【チューリップ賞】ライデンリーダーと同じ牧場から、佐賀所属馬が挑戦!「いいところがあるのでは」騎乗歴ある吉原寛人騎手も期待寄せる重賞5連勝馬/月刊・佐賀競馬だより

佐賀県競馬組合
チーム・協会

チューリップ賞に挑戦するサキドリトッケンと飛田愛斗騎手(佐賀) 【撮影:大恵陽子】

3月1日、阪神競馬場で行われる桜花賞トライアル・チューリップ賞(GII、芝1600m)。JRAの舞台に、九州唯一の地方競馬から挑戦する牝馬がいます。彼女の名は、サキドリトッケン。
1995年報知杯4歳牝馬特別(現・報知杯フィリーズレビュー)を笠松所属で無敗で制したライデンリーダーと同じヒカル牧場生産馬です。しかしながら、セリでは買い手がつかず一度は主取りとなっていました。それが“ジュース”がきっかけで偶然が重なり、佐賀で活躍するまでになりました。
挑戦する彼女の、始まりの物語から見てみましょう。

ライデンリーダーと同じ生産牧場から桜花賞トライアル挑戦へ

8月下旬のある日。
北海道の空の下、「みんないい馬を買っているなあ」と真島元徳調教師(佐賀)はセリ会場で何気なく上場馬を見ていました。そこにやってきたのは、たびたび管理馬の騎乗依頼を出している石川慎将騎手(佐賀)。

「喉が渇いたし、ジュースでも飲もうか」

そう声をかけて飲み物を取りに行く道中、生産馬の上場を終えたばかりのヒカル牧場の牧場主とバッタリ会いました。その年、ヒカル牧場は4頭上場をしていましたが、1頭の馬が主取りと言って、買い手がつかず売れ残っていました。

「馬だけちょっと見て行ってください」

牧場主とは真島調教師が開業当初から30年近い付き合いで、そう声をかけられて主取りになった馬を見に行きました。
すると、決してガッチリはしていないものの、格好のいい小柄な牝馬でした。そこで、その場で三岡陽オーナーに電話をして相談。

「こういう馬がいるんですけど、買ってもらえませんか?」

真島調教師からの提案に二つ返事で「いいですよ」と答えた三岡オーナー。そこから再上場をかけ、奥様・有香さん名義で150万円(税抜き)での落札となりました。
この馬が、のちのサキドリトッケンとなるのです。

真島調教師と石川騎手がジュースを取りに行ったことから運命の出会いを果たしたサキドリトッケン 【撮影:大恵陽子】

無事に競走馬としての行き先が決まったサキドリトッケンは翌年、2歳4月に佐賀競馬場に入厩しました。

入厩時から調教に騎乗する厩務員は当時の印象をこう話します。

「小柄で緩さはありましたけど、最初に乗った時から体のバランスがいい馬だなと思いました。すぐに佐賀の環境に慣れてくれて、すごく従順で乗りやすいイメージでした」

デビュー戦こそスタートで出遅れ、また真島調教師からの「行きっぱなしだけは避けてほしい」という指示もあり、竹吉徹騎手は後方から運ぶと、900mの超短距離戦ながら直線で目の覚めるような末脚を繰り出して2着に入りました。

2戦目で初勝利を挙げると、3戦目はスタート直後に挟まれる不利もあって2着。
そして、世代最初の重賞・九州ジュニアチャンピオンから重賞5連勝を果たしました。

九州ジュニアチャンピオンで重賞初制覇を果たしたサキドリトッケン。鞍上は金沢の吉原寛人騎手 【撮影:佐賀県競馬組合】

デビュー前にソエが少し出たものの、それ以降は脚元や馬体に大きな反動が出ることはなく、コンスタントにレースを使えていることが強みの一つ。

その一方で、月に一走ペースのため、調教では一杯いっぱいの負荷をかけずにここまできました。
ただ、今年1月の花吹雪賞では前走から約2カ月の間隔が空いたこと、また歯の生え変わりでカイバを食べなくなり、調教を休んだ時期もあったことから、直前はしっかりと負荷をかけるべく、初めて併せ馬で追い切られました。

相手は重賞勝ちのある4歳牝馬・ニシノリンダ。
「動きが抜群だった」と真島調教師が言えば、騎乗した厩務員も「併せると体の使い方や伸びも良かったです。元々、頭が少し上がって浮くような走りなんですけど、併せると気が入りました」と好感触を得ます。

そして、追い切り後にカイバも食べるようになり、ギリギリまで決断を待っていた花吹雪賞出走に踏み切ります。

すると、レースではこれまで以上の鋭い末脚で差し切り勝ち。
1馬身1/4差という着差以上の強さを感じるレースでした。

高知からの遠征馬を迎えた花吹雪賞を勝ち、重賞5連勝。 【撮影:佐賀県競馬組合】

「最初の頃は人懐っこかったのが…」活躍するにつれ見せた性格の変化

花吹雪賞を勝ち、次走はチューリップ賞と決まりました。そこに向けて陣営はある対策を始めました。
それは、常歩で歩かせること。

実はここ2~3走、パドックでのテンションが高くなってきているのです。佐賀競馬場よりも広くて、観客も多い阪神競馬場ではさらにテンションが上がる懸念があるため、普段はウォーキングマシンで運動をさせていますが、スタッフが曳いて常歩ができるように取り組もうというのです。

前走・花吹雪賞のパドックでテンションの高さを見せながら周回したサキドリトッケン 【撮影:大恵陽子】

また、テンションの高まりとともに馬房での様子にも変化を見せています。
調教に騎乗するスタッフはこう話します。

「最初の頃は人懐っこくて、甘えてくる感じがあったんですけど、最近はちょっと人を警戒するような雰囲気を見せるようになりました。悪いことをするわけではなくて、敏感になってきています」

担当厩務員に顔を拭いてもらい、気持ちよさそうにするサキドリトッケン 【撮影:大恵陽子】

2歳の頃は「サキドリちゃん」と呼び、近くでカイバを配合している時にサキドリちゃんが顔を出してくると、可愛くてつい余ったカイバをあげちゃう、と話していましたが、競走馬として成長するにつれ、人間との関係性にも少しずつ変化が生じているようです。

2歳秋のサキドリトッケンと調教に騎乗する厩務員との一コマ。奥がカイバを配合する場所 【撮影:大恵陽子】

「ヒケを取らないと思う」年長馬と追い切りを終え、いざ阪神へ

そんな話を厩舎でしていたところ、やって来たのは飛田愛斗騎手。
チューリップ賞でサキドリトッケンと初コンビを組む23歳です。
地方競馬史上最速で通算100勝を達成し、2021年ヤングジョッキーズシリーズ・ファイナルラウンドでは中山で勝利を挙げ、総合優勝も果たしました。

JRAのレースでは、騎乗できるのはJRAまたは馬と同じ所属(佐賀)の騎手のみ、というルールで、これまでの重賞5勝では佐賀以外の騎手が騎乗していたことから、飛田騎手に白羽の矢が立ったのです。

飛田騎手は洗い場で体を綺麗にしてもらっているサキドリトッケンを見つけると、「僕、初めてサキドリトッケンに触ります」と笑顔で近づいて行きました。
初対面の飛田騎手に対し、サキドリトッケンは彼の手の匂いを嗅ぎ、徐々に心を許していきます。

サキドリトッケンと飛田愛斗騎手が初めて会った瞬間 【撮影:大恵陽子】

この約10日後となる2月22日、飛田騎手が騎乗して最終追い切りが行われました。
併せ馬の相手は、前走時に引き続き重賞勝ちのある先輩・ニシノリンダ。
騎乗した飛田騎手は「走り出したらとても乗りやすく、動きもよかったです」と好感触を掴みました。

見届けた真島調教師はこう話します。

「フワフワせずに走れていました。ただ、相手なりにしか動かなくて、4コーナーで突き抜ける手応えに見えましたが、そこから突き放さず、並びかけるところまででほぼ併入。動きは同世代のJRAの1勝馬にもヒケを取らないと思います」

さらにこう続けます。

「カイバは食べていますが、輸送があるので10kgくらいは馬体重が減るんじゃないかなと想定しています」

当日、その範囲であれば馬体減はあまり気にしなくていいかもしれません。

芝の重賞挑戦に、これまで騎乗してきた騎手も期待を寄せます。中でも重賞2勝でコンビを組んだ吉原騎手は「チューリップ賞はメンバー強そうですか?サキドリトッケンなら、末脚を伸ばしていいところがあると思うんですよね」と目を輝かせます。

そうした思いを一身に背負う飛田騎手はこう意気込みます。

「JRAの芝での騎乗経験はあまり多くないですけど、レース映像を何回も見て、勉強して挑みたいです。素晴らしい舞台に行かせていただけるので、不甲斐ない結果にならないよう、しっかり乗りたいです」

いよいよ今週3月1日阪神11レース、サキドリトッケンがチューリップ賞に挑みます。




文・大恵陽子(おおえ ようこ)
競馬リポーター。小学5年生で競馬にハマり、地方競馬とJRAの二刀流。毎週水曜日は栗東トレセンで、他の日は地方競馬の取材で全国を駆け回る日々。グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」「地方競馬中継」などに出演のほか、「優駿」「週刊競馬ブック」「Number」「netkeiba.com」「うまレター」「馬事通信」など各種媒体で執筆。
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著者プロフィール

佐賀競馬は九州唯一の地方競馬場として主に土日に競馬を開催しています。注目の重賞情報やイベント情報など、佐賀競馬のニュースを日々お届けいたします。

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