中で、谷はもうJ1リーグ戦通算174試合を数える。東京五輪をはじめ、各年代別日本代表に選出されるなど、将来を嘱望されてきた守護神は、“風格”が漂う。やれることを一つずつ。その中で進化してきた谷は、今後も成長の歩みを止めることはない。
「GKはよく経験と言われますし、そういうのを少しずつ積み重ねて行って、こういうPK戦も少しずつ経験を積み重ねることによって、この先に何か良いことがあるかもしれません。こういうのも一つ一つ大事にしながらやっていくだけです」(谷)。
それから1週間後の4月11日(土)、J1第10節・柏レイソル戦には、視察に訪れた日本代表・下田崇GKコーチの姿があった。最後に日本代表に選出されたのは2025年5月。約1年、日の丸から遠ざかっているが、その視線の先に谷がいるのは間違いない。
「タニ・コウセイ! タニ・コウセイ! タニ・コウセイ!」
ファン・サポーターの声援を背に柏戦ではクリーンシートで勝利を収め、谷はチームとともにACLEファイナルズの戦いの舞台であるサウジアラビアへと飛び立った。アジア制覇に向けて、この守護神の活躍は欠かせない。
海外の強敵相手から守るそのゴールには、谷晃生がいる。
GK 1 谷 晃生(タニ・コウセイ)
2000年11月22日生まれ、25歳。
ガンバ大阪ユースから2018年にトップチーム昇格。その後、湘南ベルマーレやFCVデンデルEH(ベルギー)への期限付き移籍を経て、2024年にJ1昇格初年度のFC町田ゼルビアに期限付き加入した。その年は開幕から正GKの座を掴むと、チームのリーグ戦3位躍進に貢献。2025年から町田に完全移籍となった。今季もリーグ戦では全試合先発出場を続ける町田が誇る守護神だ。
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