【LAD】佐々木朗希 一歩一歩着実に

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チーム・協会
【これはnoteに投稿されたEliさんによる記事です。】

2025佐々木朗希の振り返り

2025年シーズンの佐々木は10登板8先発36.1回を投げ、防御率4.46。故障を除けば新人としては良いじゃないか、という感じですが、他の指標を見ると、FIP6.19 (213位/221人)、xFIP5.85 (同220位)、K-BB%1.3 (同220位)と壊滅的で、"佐々木朗希"という名前を外せば5月にはDFAモノな成績でした。

もともと佐々木については様々な意見がありました。
一方では多くのプロスペクト評価媒体が球界No.1と評価し、極端なものでは1年目からサイヤング賞争いに加わるというのもありました。
もう一方では"佐々木はそれほど良くないのでは?"という意見も存在しました。過去の故障歴、2024のパフォーマンス低下、速球系のスペック不足などいろんな理由で佐々木の力を疑う声がありました。
共通したのは"佐々木は完成品ではない"という認識です。後から考えてみれば佐々木の評価が分かれたのは、この認識のコインの裏表だったのかもしれません。ポジティブに評価する人は「素材は一級品なので、完成してなくてもMLBである程度やっていけるだろう」、ネガティブに評価する人は「素材は素材。MLBではそう簡単に通用しない。一方で育てれば将来的に必ず花開く」と考えたのでしょう。
結局佐々木は後者のネガティブな意見に近いような軌道を描きました。
開幕ローテ入り、さらに2戦目の先発に起用され、東京シリーズカブス戦で3回1失点。北米に戻ってからもアップダウンがありながらも、表面上は防御率3後半から4前半くらいの投球を見せていました。
その一方でCFパヘスが佐々木朗希登板時にホームランキャッチを連発するなどの運の良さ、防御率とその他指標の乖離から「これマズイんじゃね?」のような懸念は徐々に蓄積されていきました。
結局、2回10失点ノックアウトのような運を大きく吐き出す登板は無かったものの、5月には2登板9.0回8失点と徐々にパフォーマンスが悪化。最終的には肩の故障で戦線離脱となりました。

約3か月の離脱とマイナー3Aでの調整を経て復帰した佐々木。ロースター状況からリリーフに配置転換となりました。
4か月近く離脱したにも関わらず投球スタイルに大きな変更は無し。その一方で平均球速は故障前最後の登板となったD-バックス戦の94.8マイルからリリーフながら99.4マイルと大きく改善しました。
リリーフではRS2試合、PS9試合でアップダウンがありながらも11試合12.2回1失点。K%20.0、BB%10.0でK-BB%10.0(Lg Avg.は13.8)と内容は依然として悪かったものの、ぶっつけ本番のリリーフでPSを乗り切ったという点は今後への自信となったかもしれません。

佐々木朗希の悪かった点

ここからは投手佐々木朗希が今後成長していく上での改善点を探ってみます。

Bad Fastball

平均100マイルの速球!の前評判でメジャーに突撃した佐々木ですが、実態は"100マイルだけ"でした。
2025年は実に873人の投手がMLBでボールを投げましたが、その約1割にあたる82人が100マイル以上のボールを1回でも投げています。100マイルを投げるのは依然として今後の成長を占う上で非常に魅力的ではありますが、それ単体では厳しいメジャーの競争を生き残ることはできません。
フォーシームを"強くする"には様々な方法があり選手によって十人十色ですが、大きく分けて
・球速
・スピン/変化量
・リリース/見た目
の3つが挙げられます。
球速は言うまでも無く、速い球を投げることで打者が反応する時間を減らし打ちにくくします。
スピン/変化量はスピンをかけてマグヌス効果によりボールを浮き上がらせることで打者が予測しない軌道を描き、空振りを誘発します。
リリース/見た目は②の代替策のようなもので、単純に言えばボールを下から上に投げることで、打者にボールが浮き上がっていく錯覚を与え、②と同じような効果を実現します。

例えばジェイコブ・ミジオロウスキーのフォーシームは①球速は平均99.3、Max104.3マイル(PS)、③リリースは低い位置から投げることでフラットな軌道を実現、文句をつけるなら回転がカット気味でせっかくの2600回転が縦変化に結び付かず、②スピン/変化量が微妙になっていることくらいです。結果として空振り率33.1、xSLG.330のリーグ最強クラスフォーシームが誕生しました。

【Eli】

一方で佐々木のフォーシームは①球速では最速100.5、平均96.1マイルとまずまずですが、②スピン/変化量は平均を大きく下回り、③リリース/見た目もオーバースローのリリースから投げ下げる形になるためフラットな軌道ではない。質の源泉が球速の一本足打法となっており、常に100マイルを投げないと打者にとっては打撃練習状態です。

球種の少なさ

前項においてフォーシームの悪さ、について説明しましたが、この悪いフォーシームが投球の半分を占めていることも大きな問題です。
現代のMLB、特に先発投手では"フォーシーム基軸で投球を組み立てる"という考え方は過去の遺物となり、"なんでもいいから得意な球を投げまくる""とにかく球種を増やして打者を惑わせる" ことが主流になっています。

【Eli】

今季サイヤング賞争いに入った投手の多くが、少なくとも5球種は保有し、フォーシームは高くても4割。41%投げているザック・ウィーラーの場合、フォーシームのPitching+は124とメジャートップクラスです。
一方で佐々木を見てみると、フォーシームの割合は49.9%と異常に高い。その一方で前述したように質は悪い。これでは自分から打たれに行っているようなものです。
また球種をたくさん持つことは様々な面から有効な手立てです。
先ずは左右打者どちらも克服できることで、多くの投手は左右別で球種の割合を大きく変更します。
例えばスイーパー使いで知られるソニー・グレイは右打者に対してはシンカー/スイーパー投手になりますが、左打者に対してはフォーシーム/カーブ投手になります。これは右 vs 右で強い球種と右 vs 左で強い球種を使い分けている良い例です。この結果グレイはなぜか左打者に強くなってしまいました。

【Eli】

一方で佐々木はスライダーの割合に若干の違いはありますが、右にも左にもフォーシーム5割、スプリット3割、残りスライダーのスタイルを崩していません。佐々木の独特なナックルスプリットの左右別効力には議論があるところですが、昨季の結果を見るに佐々木は左打者に対してK-BB% 0.0と全く対応できていません。

【Eli】

もう一つ球種をたくさん持つことのメリットとして先発投手として重要なイニングを食うことに貢献するということがあります。現在ではほとんどの球場に投球軌道再現マシーンであるTrajektが設置されており、打者たちは試合前、試合中の空いた時間に先発投手への対応を練習します。
この環境では1巡目、2巡目、3巡目、4巡目と同じ球種を投げていては簡単に対応されてしまいます。
5,6球種あれば最初からいろんな球種を投げたり、順を経るごとに攻め方を変えたりいろいろできます。
一方で2,3球種しかない場合、幅は狭まり、打者も対応が容易です。ジェイコブ・デグロムやクリストファー・サンチェスのように超効果的な球を2,3個厳選して投げる、というなら話は別ですが、佐々木のように質の悪いフォーシーム、スプリット、スライダーでは打たれてしまいます。

スライダー & 他の変化球

佐々木のスライダーは"スイーパーの出来損ない"のような形をしています。
普通スライダーは球速を優先し、横変化を減らすジャイロスライダー、あるいは横変化を優先し球速を落とすスイーパーというトレードオフの関係にあります。
例えばパイレーツのミッチ・ケラーはスライダー、スイーパーを両方投げますが、球速と変化量トレードオフの関係がきれいに成り立っています。

【Eli】

余談ですが、このトレードオフを逆にとれば88マイルで14インチ曲がるグリフィン・ジャックスのスイーパーは素晴らしいということになります。
佐々木のスライダー(スイーパー)は82.0マイルとスイーパーとしても遅い部類、そして横変化は11.7インチとスイーパーとしては少ない部類。つまりジャックスと全く逆を行っており、非常に質の悪いものとなっています。

これは佐々木の変化球全般に言えることですが、フォーシームは良い時で平均98マイル、最速100.5マイルを出せるにもかかわらず、変化球は85マイル台まで落ちてしまうのが非常に不思議です。
ミジオロウスキーは100マイルのフォーシームに95マイルのスライダーを投げますし、他の投手も速球系の球速につられて変化球の球速も上がっていくのが普通です。

【Eli】

佐々木朗希の良かった点

ナックルスプリット

佐々木朗希が移籍する際に平均100マイルの球速と並んで評価されていたのがスプリットです。
佐々木のスプリットは異常に低い平均492回転で、ボール自身は全く動かないため風の影響を受けて揺れる変化をします。
ある時は右に10インチ、ある時はスライダーのように左に10インチ動きます。
この"奇妙"とも言えるスプリットは非常に有効で、セットアップするはずのフォーシームがボロボロ、かつスプリット自体もほぼ制御不能な状態だったにも関わらず、xSLG .260、Whiff%37.2と優秀な成績を残しています。

一方で不明点も残ります。ナックルスプリットはそのリリースの性質から、フワッと一度浮かんでから落ちる軌道をたどります。
通常スプリットは山本由伸がやるようにフォーシームと同じ軌道を辿らせて、最後に落ちることで効果を発揮しますが、最初から浮いているのではこの効果は失われます。
同じような低スピンスプリットを投げるケイド・スミスやローガン・ギルバートのリリースを見てもこれほど浮いているスプリットはありません。

左 佐々木朗希右 ケイド・スミス 【Eli】

いくら変な挙動をするスプリットでも、打者が最初から捨てられては効果は薄まるため、今後スプリットのアキレス腱となるかもしれません。

佐々木朗希は誰を目指す?

ここからは様々な比較対象を見ながら、佐々木がどのような道を採ればMLBで成功できるかを考えてみます。

球種割合→ハーストン・ワルドレップ(ATL)

ワルドレップの得意球はスプリットで、空振り率45.4%を誇ります。その一方でボールをスピンすることには長けておらず、フォーシームの質は非常に悪いものとなっています。
このように佐々木とそっくりのワルドレップですが、佐々木と同じ失敗をデビュー時にしています。

【Eli】

2024デビュー時のワルドレップが持つ球種はフォーシーム、スプリット、スライダーの3つ。前述のとおりフォーシームの質は悪いですから、案の定、空振り率5.9、SLG.710と全く通用せず。それではスプリットも生きないため、結局ボコボコに打たれ2先発でマイナーに帰っていきました。
そして昨季8月にメジャーに戻って来たワルドレップは39.8%あったフォーシーム割合をシンカー22%、カッター18.2%に分離。カッター/シンカーでカウントを整えていき、2ストライクでスプリットを決めるというスタイルに切り替えました。

Waldrep 球種割合 【Eli】

すると最初の先発で5.2回4三振と好投したのを皮切りに、安定した投球を繰り返し、最終的に10試合9先発で防御率2.88、FIP3.21の好成績を残しました。
同じようなプロファイルで同じような課題を持つ佐々木も学べるところがあるかもしれません。

コマンドが改善するなら→ローガン・ギルバート(SEA)

ギルバートも佐々木と同様スピンが苦手な投手です。2025年はフォーシーム、スライダー、スプリット、カーブ、シンカーを投げましたがスピン量は全てがリーグ下位レベル。つられてStuff+も平均以下となっています。
その一方で2021年のデビュー以降、マリナーズのエースとして毎年のように180イニング、防御率3点台をクリア。2024年は208.2イニング、防御率3.23でオールスター、CY賞投票6位に入りました。
ギルバートが最も成功した2024年は軸となるフォーシーム、スライダー、スプリットに加え、カーブ、カッター、シンカーの合計6球種を投げています。
ギルバートの場合、ワルドレップのような3速球で分割するのではなく、どんなカウントでもFF、SL、FSの軸を残したうえでカーブ、カッター、シンカーを補助的に使っています。

【Eli】

また佐々木がギルバートを目指す場合、コマンドの改善は不可欠です。ギルバートは投げる球こそ平凡 or 平均以下ですが、2022年以降Location+は常に平均以上で球威を補っています。
佐々木は1年目の昨季Location+は91と非常に低く、これでは球威を補うどころか、もっと悪くなるだけです。

リリーバー?

佐々木はレギュラーシーズンを散々の形で終えた後、リリーバーとして復帰。ポストシーズンでは9試合10.2回を投げ防御率0.84の素晴らしい成績を残しました。
このことを受けて、佐々木の復活を喜ぶ声と共に、先発での失敗とリリーフでの成功を見たことで佐々木をリリーバーとして育てるべきとの声が一部で上がりました。
リリーバーに本格的に異動するならここまで挙がった問題点は一挙に解決します。リリーバーは1-2イニングで多くても10打者しか対戦しませんから、球種数は問題になりません。逆に400rpmのナックルスプリットは誰も見たことがないため、有利に働きます。
また最初からフルバーストで行けるので球速低下の問題も楽になります。
その一方でリリーバーになったところで…感は付きまといます。昨季のリリーバーK%ランキング見るとトップはほとんどが優秀なフォーシームを持っています。

【Eli】

近年では投球割合が減っているとはいえ、フォーシームは打者の左右も気にせず、制球もしやすいため、一級品さえ投げられれば最高の球になるようです。

現状の佐々木ではこれは不可能ですから、他スタイルを捜してみます。
最も近いのは特殊球エアベンダーを持つデビン・ウィリアムスで、フォーシームは普通、チェンジアップはエグイです。
一方で結果を見るとチェンジアップと同じような成績であり、しっかりとフォーシーム/チェンジアップをコンビで使えています。

【Eli】

一方の佐々木はスプリットは良い、フォーシームは酷い、です。リリーバーになれば球速が上がる可能性はあります。しかしたとえリリーバーになったとしても簡単にはスーパーリリーバーにはなれませんし、フォーシームを常に100マイル投げたり、FF/スプリットコンボを磨くなりしない限り、昨季と同じ道を辿ることになりそうです。

今年の佐々木に期待する事

これは前からちょくちょくおすすめ?していることですが、佐々木はどこかで腰を据えてのんびり育成をした方が良い気がします。
前述したようなワルドレップのように速球系を増やすにしても、ギルバートを目指してコマンドを改善するにしても、あるいはリリーバーになるにしてもメジャーで通用する投手になるには課題が多すぎます。昨季は100マイルのトッププロスペクトという評判があったため実験的にメジャーに置いても良かったですが、その評判も既に失いました。
今のままダラダラメジャーで打たれていてはせっかく若くして移籍したのに、その時間的余裕を無駄にすることになりますし、本人の精神衛生的にも良くありません。昨季はボコボコに打たれた後に涙を流してしまう、という場面もありました。

その上でメジャーに残るにしろ、マイナーで育成するにしろ、佐々木朗希には何かしらの変化を期待したいと思います。
既にスプリングトレーニング1登板ではジャイロスライダーとシンカーを見せており、ポジティブポイントです。
パフォーマンス的にはいつからメジャースタートをするのかにもよりますが、先発6番手としてまぁこれなら置いても良いよね、とまずはメジャーに片足をしっかり置くのが今年1年最低限の進歩目標だと思います。


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