【LAD】佐々木朗希 一歩一歩着実に
2025佐々木朗希の振り返り
もともと佐々木については様々な意見がありました。
一方では多くのプロスペクト評価媒体が球界No.1と評価し、極端なものでは1年目からサイヤング賞争いに加わるというのもありました。
もう一方では"佐々木はそれほど良くないのでは?"という意見も存在しました。過去の故障歴、2024のパフォーマンス低下、速球系のスペック不足などいろんな理由で佐々木の力を疑う声がありました。
共通したのは"佐々木は完成品ではない"という認識です。後から考えてみれば佐々木の評価が分かれたのは、この認識のコインの裏表だったのかもしれません。ポジティブに評価する人は「素材は一級品なので、完成してなくてもMLBである程度やっていけるだろう」、ネガティブに評価する人は「素材は素材。MLBではそう簡単に通用しない。一方で育てれば将来的に必ず花開く」と考えたのでしょう。
結局佐々木は後者のネガティブな意見に近いような軌道を描きました。
開幕ローテ入り、さらに2戦目の先発に起用され、東京シリーズカブス戦で3回1失点。北米に戻ってからもアップダウンがありながらも、表面上は防御率3後半から4前半くらいの投球を見せていました。
その一方でCFパヘスが佐々木朗希登板時にホームランキャッチを連発するなどの運の良さ、防御率とその他指標の乖離から「これマズイんじゃね?」のような懸念は徐々に蓄積されていきました。
約3か月の離脱とマイナー3Aでの調整を経て復帰した佐々木。ロースター状況からリリーフに配置転換となりました。
4か月近く離脱したにも関わらず投球スタイルに大きな変更は無し。その一方で平均球速は故障前最後の登板となったD-バックス戦の94.8マイルからリリーフながら99.4マイルと大きく改善しました。
リリーフではRS2試合、PS9試合でアップダウンがありながらも11試合12.2回1失点。K%20.0、BB%10.0でK-BB%10.0(Lg Avg.は13.8)と内容は依然として悪かったものの、ぶっつけ本番のリリーフでPSを乗り切ったという点は今後への自信となったかもしれません。
佐々木朗希の悪かった点
Bad Fastball
2025年は実に873人の投手がMLBでボールを投げましたが、その約1割にあたる82人が100マイル以上のボールを1回でも投げています。100マイルを投げるのは依然として今後の成長を占う上で非常に魅力的ではありますが、それ単体では厳しいメジャーの競争を生き残ることはできません。
フォーシームを"強くする"には様々な方法があり選手によって十人十色ですが、大きく分けて
・球速
・スピン/変化量
・リリース/見た目
の3つが挙げられます。
①球速は言うまでも無く、速い球を投げることで打者が反応する時間を減らし打ちにくくします。
②スピン/変化量はスピンをかけてマグヌス効果によりボールを浮き上がらせることで打者が予測しない軌道を描き、空振りを誘発します。
③リリース/見た目は②の代替策のようなもので、単純に言えばボールを下から上に投げることで、打者にボールが浮き上がっていく錯覚を与え、②と同じような効果を実現します。
例えばジェイコブ・ミジオロウスキーのフォーシームは①球速は平均99.3、Max104.3マイル(PS)、③リリースは低い位置から投げることでフラットな軌道を実現、文句をつけるなら回転がカット気味でせっかくの2600回転が縦変化に結び付かず、②スピン/変化量が微妙になっていることくらいです。結果として空振り率33.1、xSLG.330のリーグ最強クラスフォーシームが誕生しました。
球種の少なさ
現代のMLB、特に先発投手では"フォーシーム基軸で投球を組み立てる"という考え方は過去の遺物となり、"なんでもいいから得意な球を投げまくる" や "とにかく球種を増やして打者を惑わせる" ことが主流になっています。
一方で佐々木を見てみると、フォーシームの割合は49.9%と異常に高い。その一方で前述したように質は悪い。これでは自分から打たれに行っているようなものです。
また球種をたくさん持つことは様々な面から有効な手立てです。
先ずは左右打者どちらも克服できることで、多くの投手は左右別で球種の割合を大きく変更します。
例えばスイーパー使いで知られるソニー・グレイは右打者に対してはシンカー/スイーパー投手になりますが、左打者に対してはフォーシーム/カーブ投手になります。これは右 vs 右で強い球種と右 vs 左で強い球種を使い分けている良い例です。この結果グレイはなぜか左打者に強くなってしまいました。
5,6球種あれば最初からいろんな球種を投げたり、順を経るごとに攻め方を変えたりいろいろできます。
一方で2,3球種しかない場合、幅は狭まり、打者も対応が容易です。ジェイコブ・デグロムやクリストファー・サンチェスのように超効果的な球を2,3個厳選して投げる、というなら話は別ですが、佐々木のように質の悪いフォーシーム、スプリット、スライダーでは打たれてしまいます。
スライダー & 他の変化球
普通スライダーは球速を優先し、横変化を減らすジャイロスライダー、あるいは横変化を優先し球速を落とすスイーパーというトレードオフの関係にあります。
例えばパイレーツのミッチ・ケラーはスライダー、スイーパーを両方投げますが、球速と変化量トレードオフの関係がきれいに成り立っています。
これは佐々木の変化球全般に言えることですが、フォーシームは良い時で平均98マイル、最速100.5マイルを出せるにもかかわらず、変化球は85マイル台まで落ちてしまうのが非常に不思議です。
ミジオロウスキーは100マイルのフォーシームに95マイルのスライダーを投げますし、他の投手も速球系の球速につられて変化球の球速も上がっていくのが普通です。
佐々木朗希の良かった点
ナックルスプリット
佐々木のスプリットは異常に低い平均492回転で、ボール自身は全く動かないため風の影響を受けて揺れる変化をします。
ある時は右に10インチ、ある時はスライダーのように左に10インチ動きます。
一方で不明点も残ります。ナックルスプリットはそのリリースの性質から、フワッと一度浮かんでから落ちる軌道をたどります。
通常スプリットは山本由伸がやるようにフォーシームと同じ軌道を辿らせて、最後に落ちることで効果を発揮しますが、最初から浮いているのではこの効果は失われます。
同じような低スピンスプリットを投げるケイド・スミスやローガン・ギルバートのリリースを見てもこれほど浮いているスプリットはありません。
佐々木朗希は誰を目指す?
球種割合→ハーストン・ワルドレップ(ATL)
このように佐々木とそっくりのワルドレップですが、佐々木と同じ失敗をデビュー時にしています。
そして昨季8月にメジャーに戻って来たワルドレップは39.8%あったフォーシーム割合をシンカー22%、カッター18.2%に分離。カッター/シンカーでカウントを整えていき、2ストライクでスプリットを決めるというスタイルに切り替えました。
同じようなプロファイルで同じような課題を持つ佐々木も学べるところがあるかもしれません。
コマンドが改善するなら→ローガン・ギルバート(SEA)
その一方で2021年のデビュー以降、マリナーズのエースとして毎年のように180イニング、防御率3点台をクリア。2024年は208.2イニング、防御率3.23でオールスター、CY賞投票6位に入りました。
ギルバートの場合、ワルドレップのような3速球で分割するのではなく、どんなカウントでもFF、SL、FSの軸を残したうえでカーブ、カッター、シンカーを補助的に使っています。
佐々木は1年目の昨季Location+は91と非常に低く、これでは球威を補うどころか、もっと悪くなるだけです。
リリーバー?
このことを受けて、佐々木の復活を喜ぶ声と共に、先発での失敗とリリーフでの成功を見たことで佐々木をリリーバーとして育てるべきとの声が一部で上がりました。
リリーバーに本格的に異動するならここまで挙がった問題点は一挙に解決します。リリーバーは1-2イニングで多くても10打者しか対戦しませんから、球種数は問題になりません。逆に400rpmのナックルスプリットは誰も見たことがないため、有利に働きます。
また最初からフルバーストで行けるので球速低下の問題も楽になります。
現状の佐々木ではこれは不可能ですから、他スタイルを捜してみます。
最も近いのは特殊球エアベンダーを持つデビン・ウィリアムスで、フォーシームは普通、チェンジアップはエグイです。
一方で結果を見るとチェンジアップと同じような成績であり、しっかりとフォーシーム/チェンジアップをコンビで使えています。
今年の佐々木に期待する事
前述したようなワルドレップのように速球系を増やすにしても、ギルバートを目指してコマンドを改善するにしても、あるいはリリーバーになるにしてもメジャーで通用する投手になるには課題が多すぎます。昨季は100マイルのトッププロスペクトという評判があったため実験的にメジャーに置いても良かったですが、その評判も既に失いました。
今のままダラダラメジャーで打たれていてはせっかく若くして移籍したのに、その時間的余裕を無駄にすることになりますし、本人の精神衛生的にも良くありません。昨季はボコボコに打たれた後に涙を流してしまう、という場面もありました。
その上でメジャーに残るにしろ、マイナーで育成するにしろ、佐々木朗希には何かしらの変化を期待したいと思います。
既にスプリングトレーニング1登板ではジャイロスライダーとシンカーを見せており、ポジティブポイントです。
パフォーマンス的にはいつからメジャースタートをするのかにもよりますが、先発6番手としてまぁこれなら置いても良いよね、とまずはメジャーに片足をしっかり置くのが今年1年最低限の進歩目標だと思います。
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データ
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