このまま終わるわけにはいかない

静岡ブルーレヴズ
チーム・協会
レヴズ戦士たちの強い思いは、スタジアムにいた誰もが感じただろう。

前節は三重県鈴鹿市で行われたビジター戦で逆転負け。得点は相手の反則によるペナルティートライと、そのシンビンによる数的優位を得ていた時間帯だけ。21-5と大きくリードして折り返しながら、後半は無得点。

トップリーグ時代も含め、このカードで初めての黒星を喫し、チームは今季2度目の3連敗となった。

勝ち負け以上に、負け方が悪かった。

その汚名を返上しなければ――そんな思いは、キックオフから強く伝わってきた。

連敗を止めるべく挑んだ試合 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

前節、試合開始早々のノックフォワード、最後の場面で逆転したはずのトライを消してしまったオブストラクションと、勝敗に直結するエラーを重ねてしまったWTBマロ・ツイタマからはとりわけ、その思いが強く発散されていた。

開始早々のスクラムから仕掛けてきた相手FBにゲーム最初のタックルを見舞う。次のアタックでは相手No8タタフに、元オールブラックスFLケイン主将に猛タックル。

「今日のマロは違うな…」観客席ではファンのそんなつぶやきが聞こえた。

だが、その思いが空回りしてしまったのかもしれない。

先制トライを許した後の前半8分、相手No8タタフがパスを捕った瞬間にタックルした際、ツイタマの肩が相手の顔面にヒットしてしまった。

イエローカードでマロ・ツイタマを10分間失った 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

TMOの結果、イエローカード(10分間の退出)処分を受けてしまう。

一人の数的不利、それも大外のエリアをスピードでカバーするWTBが抜けたことは、アタッキングラグビーがDNAに刻まれているサンゴリアスという相手には特に厳しかった。

すでに先制トライを浴びていたレヴズは数的不利の10分間に3トライを献上。開始20分までに0-26という大差をつけられてしまった。

リーグワンになってから6敗1分(不戦敗1を含む)という苦手のサンゴリアスを相手に、いきなり大きすぎるビハインドを負う。

それでもレヴズは、ツイタマがピッチに戻った直後の20分、FLヴェティ・トゥポウのゲインを起点にLOダニエル・マイアヴァがトライを返す。

前半はダニエル・マイアヴァの1トライのみ 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

前節とは逆の展開だ。

ここから攻め返していけば、逆転だって可能だ……そう思ったのも束の間だった。

フェイズを重ねれば、もう一歩出ようとしては孤立してペナルティ。ブレイクしたと思っても最後のパスが乱れ、ボールを奪われ、トライを献上。

いつも優しいヤマスタのレヴニスタたちからも、
「しっかりしろ!」
「何やってんだ!」

という厳しい𠮟責の声が飛んだ。

「聞こえました」

この試合でトップリーグからの通算150試合出場の大記録を達成した大戸 裕矢は神妙な顔で言った。

チーム最年長の35歳。ヤマハ発動機が日本選手権優勝を飾った2014年度の栄光を知るベテランの耳にも苦言は響いた。

大戸 裕矢の通算150キャップを勝利で飾れなかった 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

「ただ、言い訳になるけど、いいところもいっぱいあったんです」

ベテランは前を向いた。

「最後のパスが通らなくて、そこを拾われて一気にトライされたりしたけれど、チャンスは何度も作れていた」

あと1本のパスが通っていれば、試合の様相は変わっていたかもしれない。

藤井 雄一郎監督は選手をかばった。

「今は本当にケガ人が多くて、その中で良い流れを自分たちで作りたいと若い選手もたくさん出して、彼らも80分間頑張ってくれました。いろんなミスで得点されたけれど、ハーフタイムに『たくさんの人に来てもらっている中で、このまま終わるわけにはいかない』と話して、そこから選手が奮起して、トライを取ってくれた」

SOのサム・グリーンと家村 健太、CTBのチャールズ・ピウタウ、LOのマリー・ダグラスとジャスティン・サングスター、さらにエースのヴァレンス・テファレ……タフな戦いが続き、キープレーヤーが次々と戦列を離れている中、若い選手が新たにジャージを着た。

負傷離脱も多い今季、若手にはチャンスが巡ってくる 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

この日はWTBジャック・ティムとFB杉本 海斗が先発で公式戦デビュー。

後半8分にはルーキーPR稲場 巧が入って前半苦しんだスクラムを立て直し、後半15分には前節のヒート戦でデビューしたばかりのSH細矢 聖樹が入り、素早いパス捌きでレヴズのアタックに息を吹き込んだ。

後半早々に2トライを追加されたが、後半22分に大戸の突破からマイアヴァ、24分にトゥポウの突破からCTBシルビアン・マフーザ、28分にはFL庄司 拓馬の突破から杉本がつなぎ、ツイタマがフィニッシュ。細矢の仕掛けで攻撃のテンポを上げたレヴズは3連続トライ。

ヤマスタに集結した8,244人の観衆のボルテージは一気にあがった。

藤井監督も高く評価した。

「(細矢は)球出しも速いし、自分でも果敢に攻めてゆく。あれくらいのテンポで出してくれるとチームとしてはスペースがたくさん出てくる」

「ケガ人の影響もあるけれど、控え選手の中でずっといい動きをしていたので、誰かのケガというよりは、彼らをどこかで使いたいという思いがありました」

「若い選手たちは、最初は緊張してる感じがあったけれど、時間が経つにつれて本来のプレーができるようになってきました。負けはしたけれど、チームにとっては良い材料もあった」

途中交代からリズムを作った細矢 聖樹(手前)と稲場 巧(奥) 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

もちろん、選手自身は満足していない。

「9番(スクラムハーフ)として試合に出る以上、負けているので嬉しさはない」(細矢)

「前半、自分のミスからトライを取られてしまったのが悔しい」(杉本)

それでも、途中出場で活躍した細矢は22歳、稲場は23歳。さらに2トライをあげたマイアヴァは22歳、この試合で先発デビューのティムは21歳、杉本は24歳で、80分の試合を戦い抜いた。

意図的な起用ではなかったとしても、次世代の育成としては有益な投資になったはずだ。

層は厚くなった。そこに負傷者が戻ってくる。

藤井監督は言った。

「本当に今日が一番きつい週だったんで、これを乗り越えたら、少しずつ上がっていくかなと」

ハーフタイムに藤井監督が発した「このまま終わるわけにはいかない」は、この試合だけでなく、今シーズン全体にも言えることだ。

この試合で10試合が終了。リーグ戦は18試合だが、プレーオフで決勝まで戦えば20または21試合。

今はちょうどシーズンのハーフタイムだ。

次戦は3月14日、ブラックラムズとのビジター戦。

蘇ったレヴズの姿を、駒沢で見せてもらおう。

(大友信彦|静岡ブルーレヴズ公式ライター)

【(C)SHIZUOKA BlueRevs】

大友 信彦(おおとも のぶひこ)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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著者プロフィール

JAPAN RUGBY LEAGUE ONEに参戦している静岡ブルーレヴズ(旧:ヤマハ発動機ジュビロ)の公式アカウントです。 「静岡ブルーレヴズ/SHIZUOKA BlueRevs 」というチーム名には、変わらない為に変わり続ける、伝統を受け継ぎ、なお「革新」を恐れない精神を象徴する “Blue” と、困難な目標にワクワクして挑み、高ぶる「情熱」を象徴する “Revs”が、一体として込められています。また、ホストエリアとなる「静岡」に貢献し、愛されるチームとなるべくその名を冠しています。 いままでヤマハ発動機ジュビロとして築き上げてきた伝統や技を活かしながらも、新たな挑戦とともに静岡から、心躍る最高の感動を世界へと届けていきます。 静岡ブルーレヴズの活躍にぜひご注目ください。

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