清水舞友、8年ぶりJAPAN LADIES優勝の舞台裏――「楽しいから続ける」静かな情熱を貫き通した13年間
8年ぶり、涙の優勝
――まずは8年ぶりのJAPAN優勝、おめでとうございます。壇上では涙されていましたね。
清水:「なんでこんな投げれないんだろう」って、長い間悩んでました。泣いたのは・・・単純に、その苦しさからやっと抜け出せたって嬉しさがまずひとつ。あとはもう8年勝ててなくて、ファンの方々にもスポンサーの皆さんにも良い姿を見せられてなかったので「やっと勝てた」と思ったら、気づいたら泣いてました。「勝ったぜ! やったぜ!」というよりは、本当に「やっと、やっと」って気持ちでしたね。
偶然の出会いが「人生」になった
清水:20歳の頃、働いていたお店にダーツがすごく上手な女性のお客さんがいて「かっこいいな」って。最初3カ月はレーティング2〜3だったんです。そこから1日8時間の練習して・・・1年くらいでレーティング10になりました。
――そもそも、プロダーツ選手になろうと思ったきっかけは?
清水:実は自分から「プロになりたいです」って言ったわけじゃないんです。お店のお客さんに「プロにならないの」って言われて。それをきっかけに試験受けてみたら受かって。最初はスポットで出られるところに何戦か、という感じでした。
――そしてプロ2年目、清水選手は22歳3か月でJAPAN LADIES初優勝。当時の最年少優勝記録でもありました。
清水:多分自分でも優勝できるって思ってはなかったと思うんです。「あ、勝っちゃった。優勝しちゃった」みたいな感じが強かったですね。
「ライバル視」「勝ち負けのこだわり」とは一線を画した"静かな楽しさ"
清水:「この人に勝ちたい」「この人に負けたくない」みたいな、特定の誰かを意識した気持ちはそこまで強くないんです。でも、試合はちゃんと勝ちたいです。なんというか・・・単純にダーツが楽しいし、試合しているのが楽しい。そのうえで、自分が思うダーツを出し切って勝てたときが、やっぱり一番嬉しいんです。なんかこう狂暴な・・・「みんなぶっ倒してやる!!」みたいな気持ちはないというか(笑)。
――こういったインタビューでは「ライバルは誰ですか」とよく訊かれると思います。
清水:そうなんです、正直言うと困っちゃいますね(笑)。もちろん尊敬する選手はたくさんいますよ。ボウ・グリーブス選手や鈴木未来選手、同じスポンサーの先輩である大内麻由美さんも。でも「ライバル」と思ってる人は少ない。というか、あんまり「ライバル視」自体をそんなにしたことがないんです。負けちゃったらその時はいったん結果を受け止めて。そこからちゃんと切り替えて、また練習して・・・そうやってコツコツ頑張ろうって思うんです。やっぱり「対戦相手がこの人だから絶対勝ちたい」っていうのは私は感じないかもしれないですね。
――清水選手のスタンスは、やはり他の選手の方々とは少し違うように思います。ダーツをすることに「静かな喜び」を見出しているように感じました。
清水:そうかもしれないですね。ダーツをすることに対してしみじみ「あー、やっぱ楽しいな」って思ってるのかな。練習も好きですけど、試合の時には感じられない緊張感とか「緊張して手震えてんな」とか、そういうのをひっくるめて全部楽しいし好きなんですよ。試合でしか感じられない感覚だったり感情だったり、それが多分刺激的に思っています。
――長く活躍されている清水選手ですから、注目される機会が多くあると思います。それについてはどうでしょうか。
清水:目立つのが得意じゃなかったんです、昔から。だからSUPER DARTSとか、ああいった大舞台にはもちろん出てみたいなとはあるけど、注目されること自体はあんまり得意じゃないです(笑)。緊張しいだし、派手なことするのもそんな好きじゃないです。
――「ランキングを意識していますか」といった質問も多いかと思います。
清水:まったく気にしてないわけじゃないんですけど、ランキングを一回一回気にしてはいないですね。その時その時で頑張った積み重ねがランキングだから、「1位になるために次頑張ります」とかじゃなくて、毎回頑張ってるんですよ(笑)。だからもう「なるようになる」としか思ってないです。よく「もっと勝ちを意識して、もっとハングリーに行け」みたいなのは言われますけど、でも多分合わないんですよね、そういう考え方が。
コロナ禍で起きた変化を機に「本当の強さ」と向き合う
清水:コロナ禍を境に体質に変化があり、試合での自分のコンディションも大きく変わったんです。それまでとは違う状態で試合に臨むようになって、そこから緊張が勝っちゃって。うまく投げれないとか、成績も出せないみたいな時期がずっと続きました。楽しくないなと思うことも多かったです。だからこそ、練習と同じにできない悔しさも自分の中であったり、ただ楽しいだけじゃなく「やりきりたい」っていう気持ちがありました。あのときダーツを辞めなかった理由も多分それだったなぁと。
――練習量にも変化があったそうですね。
清水:実はコロナ禍前、すごく練習するほうじゃなかったんです。それでも勝てていた時期があったから「なんとかなるのかな」って思っちゃってた部分は正直ありました。でもコロナ禍の体質変化をきっかけに、勝てない時期が続いて。「あ、これじゃダメだな、練習しなきゃな」って。練習量が本当3倍~4倍になりました。でも練習も楽しくて。レーティング16~17をずっとキープできるのが楽しかったんですよ。「あ、練習こんなにしたらこんなにうまくなれるんだ」っていうのもあったし。でもそれを試合で出せない悔しさもあったり。コロナ禍を経ていろいろ考えるようになりました。自分にとっては大きな変化です。
何度も考えた「引退」、でも辞められなかった
清水:3年ぐらい前は「来年で辞めよう」とか考えてたことは正直ありました。でも、やっぱり辞める方が決断力が必要だし。辞めれなくて・・・迷っていた時期はありますね。
――今現在はどんなお気持ちでしょう。
清水:今は辞めたいって思ってないです。コロナ禍が明けて2年目ぐらいですかね、ダーツがしんどい、試合がしんどい、試合に行きたくないみたいなのが続いた時があったんです。入替戦で、ある選手と当たって勝ったんですよ。その時、ポロって涙が出てきたんですよね。「あ、うれしい。嬉しいんだな、私」「あ、まだ勝って嬉しいんだ」って思って。「あ、やっぱダーツ好きなんだな」って思って、続けられました。正直それまでは、勝っても負けても楽しくないって思ってたのかも。でもやっぱ勝って嬉しかった。それに、2025年末に肩を痛めちゃって、1か月ぐらいソフトダーツを投げられない時期があったんです。この間久しぶりにプレイヤーデーで投げたんですよね。そしたら楽しくて。「あ、やっぱダーツ好きなんだな」って思いました。
優勝の瞬間、目に映ったもの
清水:昔からずっとDYNASTYの選手を応援してくれてる方がいらっしゃって。車で行ける範囲ならどこにでも応援に来てくれるんです。その方が観客席にいて、応援してくれてて。優勝した時にパッて見たら、その方が泣いてるのが見えて・・・その姿を見たら、結構涙出てきちゃったんです。本当にずっと応援してくれてたから「やっといいところ見せられた」みたいな。決勝点を決めて振り返ったら、まずその方が目に入って。そのあと「おめでとう」ってたくさんの方が声をかけてくれて。本当ありがとうございます、勝ててよかったです、いいとこ見せてよかったみたいな気持ちでいっぱいになりました。今でも思い出すと、「あー本当にいい時間だったな」と思います。
筋トレで得た「長く投げられる体」
――最近は筋トレに積極的に取り組まれているそうですね。
清水:3年ぐらい前からですね。単純にかっこいい体になりたかったっていうだけで、ダーツにまた関係ないところからなんですけど(笑)。インスタでめちゃくちゃかっこいい、バキバキの女性を見かけたんです。「うわ、かっこいい、こうなりたい」って思ったんでしょうね。
――ダーツへの影響はありましたか?
清水:筋トレ始めてから安定した部分はありますね。長時間投げれるようになったし・・・あ、あと矢速は確実に上がりました! 結構みんなに勧めるんですよ、筋トレ。でも余計な筋肉ついたら~とか、あんまり好意的に聞いてもらったことないですね。まぁみんな人それぞれなので・・・(笑)。
「できるうちに、やりたいことを」――海外へ挑戦する理由
清水:「今年で辞めよう、来年で辞めよう」って悩んでいた時期があったので、最後に出られる試合はいっぱい出てみようって思ったのが理由としては大きいです。年齢も年齢だし、今できるうちにやれること・やりたいことを全部やろうと決めました。スティールダーツも本格的にやってみようと思って。
――実際行ってみて、心境に変化はありましたか?
清水:海外に行くようになったら・・・、楽しいな、また行きたいなって思って。もっとやりたいなってなっちゃいました。辞められなくなりました、もう(笑)。試合がたくさんしたいなって、より思うようになりましたね。
「辞める日を決めずに」という言葉
清水:「今年で辞めようと思ってます」と言ったことはあるんです。そしたら「辞める日を決めずに、やればいいよ」「本当に辞めたくなったら、もう辞める選択肢もあるけど」って言ってくださって。多分スポンサーさんもわかってるんでしょうね、私がその時「ただただ嫌になっちゃってた」っていうのを。「決めずにまあ、また楽しいと思えるようになるまで続けてみれば」みたいなお返事をくださって。スポンサーさんって本当よくわかってくれてるなって思ったし、だからこそ「もうちょっといいとこ見せたいな」って思いました。なにより、「楽しいままやり続ける」っていうのが自分にとっても支えてくださってる方にとっても一番なのかもなって思いました。
清水:いつも応援してくれるファンの方々、スポンサーさん、一緒に練習している友だち、みんなに感謝しています。頑張りますというのはもちろんなんですけど、自分なりに楽しんでダーツをして、いい結果を出して、それを見せられるのが一番。自分なりに頑張って、いい姿を見せたいです。やりたい理由を見つけ続けて、楽しんでやっていきたいなっていう気持ちです。
―――
13年間、 第一線で活躍してきた清水舞友選手。彼女のダーツへの愛は、誰よりも純粋で、誰よりも深い。「楽しいから続ける」――そのシンプルな想いが、これからも彼女をダーツボードの前に立たせ続けるだろう。熱く激しい選手もいれば、静かに淡々と自分のダーツを愛する選手もいる。清水選手は後者だ。そしてその静かな情熱こそが、13年という長い時間を支えてきた。8年ぶりの優勝は、終わりではなく新たな始まりだ。「今はダーツが楽しい」と語る清水選手の目には、これからのダーツ人生への期待が静かに輝いていた。
※本インタビューは、JAPAN第16戦終了後に行いました。
―――
プロダーツJAPAN 2025 第18戦(最終戦)は3月14日(土)開催。清水舞友選手の「自分が一番楽しむダーツ」を、ぜひ会場や生配信でご覧ください。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ