佐賀から挑戦!チューリップ賞で上がり3位のサキドリトッケン、川田将雅騎手からのアドバイス受けた飛田愛斗騎手と挑戦の舞台裏/月刊・佐賀競馬だより
チューリップが色とりどりに咲くパドックを、1頭の地方馬が堂々と歩いていました。
金色のメンコに赤い御守りをくくりつけた彼女の名は、サキドリトッケン(牝3、佐賀・真島元徳厩舎)。
重賞5連勝のタイトルを引っ提げて、JRA阪神競馬場で行われた桜花賞トライアル・チューリップ賞GIIに挑戦しました。
結果は11着ながら、勝ち馬から0秒6差で上がり3ハロンは3位タイ。さらに、騎乗した飛田愛斗騎手(佐賀)はエキストラ騎乗で2桁人気の馬で何度も掲示板に載るなど存在感を示しました。
佐賀の人馬がJRAの舞台で見せた挑戦の舞台裏を覗いてみましょう。
有馬記念ともつながりのある神社で授かった御守りを身に着けて
かねてより「もうひと回りふっくらしてくれば、もっと強い走りを見せてくれるのでは」と考えていた真島元徳調教師の思いに反し、チューリップ賞が近づくにつれてカイ食いが落ちたこともあり、「当日はマイナス10kg以内に留まればいいな」(真島調教師)という想定でした。
「阪神に着いた日はカイバを完食しました。レース当日の朝は少し残していましたけど、大丈夫、目はギラギラしていました」
馬房でサキドリトッケンの様子を確認した真島調教師はそう胸を張りました。
ただ、真島調教師はもう一つ懸念を抱いていました。それは、パドックできちんと歩けるかどうかということ。
レース前のコラムでも書いた通り、ここ2~3走はパドックでテンションが高く、チャカチャカと歩き、騎乗命令がかかる少し前に隣接する装鞍所の枠場に入れると、軽く立ち上がったり蹴ったりしていました。
そこで対策として、普段はウォーキングマシンに入れて運動させているのを、人が曳いて落ち着いて常歩をできるように練習。
「練習の甲斐があった。今日は歩けるよ。馬具も工夫しました」
真島調教師もそう自信を持てるまでになっていました。
いざ阪神競馬場のパドックに入場すると、当初は少しテンションの高さを見せたようですが、その後はこの言葉通り、二人曳きで堂々と歩くことができました。
篠山神社の境内には久留米藩主だった有馬家にまつわる家宝や史料を保存・展示する有馬記念館があり、有馬家はファン投票での有馬記念を提案した有馬頼寧氏の家系。競馬と縁があるとも言える神社なのです。
真島調教師が事前に抱えていた懸念は、嬉しくも杞憂に終わったのでした。
「もう息が入ってケロッとしている」陣営も驚きの強心臓
初めてコンビを組んだ飛田愛斗騎手はこう振り返ります。
「ゲートの中でゴソゴソする馬と聞いていたんですけど、すごく大人しかったです。佐賀では尾持ちをしているんですけど、JRAではできなかったことも影響したかもしれません」
尾持ちとは、ゲートの後ろ扉の外から尻尾を持つこと。ゲートが開くタイミングに合わせて尻尾を離す熟練の技が求められる方法で、スタート時に踏ん張りが利きづらい馬に効果が出ることが多い、とも言われたりします。サキドリトッケンはデビュー時からスタートが速い部類ではなく、前走・花吹雪賞も真島調教師自らスーツに長靴を履いてゲートへ行き、尾持ちをしていました。
しかし、これは地方競馬でのみ認められている手法で、JRAでは行えません。
それは事前に分かっていたことで、腹を括って最後方から運ぶこととなりました。
序盤は地元・佐賀でも見られるような頭の高いフワフワとした走りで、「どういう感じなんだろう?と思いながらでした」と飛田騎手。
しかし、スローペースも功を奏して馬群に追いつくと、そこからはしっかりと走ることができました。
4コーナーにさしかかると、一気にペースが上がります。
サキドリトッケンがすごかったのは、ここから。瞬時にスピードを上げて馬群についていったのです。
「馬群に追いついて、息を入れた時から手応えが良くなってきました。折り合えていましたし、レース全体がペースアップした時にもギュンとついて行けました。こういうメリハリある競馬もできると思います」
スローペースゆえ、馬群はバラけず凝縮して横に広がり、外を回せないと判断した飛田騎手はインを選択します。
これにはもう一つ背景がありました。
この日の芝の状態についてレース前に佐賀出身の川田将雅騎手(JRA)から「内をロスなく回った方がいい馬場」とアドバイスを受けていたのです。
そうしてロスなく直線を迎えると、スローの瞬発力勝負の中、前の馬を1頭、また1頭と交わし、一方で外から鋭く伸びてきた馬には抜かされて、といった攻防を繰り広げ、11着でゴールしました。
「進路はずっとありましたし、一杯に追って、サキドリトッケンも一生懸命走っていました。芝の走りも悪くありませんでした」
「もう息が入ってケロッとしています。すごいね。これまでうちの厩舎からJRA遠征した馬が何頭もいますけど、それよりももっと心臓が強いんだろうなと感じます。普段から馬着を嫌がるので着せていないから冬毛が生えていますけど、あと1カ月もすれば気温の上昇とともに綺麗な体になるでしょう。まだまだ良くなりそうです」
レース直後は負けた悔しさを滲ませていた表情が一変していました。
夕方、阪神競馬場から直接、短期休養へと出たサキドリトッケンは、陣営の想像を超える成長を見せてくれるかもしれません。
「ゲートの中がJRAは…」佐賀との違いで、前目の位置から2桁人気好走の飛田騎手
エキストラ騎乗6鞍は、リーディング上位騎手が多く集まる重賞デーとしてはかなり多い騎乗数。さらに、全レースで人気以上の着順に持ってきて、中には単勝200倍超えの馬で僅差4着というレースもありました。
阪神1Rミーンアロット 4着(13番人気)
阪神3Rルペイドゥロール 11着(11番人気)
阪神4Rセイントホース 4着(6番人気)
阪神7Rミッシオーネ 3着(13番人気)
阪神10Rフランスゴデイナ 9着(14番人気)
阪神12Rクリノオリーブ 9着(9番人気)
アタマ差4着だった4Rでは「3~4コーナーで馬と馬の間に行くと馬が怯んでしまいました。通るところを間違えずに外を回していたら、いい馬だったので3着もあったかもしれません」と唇を噛みました。
直近2走は2桁着順が続いていた馬での3着で、西園調教師が「上手く乗ってくれたよ」と褒めると、飛田騎手は「外に張る馬と聞いていましたが、思ったよりも大丈夫でした」との感触で「何とか3着以内と思って必死に追っていて、馬券圏内に入れてよかったです」と話しました。
「騎乗馬はみないい馬ばかりでした。
佐賀の場合はゲートの中がJRAより少し広くて、馬が動くので上手くスタートを切れないこともあるのですが、JRAはスペースがタイトなのでスタートを切りやすかったです」
たしかに、先行など前目の位置を取って、4コーナーで先頭を射程圏に入れて回ってくるレースが多かったように感じます。
「阪神、楽しかったです。サキドリトッケンに乗せていただいて、こうして大きくて素晴らしい舞台で走らせていただいたことに感謝しています。エキストラ騎乗で乗せていただいたオーナーさんや調教師の方々にもとても感謝しています。これからもサキドリトッケンの応援、よろしくお願いします」
地元に帰ると、おそらくはライバル馬に騎乗するであろう飛田騎手。
それでも初コンビを組んで阪神で見た景色は、飛田騎手にとっても陣営にとっても忘れられない一日となったでしょう。
文・大恵陽子(おおえ ようこ)
競馬リポーター。小学5年生で競馬にハマり、地方競馬とJRAの二刀流。毎週水曜日は栗東トレセンで、他の日は地方競馬の取材で全国を駆け回る日々。グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」「地方競馬中継」などに出演のほか、「優駿」「週刊競馬ブック」「Number」「netkeiba.com」「うまレター」「馬事通信」など各種媒体で執筆。
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