信頼し合う2人は神々しいですか?「りくりゅう」ペアが大逆転の金メダル。ミラノ・コルティナ五輪。SPでまさかのミス。三浦選手から木原選手へ「絶対できる」。自信を取り戻した
日本のフィギュアペアは長く低迷の時期が続いた。1972年札幌五輪に初出場。以後、1992年アルベールビル、1998年長野、2014年ソチ、2018年平昌に出場しても、いずれも二ケタ順位だった。
2014年大会からフィギュアでは男女のシングル、ペア、アイスダンスによる団体戦が実施された。シングルの選手が活躍しても、ペアとアイスダンスで順位が上がらず、メダルを逃していた。
そんな状況で誕生したのが「りくりゅう」ペアだった。木原選手は須崎海羽選手ペアで2018年の平昌大会に出場。ただ2019年にペアを解消した。
スケートリンクでアルバイトをしていた木原選手。そこに10代の少女が現れた。同じくペアを解消していた三浦選手だった。木原選手にペアを組みたいと申し出たのだ。
同年の7月末に、2人で試行してみた。木原選手は「絶対にうまくいく」と確信した。
フィギュアのペアは、たいてい、一方が相方に「合わせる」ケースが多いという。しかし、「りくりゅう」ペアはピタリとはまっていた。
木原選手は三浦選手より9歳年上。この年齢差がペアとしてうまくいっている一因かもしれない。同年代同士だと、自我がぶつかってしまうこともあるからだ。
「りくりゅう」ペアが初めて五輪に出場したのが、2022年北京五輪。団体戦ではショートプログラム(SP)で4位、フリーで2位と好成績。日本の銀メダル獲得に貢献した。その勢いで、ペア種目でも日本勢初となる7位入賞を収めた。
その自信がさらなる好結果を生んでいく。2022年の世界選手権で銀メダルを獲得。日本のペアがメダルを獲得するのは、2012年以来2度目となる快挙だった。
そして、「りくりゅう」は2023年に世界選手権で優勝、翌年は準優勝、そして2025年は優勝。王者として、ミラノ・コルティナ五輪へ乗り込んだ。
そして、団体戦ではSP、フリー共に1位。2大会連続で銀メダルを手にした。団体戦の勢いで、ペア種目に臨んだ。
「好事魔多し」。SPでまさかの5位。自慢のリフトが崩れた。落胆する木原選手。翌日はフリー。試合前の練習では、木原選手があまりの落ち込みで練習をストップしてしまった。
そこで三浦選手が声を掛けた。「まだ終わっていない。積み重ねてきたことがあるから、絶対にできる」。24歳から9歳年上への慈しみの声だった。
しかし、これはただの気休めではない。自分たちの重ねた努力と。世界選手権、五輪団体戦で積み重ねた実績。結果に裏打ちされた言葉だった。
普段は木原選手がサポートすることが多い。しかし、大一番のフリーを前にして、三浦選手の声が木原選手に自信を取り戻させたのだ。
フリーではノーミス。完璧の演技だった。前日に失敗したリフトも、フリーでは清く、高く、美しく見えた。木原選手に掲げられた三浦選手。7年前に「絶対にうまくいく」と感じた感覚が、大舞台で証明された。まさに信頼し合う2人の神々しい姿が浮かびあがった。
日本勢でペア初となる五輪金メダルを手にした。フリーの得点は158.13点。世界最高得点だ。そして前日の6.90点差をひっくり返した五輪のペア史上最大の逆転劇となった。
互いが信頼し合ったからこその大逆転金メダルだ。ペア結成時の「絶対にうまくいく」、フリー当日の「絶対にできる」。「りくりゅう」ペアが信頼し合う形で最高の結果を生み出した。最高の2人が光を解き放っていた。神々しかった。
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