前回金から4年、パラクロスカントリースキー川除大輝が最後まで示した王者の全力滑走
楽しみながら全力出せた
「4位という結果、メダルを獲れなかったのは本当に皆さんに申し訳ない気持ちがあります」
それでも言葉はすぐ前を向いた。
「でも、楽しむというもう一つの目標は達成できたと思います。昨日(男子スプリントクラシカル)のレースから今日にかけて、楽しんで自分の全力を出せました。4位ですけど、自分の中では出し切れたという気持ちが大きいです」
「不甲斐ない滑りをしてしまいました」
痛恨の思いを晴らすためにも10㎞クラシカルでは、「本当に最後まで出し切ろう」と決めてスタートラインについた。
世界が「クレイジー」と称賛する滑り
「最初は(周りの)みんながやっているからというのが大きくて、(スキーに)乗れるようになりたい、滑れるようになりたいという気持ちが強かったです」
転機となったのは中学生のとき。北海道旭川市で行われたワールドカップで世界のトップ選手を初めて目の当たりにし、そこから「自分もこの選手たちに勝ちたい」という思いが芽生えていった。
やがて国際舞台で戦うようになると、小柄な自分の滑りが海外の選手に強い印象を与えていることを自覚するようになる。
「海外の選手の一歩は僕の二歩くらいになるんです。その中で、海外の選手は僕の(足の)回転数が上りでもずっと変わらないことがおかしいと笑って言ってくれる。川除の滑りはクレイジーだ、くらいの勢いで言ってくれるのがうれしいですね」
雪面コンディションに苦しめられ
テーゼロのコースには、イタリアの名選手の名にちなんだ通称「ゾルジ坂」と呼ばれる難所がある。急勾配の上りゾーンで、ここをいかに攻略するかが勝敗の分岐点と言われる。2月のミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックのクロスカントリースキーでは、ノルウェーのヨハンネスヘスフロト・クレボがこの坂で異次元の登坂技術「クレボステップ」を駆使し、金メダルに輝いた。
ただこの日、雪面のコンディションはこれまでに経験がないほど荒れていた。約2.5キロのコースを4周する10㎞クラシカル。川除は得意の上り坂でアドバンテージを握ろうとしたが、雪面が予想以上に崩れてザクザクな状態になっていた。スキー板の先端が雪にのめり込んだり、場所によっては足首まで埋まったりすることも。そのため、普段はほとんど転ばないという川除が2周目と4周目に合計2度も転んだ。
トップとの差は開いた。けれども、最後まで川除はあきらめなかった。
「過去に見ないぐらいの厳しい状況だったんですけど、その中でも自分の滑りはできたし、メダル争いにも絡むことができました。自分では調子もよかったし、いい滑りができたなと思います」
誰もが全力を出し尽くしたうえでの結果を、川除は正面で受け止めた。
金メダリストとして充実の4年間
そして、「応援してくれる人たちに滑りを見て元気になってもらったり、頑張りましたというところが伝わればいいなと思います」と心からの思いを言葉にした。
それはどんな困難に直面しても決してあきらめず、やれる限りのことをやってきたエースの矜持だった。
edited by TEAM A
text by Yumiko Yanai
key visual by REUTERS/AFLO
※本記事はパラサポWEBに2026年3月に掲載されたものです。
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